④散歩

 休みの日、私は目的もなく、ただなんとなく出かけることがある。その理由としてあるのは、まず室内にいるのがあまり好きではないということである。いや、室内にいるのが好きではない、というよりは、長い間室内にいることが好きではない、と言うべきである。周りが囲まれた、限りのある空間にずっといると、気が滅入ってしまう。私はこれを顕著に感じると自分では思っているが、こういう気持ちになるのは私だけでないだろう。少なからず似たような経験が、おそらく誰にでもあると思う。

 また、私は目的を持たない、という点を重要だと思っている。そしてこれが、私がなんとなく出かけることのもう一つの理由である。普段、私は外を歩く時、何らかの目的をなす為の手段として、そこを歩いたり、もしくは自転車で走り抜けたりする。そのため、その道に対してはほとんど注意を払っていないと言ってもいい。だから、目的を持たずに歩くという機会を設けることで、私はその道を注意深く観察することが出来るのである。

 散歩をしていると、たくさんの新しい発見がある。毎日通っている道であるにもかかわらず、そういった発見があるのだ。例えば、こんなところにこんな店があったのか、と気づくこともあるし、公園で遊ぶ子供たちがどんなことをしているか、といったことも知ることが出来る。それは、こうして余裕を持って目的なく歩いてみたことで初めて気付くのであり、散歩をしなければこういった事実があることなど考えもしないのである。散歩はともすると時間の無駄遣いだと思われることもあるかもしれないが、そういう意味ではとても意義のある行為だと私は考えている。

 忙しいと心に余裕がなくなってしまうことがある。しかしそういう時にこそ、散歩をしてみるべきなのではないだろうか。そうして落ち着いてみることで、普段は見えなかったものが見えてくる。何か目的を達成する為には、一見遠回りのように見える行為であるが、実はこれが一番の近道なのかもしれない。