第5回 (2008年6月21日)
サカキマンゴー(演奏家)

板や箱に鉄片をとりつけただけの単純な楽器・親指ピアノを通してアフリカ音楽の真髄に迫ります。
サワリ音
親指ピアノをはじめアフリカ各地の楽器にはビリビリとした音色(サワリ)を得るための工夫が凝らされていますが、これは西洋のクラシック音楽で使われる楽器の音とはまったく異なる趣向によるものです。蜘蛛の卵膜をサウンドホールに貼り付けたり、音を生みだす振動部分にビーズを接触させるなどの工夫の実例を見ながら音楽上の効果を考えます。
反復性
一曲の多くは起承転結よりも短い旋律を反復させることで得られる恍惚感が大事にされます。イントロも明確なエンディングもなく、5時間にもわたる繰り返しによって生まれるトランス感覚を利用したタンザニアの憑依儀礼などを紹介します。
ポリリズム
そういった音楽の最大の骨格がポリリズム(複合リズム)です。一例を挙げると、日本の音楽教育を受けた人なら3拍子ととりそうな歌の多くが2拍子のリズムの上で歌われています。実際に3拍子の歌を歌いながら、手拍子の打ち方を研究してみましょう。新しい伝統
固有の文字をもたなかったアフリカの多くの国々では音楽がニュースを伝えるための手段としても使われてきたため、現代でも偉大な人物を称えた曲や支持政党への投票を促す曲など、「新しい伝統曲」が次々に生まれています。近年ではナショナリズムの高まりとともに各民族語で歌われていた歌も共通語で歌われることが増えてきました。演奏家と楽器職人というような分業化が進まなかったことも要因のひとつですが、楽器も手近な素材(最近では空き缶や傘の骨など)を利用して作られるため、時代にあわせてどんどん変化しています。その最新の例としてコンゴ民主共和国で生まれた電気親指ピアノの音も聴いていただきます。
「サワリ音」「反復性」「ポリリズム」「新しい伝統」、この4点をキーワードに、ワークショップや生演奏を交えながら講義を進めます。サカキマンゴー氏 略歴
アフリカの楽器・親指ピアノの可能性を日本から更新する「親指ピアニスト」。現地調査を自ら行いアフリカ各地の伝統的な演奏スタイルをふまえつつ、テクノもパンクもファンクも音響派も通過した現代日本人ならではの表現を展開している。ソロ・アルバム「limba train」がミュージック・マガジン誌、ベスト・アルバム2006においてワールド・ミュージック部門第4位に選ばれ、今年2月にタンザニアで開かれた国際音楽祭“SAUTI ZA BUSARA”に出演(日本人としては初)するなど国内外で注目を集める。7月には電気親指ピアノを大幅に取り入れた新譜をリリース予定。公式ウェブサイト http://sakakimango.com/
−サカキマンゴー先生のプロフィール−
専門分野親指ピアノ演奏・研究
論文・著書「『カリンバ』と呼ばれる親指ピアノ」「親指ピアノで霊を呼ぶ〜タンザニアの憑依儀 礼〜」「電気化する親指ピアノ」 『企画展図録 親指ピアノ』浜松市楽器博物館 編、2007年11月 「タンザニア音楽事情 サウティ・ザ・ブサラ音楽祭を通して」『ラティーナ』2007年6 月号 「リンバの不思議な音色」『KanKuu』No.98、「KanKuu」編集部、2007年2月