14.魔法少女は「変身」する 私は、ずっと変身したかった。変身して、仲間や世界やご町内の平和を守る戦士になりたかった。実を言うと、今もなりたい。変身して、身体能力が格段にアップして、不思議な魔法の力を使えるようになり、みんなを守るのである。いつか、自分の元にも謎の生物が現れて、「さぁ薫、変身するんだ!」などと言って私を誘ってくれる…と本気で思っていた時期があったことを、今でも覚えている。そんな可能性がある歳はもうすっかり過ぎてしまった。 魔法を使う少女たちは、自分が魔法を使える状態になるために、必ず一言、「掛け声」を経て変身に至る。そしてその変身を経て、変身後の姿になる。魔法を使うための「掛け声」「変身」を経て、彼女たちは平和を守るための戦士になるのだ。例えば、4月から始まったプリキュア新シリーズ、「スマイルプリキュア」もそれが当てはまる。シリーズ9作目となる本作品の主人公みゆきは、伝説の戦士プリキュアに変身し、「キュアハッピー」になる。仲間は彼女のことを、普段は「みゆき」と呼び、プリキュアに変身すると「ハッピー」と呼ぶ。最早彼女は、「みゆき」ではなく「ハッピー」という存在になってしまった。変身前と変身後では、少女たちは全く別の存在なのであろう。 彼女たちが「変身する」という行為は、最早「お約束」である。尋常離れした力を使うには、「変身」を介さなければいけない、という暗黙の了解がそこにあると思う。勿論、魔法を使う少女たちみんなが変身する訳ではないが、ほとんどが変身してくれる。小さい頃はコンパクトやペンなどがキーアイテムになっていたが、最近では携帯型のアイテムで変身しているものもある。 ということは、プリキュアになる度に、毎度毎度同じ言葉を言う、「お約束」をわざわざ毎週繰り返してくれることになる。毎話誰かのシーンを見続けていると流石に飽きてきそうな気がするが、これが見ているとなんだか、意外と飽きないものである。私には、「お約束」が最大の魅力のように感じてならないのだ。彼女たちがいる世界が私たちと似たような世界観だったのであれば、魔法を使うにしろ戦うにしろ、「変身」が無い状態が想像つかない。「変身」とは案外、非現実的であり、現実的なものかもしれない。 |