出張報告

竹中 千春

 

▼出張期間

2004年 2月19日 より 2004年2月27日まで

▼出張先
インド
▼研究テーマ
現代インドの民主主義と暴力
▼調査の内容

 デリーからウッタル・プラデーシュ州、ビハール州にまたがる北インド一帯は、1990年代から2000年代の政治変動の中心的舞台である。本調査では、北インドの動向について最近の調査を進めるため、デリーを中心にインタビュー調査と資料調査を行った。
ガンジス河流域の北インド地域は、ヒンディー語とそれに近い言語を話す人々の土地で、「ヒンディー・ベルト」と通称され、国内で最も人口の集中する地域である。人口に基づいて選挙区が配分される民主主義制度の下では、この地域に国会の多くの議席が配分されている。つまり、この地域の政治的な変動は、全国の政治を動かすことになる。 
 1970年代後半より、独立以来のナショナリスト政党、インド国民会議派の一党優位体制が早くから崩壊したのが、この地域であった。その後に、カーストを基盤とする利益集団としての政党が複数現れ、それと拮抗するようにヒンドゥー至上主義を掲げる右翼政党が成長し、全国的な与党に成長する基礎を作ったのも、この地域である。1990年代には、そうした政党配置が定着した。
以上のような背景を踏まえながら、デリー、ラクナウ、ファイザーバード、ヴァナーラシー、パトナといった都市における貧困地域と政党の関連、ウッタル・プラデーシュ州とビハール州の過疎の農村地域における貧困と政治・暴力の関連を調査対象としている。

▼発表予定の論文・著書等

1)竹中千春『世界はなぜ仲良くできないの?暴力の連鎖を解く』(阪急コミュニケーションズ、2004年刊行予定)
2)竹中千春「暴力とジェンダー――アイデンティティの抗争」、藤原帰一編『アイデンティティとイデオロギー』(講座国際政治第2巻、東京大学出版会、2004年刊行予定)