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 更新日2018年10月19日(金曜日)                                 
          
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対米従属の享受から貢納

―戦後日本の「国体」としてのアメリカ=象徴天皇制

  戦後日本にとって「高度経済成長」は,少なくとも物質的に豊かな暮らしを実現してくれた。それは「エコノミック・アニマル」などと揶揄され,過労死で世界を驚かせたとしても,追求されるべき「何か」であった。その「何か」とは,敗戦という挫折から立ち直る日本民族の戦後の「国体」であり,「暮らしの豊かさ」,世界第2位にまで上り詰めたGDPこそが,かつて侵略したアジアに対しても謝罪もせず,卑屈ならずに済む戦後の「国体」だったのである。そしてこの対米従属に異を唱え反対する論を封鎖するバリアーが,象徴天皇制なのである。豊下楢彦はいう。「昭和天皇がアメリカを迎え入れた最大の動機は,共産主義への恐怖と嫌悪であった」と。近衛上奏文にみられるように東欧諸国のソ連の属国=「共産化」は,絵空事ではなくリアリティーを持った恐怖だっただろう。昭和天皇の「国体」は「象徴天皇制」となって護持されたのである。象徴天皇制は日本本土の米軍基地と沖縄の半植民地化という屈辱=対米従属を代償としていた。
  だが対米従属を享受できた「高度経済成長」の昭和時代は終わり,来年命名される平成時代は,享受が貢納になった時代である。韓国,中国をはじめとしたアジアの国力の増大とともに,これまで突出していた日本の国力の相対的低下が鮮明になってきた。日本の親米保守=自民党は,対米従属のメリットが,もうなくなっているにもかかわらず,ほかの戦略も打ち出せず,ただただ,ただただアメリカにしがみついている。
 韓国サムソンに追い越され,台湾に買収された日本の電機メーカー。中国にGDPを追い越されてしまった「屈辱」。明治以来,日本人の欧米に対する劣等感とアジアに対する優越感は表裏一体である。「脱亜入欧」という明治以来の悲願は,昭和時代までは達成されていた。だが,そのアイデンティーが大きく揺らぎ,否定された。アジアの先進国の地位の喪失と展望を打ち出せない焦燥感が,大衆の間で排外主義的心情(ヘイト・スピーチ)となって広がっている。1923年9月1日午前11時58分44秒,今から95年前の今日,関東大震災が起きた。この災害のなか絶対主義天皇制官府によって排外主義の暴虐が起こされた。朝鮮人虐殺。象徴制天皇制政府は,黙殺する。

どうぞお読みください=============================
「失われた二〇年」からの逆照射 戦後日本経済分析』             (八朔社,2017年8月21日)2,400円+税
ISBN 978-4-86014-085-4 C3033 四六版 232頁
 ■日本が今抱えて問題は何ですか。過労死・派遣労働・限界集落といった問題です。これらはそれぞれ独立した個別の問題だと思いますか。違います。根は一つなのです。高度成長を実現してきた日本の経済システムが崩れた結果,社会の底に沈みに隠されてきた矛盾が表面に浮き出てきたのです。世の中に漂う漠然とした不安は,「失われた20年」などと言われています。この不安を何とかしてくれるなら,誰でもいい。この不安が託した「希望」が安倍政権の高い支持率を支えています。もちろん安保法制反対の国民的運動,とくにSEALDsのような若者の新しい運動もあるにしても,です。不安の根元を明らかにし,変革すべきモノ=コトを述べたつもりです。

 本書は,読みやすさを優先した為,引用文献やデータ等のページ数がありません。それらを以下に電子データで掲載しました。
引用ページ数 参考文献詳細  gyakushoushasanbun.pdf 
引用した文章は,★で示しました。それ以外は本文にパラフレーズした参考文献です。
データ ファイル名: hassakuExcel.xlsx
引用される場合は原データ・加工データの出所を明示してください。

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既刊  『ポスト冷戦世界の構造と動態』
 (八朔社 2013年5月) 3200円+税  

 誰にでもわかってほしい。本書はそういう思いで,この10年ほどの間に書きためたものを,全体をできるだけ統一し,欠落しているところを補い,わかり易く書きなおして,全体を再構成した本である。こうした意図から研究書と一般書との中間を目指した。それが成功したか否かについては,読者の判断にゆだねざるを得ないが,非常に難しく目的を果たせなかった,のではないか。これが正直な気持ちである。

書評:宮本幹夫『明治学院大学国際学研究,』45号,127-131頁。
増田壽男「書評」(『(季刊)経済理論』51巻4号,2015年1月,99-101頁)。

最新の研究

「アメリカ株価資本主義と世界金融反革命」

神奈川総合政策研究センター『研究と資料』No.209,2018年8月1日号(上),同誌No.210,2018年10月1日号(下)。本論文は『経済理論』54巻4号論文のフルペーパーです。同誌の投稿論文には字数制限があるため,削除した部分を復活しました。

