①厨二病

 黒、闇、神、悪魔、生、死。このように並んだ単語を見た時に私が受ける印象は「かっこいい」だ。このような気持ちになるのは誰でも一緒だと思っていたが、どうやらそうではないらしい。小さい頃ならともかくある程度の年齢になると、こんな言葉ばかり羅列するのは子供じみていると嫌悪感を抱く人もいるようだ。

 私は「厨二病」という言葉に、「刹那」「修羅」などのあからさまにかっこいい単語や、ファイナルファンタジーのキャラクターのようなあからさまにかっこいいビジュアルに憧れたりする人、という印象を持っていたが、その本当の意味とは一体何なのだろう。 厨二病という言葉は、もともとは伊集院光がラジオ番組『伊集院光のUP'S 深夜の馬鹿力』の中で用いたのが最初と言われているが、今やその意味も当初と変わってきているようだ。ライトノベル作家の塞神雹夜(さえがみ ひょうや)は、厨二病には3つのタイプがあるという。反社会的な行動や不良を演じるDQN系。他人とは違う特別な存在であろうとするサブカル系。超自然的な力に憧れ、自分には発現すると抑えられない隠された力があると思い込んでいる邪気眼系。こうしてみると、「厨二病」という言葉一つでは、どんな事柄を示しているか具体的にはわからない。この3つは、それぞれ全く異なるタイプの性格だ。これでは「厨二病」と言っても、どの意味で伝わるかは相手次第になってしまう。

 ならば人が「厨二病」という言葉を使うのはどのようなときなのか。調べてみると、現在は主に蔑称として用いられることが多いようだ。なるほど、そう考えてみると、3つのうちどの意味で伝わっても相手を蔑んだことになるため、それぞれの違いにはさほど問題はないのかもしれない。相手を貶すことが出来ればよいのだから、様々な意味を内包していても不思議ではない。

 しかしそれでも、厨二病をかっこいいとする風潮があることは事実である。「Steins;Gate」というノベルゲームでは、厨二病の主人公を最終的にはかっこよく描いている。 つまり「厨二病」という言葉は、酷く曖昧なのである。これはネットスラングには共通した特徴なのではないだろうか。しかしこの曖昧さがまた「厨二らしい」と言えるのかもしれない。