13.就職活動への違和感

 私はいわゆる就職活動というものに対して違和感を持っている。皆が同じ格好をして、どこの会社に対しても「御社が第一志望です!」といったような主張をするというイメージを持っていて、たくさんの学生を均質化しているような気がしていた。だから、いわゆる就職活動にやる気なんてものは起きなかったし、今のまま、好きなことを勉強したいと思っていた。けれども、まわりの皆が少しずつ就職活動を始めたころ、現実的に自分が卒業後どのように生きて行くのかということを考えるようになった。どうしてもやりたいことがあるわけでもなければ、お金があるわけでもない。働かなければならない。今目の前にある勉強を頑張りたい気持ちと、将来に対する焦りに挟まれて、私は日々考えこんでいた。

 私はそもそも面接というものが苦手だった。自分のことを話すことも苦手だ。私がどのような人間でどのようなことを考えているのかといったようなことは、関わっていくなかで少しずつ知っていってほしいと思っていた。だから、いわゆる就職活動という、ルールが決まったゲームのようなものの中で、私が勝ちぬいていけるイメージが全く湧かなかったのである。どうにかして、就職活動をしないで生きていけないだろうかと、考えていた。同時に、「就職活動は、こういうところが変だ」などと、就職活動をしたこともない私が不満を言っていることに納得がいかない思いもあった。逃げているような気がした。就職活動をやってみて、自分の目で見て、感じて、違うと思ったら、NOをつきつけてやればいいのではないかと思った。それを変えたいと思うなら、まずは私が、どこがどう間違っていると思うのか、感じなくてはいけないと思った。だから、就職活動をはじめることにした。

 はじめてから、一番に違和感を持ったのは、自己PRという言葉だった。自己PRは1分用と3分用の両方用意しておくのがいいと言われていた。私はそもそも、自分というものは「私ってこういう人なんです」と自分から言うのではなく、その人と関わっていくなかで、少しずつ感じ取っていってもらうものだと思っている。それに、私たちは普段の言葉づかい、話し方、醸し出す雰囲気、そういうものを人との関わりの中で自分らしさとして、育ててきたんじゃないのだろうか?だから、今になって急にそれを簡潔に、わかりやすく、しかも1分間で述べろと言われても、ただ、どうしたらいいのかわからなくなってしまったのだ。その他にもたくさんの疑問があった。エントリーシートの項目全てに対して疑問を持つ会社もあった。

 今就職活動を続けていて、もちろん勉強になることも多くある。だからこそ続けられるのだと思う。自分は面接で意外とにこにこできない人なのだということもわかった。私はとりあえずは、今持っている違和感をなくすことなく、就職活動を続けようと思っている。