 「世界金融反革命としてのアメリカ株価資本主義」
経済理論学会,季刊『経済理論』54巻4号(2018年1月15日)

 「戦後日本資本主義の構造としての非正規労働と過労死 

福島大学『商学論集』84巻4号,2016年3月

 「戦後日本資本主義の基盤,その生成と衰微 ―都市と農村,二つの限界集落」掲載版
経済理論学会季刊『経済理論』52巻4(2016年1月15日)
  同上論文 全文版


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===批判的思考の再構築を求めて===


 
このバーツラフ広場は,ハラフの死からおよそ20年の後に,再び歴史の舞台となった。世界で初めて議会選挙によって社会主義政権を打ち立てたチェコ人民は,その社会主義政権を平和的に退陣させたのである。チェコ・ビロード革命である。今ほとんどの人が,体制全体を揺り動かすような反体制の思想など抱くものではないと考えている。だからこそ,自立した精神世界をもち,現在の体制に批判的に向き合い,それを総体的に点検し,別のあり様を探し,提示することが求められている。


1968年旧ソ連軍のプラハ侵略に抗議して焼身自殺したヤン・パラフのモニュメントの前で(2003年5月)



どうぞお読みください

戦後日本資本主義の根本問題』(大月書店)
    シリーズ「戦後世界と日本資本主義」全7巻
     
第1回配本―戦後日本資本主義の特質を,
      土地所有と冷戦体制から読み解く

  The Fundamental Problem of Japanese Capitalism
   after the Second World War

 
書評
黒瀧秀久 『経済』No182 2010年11月号 新日本出版社

山田鋭夫 『経済理論』48巻第1号2011年4月 桜井書店

山田鋭夫氏書評への涌井のリプライ 
経済理論学会編『季刊・経済理論』第48巻3号(2011年10月)
 
新幹線(1964年東京大阪間開通),超高層ビル(1968年霞が関ビル),高速道路(1969年東名高速道路開通)。1970年代以降,日本人,とりわけ都会の「中間層」は,「エコノミックアニマル」などと揶揄されながらも,自分たちがニューヨークやパリやロンドンの人たちとそうは変わらない,と思っているに違いない。しかしその暮らしの基盤となる経済構造は,欧米とはかなり違っている。アメリカ冷戦体制に深く組み込まれていくにつれて,日本は欧米とは違った独自な「発展」を遂げることになる。その結果生みだされた構造が「外生的循環構造」である。国民国家の一時代を体験した欧米資本主義とは違って,国外の再生産構造が国内の構造を代位=補完する構造をもつ。戦後日本は,「下から」でも,「上から」でもなく,初めて「『外から』の資本主義発展」の道を歩んだ国なのである。 こうした構造を規定したのは,冷戦体制と零細土地所有であった。
 アメリカ冷戦体制に深く組み込まれ(対米従属)ていくにつれて,日本独自な経済構造が造形されていく。工業部門への労働力供給の役割をおわされた農業(農民)が基層におかれ,その犠牲の上に工業が成り立つ。その工業も大独占企業と中小零細企業という2層構造をもつ。土地の零細性ゆえに自立の道を断たれた農業。農民は非工業部門での所得で生計を維持するほかなく,また中小零細企業も下請として大独占に依存するほかない。だがそのいわば食物連鎖の頂点に立つ大独占企業も,原燃料・技術などの生産手段の依存と国内市場の狭さゆえの輸出のために,対米従属は決定的となる。
 この「構成」成立に際して大きな役割を果たしたのが外資であるが,同時にそれを代位=補完したものが「土地所有」であった。戦後日本の蓄積「成長」はこの前近代の遺物=土地を資本(擬制資本)に見立てたのである。以後強蓄積の原資として土地は決定的な役割を演ずることになる。

大月書店 シリーズ
     「戦後世界と日本資本主義」全7巻


 本シリーズは,2010年春から2011年秋までに大月書店から出版される予定の『戦後世界と日本資本主義』全7巻シリーズの第5巻 『戦後日本資本主義の根本問題』であり,シリーズの第1回配本である。シリーズ各巻の書名と執筆者は以下のとおりである。
第1巻 21世紀型危機と日本経済―増田壽男(2019年1月刊行予定)
第2巻 戦後日本資本主義分析史と展望―鈴木春二(第5回配本)
第3巻 戦後日本資本主義と平成金融恐慌―相沢幸悦(第2回配本)

第4巻 現代グローバリゼーションとアメリカ資本主義―柿崎繁(第4回配本)
第5巻 戦後日本資本主義の根本問題―涌井秀行(第1回配本)
第6巻 戦後日本重化学工業の構造分析―吉田三千雄(第3回配本)
第7巻 戦後日本資本主義における労使関係―藤田実(第6回配本)

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