| 目的・意義 |
毛沢東の「大躍進」は,理想郷を建設するための前代未聞の実験であった。期待したはずの「私心のない兄弟のような」ソ連の援助は,帝国主義者の侵略顔負けの厳しい代償要求を伴うものであった。中国農民自らが,すなわち毛沢東自身が他人(国)の手を借りることなく理想郷・「共産主義社会」をつくり上げるようと決心した。毛沢東は,人民公社によって,地上初の共産主義の楽園を実現できると確信したのである。だが現実には,もっとも豊かな穀倉地帯でも,何百万人もの農民が餓死し,生き延びた人々も骸骨のようにやせ細っていたのである。推計3000万人の餓死者。いかに6億の人口を擁する当時の中国のとっても,その被害は惨憺たるものであったろう。いや中国ばかりではなく,人類にとっても「負の遺産」といえるだろう。
これに対する社会科学の方法論にもとづいた本格的な研究は,現在までほとんどないと思われる。その最大の理由は,中国政府が正確な人口統計データを公表しなかったことにあるが,近年これに関連するデータ (中華人民共和国人口統計資料彙編:1949-1985) が公表され,入手が可能となった。これによって,中国の省・市・郷・鎮の長期的なスパンの人口動態の把握も可能となり,人口変動の解析が可能となってきている。こうした,社会科学的アプローチによって,中国の人口変動とその社会に与えた影響の解明は,意味があるものと考えられる。「スターリンの粛清」と「毛沢東の『大躍進』」。いずれも20世紀社会主義が犯した「誤り」ではあるが,本研究によってこのいまだ未解明の「毛沢東の『大躍進』」とその帰結を解明することは,人類史にとって,大きな意義を持つものと思われる。
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