国際学部 平島成望教授 最終講義
「国際商品論」の周辺

  • 開催日:2004年1月19日(月)
  • 時間 :13時25分〜14時55分
  • 会場 :横浜校舎 6号館 621教室
  • 主催 :国際学部・国際学部付属研究所
  • 講師 :平島成望先生(本学国際学部教授)
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    平島教授ご挨拶

     1988年から16年間奉職しました明治学院大学国際学部を退職するに当たり、このような機会を与えてくださった明治学院大学に心から感謝の意を表したいと思います。また国際学部という「無限の可能性を秘めた」新学部の創設期に参画できたことも幸いでした。原石として入学してくる若い世代が、4年間という短い期間にさまざまな色に輝き始めるのを見る喜びは、教師としてこの上ない財産になりました。
      国際学部では、本来担当すべき「農業経済論」や「経済開発論」ではなく、CRB先物指数を構成する主要な国際商品の分析を通じて、世界経済のダイナミズムに翻弄される発展途上国の発展の可能性を検討する「国際商品論」の新設を許してもらいました。また、地域として40年来関心を持ってきた南アジアの経済発展を分析する「地域経済論」と、カリフォルニア大学生への講義で始まったJapanese Economic Development in Global Perspectivesが、学部で担当した講義科目でした。ゼミのテーマは「日本経済と国際商品」というものでしたが、国際商品の分析は授業に任せ、もっぱら経済理論の習得と日本の経済発展過程のレヴューに費やしました。総計222名のゼミ生は、私にとってかけがえのない財産です。
      完全燃焼したとはとても言えませんが、優秀な同僚や親身になって支援していただいた職員の方々のお陰で、無事完走することが出来ました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
      最終講義は、特別なテーマにせず、自然な形で「地域経済論」の最終講義という形をとらせていただきました。企画していただいた学部および付属研究所のご期待には添えませんでしたが、ご配慮、ご支援に対し深い感謝の意を表したいと思います。内容の詳細はいずれ学部付属研究所の「年報」に掲載されると思いますが、参考までに講義のアウトラインを載せておきます。

    最終講義アウトライン

     1.「国際商品論」と発展途上国の経済発展
       1) 本学部における「国際商品論」の生い立ち
       2)世界経済における1970年代の位置づけ:石油と金の市況商品化
       3)国際商品の定義と国際商品指数の選択
       4)国際商品から見た発展途上国の経済発展の可能性:
          Vent for Surplus Model (H. Mynt), Staple Theory (M. Watkins)
       5)グローバリゼーションと国際商品市場:短期資本移動と工業化の方向性 
     2.「地域経済論」の視角
       1)2つの有効な「ものさし」:「理論」と「日本の経験」
       2)「持続的社会の建設」の必要条件:「社会的機会の実質的平等と豊かな選択肢の存在」
                              「法秩序の維持と政策の整合性・継続性の確保」
                              「社会的モニタリング能力の構築」
       3)横断的課題:ジェンダー・バイアス、環境破壊、地域格差
    3.スマートな経済開発論の落とし穴
      1)グローバリゼーションにおける「理想社会」:「消費者余剰」と「生産者余剰」。規模の生産に基づく「効率性」の追求
      2)画一的フォーマットの適応に伴う危険性:輸入代替工業化と輸出志向工業化。国家タイポロジーの重要性
      3)先進国の目線で見る限界性:工業化と農業・農村社会
    4.国際機関における政策転換
      1)IMFのSAF(1986) と世界銀行のSAL (1980)の併存から来る混乱
      2)PRSP (Poverty Reduction Strategic Paper)とTrickle down thesisの関係
      3)貧困問題に展望をつけられないブラック・ボックス
        a) 農村貧困者の主体:不十分な農村雑業層の実態分析
        b) 格差分析におけるフローとストックの歴史的関係:
           過剰流動性と土地市場の展開
        c) 地域格差の帰結;公共投資の先導性と方向性の重要さ
    5.独り言
      1)モノ造りを忘れた社会はつまらない。
      2)金融の本来の役割は、産業発展に必要な潤滑油である。
      3)特定の国と国民に関心を寄せることは生涯の財産である。
         したがって希少価値に胡坐をかくことなく、知的収奪に陥ることなく、大切に理解を深めて欲しい。