99年7月

7月1日

 何だか最近こういう駆け込み更新が多いな。
 稲葉振一郎『リベラリズムの存在証明』(紀伊國屋書店)、早いところでは昨日店頭に並んだはずだが、私の手元には昨日発送されているはずなのでまだ届いていない。何か間違っているような気もするのだがしかたがない。
 そろそろ頭も冷えて本書の議論の足りないところおかしなところ間違っているところ次のステップ等々についてのアイディアが頭の中で少しずつ形を取り始めてきたところである。次の方向としては、もっとフォーマルにできるところはフォーマルにモデル化する、ということを考えている。(順番としては逆なのかもしれないが。)今からゲーム理論なんかを厳密にやっていくのはしんどいのだが、まあぼちぼち。
 時間というのは有限なのであり、向き不向きとかやる気とかいう要因を度外視してもひとりの人間ができることというのは限られている。娘が生まれてからとみに時間が足りなくなったのは確かだが、それ以上に、そういう目先のことだけではなく、そもそもこの娘をこれから20年ほどは面倒見なければならないのだろうし、そのあと暇になったとしてももう50代半ば、明らかに人生のこりの方が少ない時代に入っているわけで、それを考えれば、人間いつまでも生きていられるわけでもなく、死ぬまでの有限な時間を適当にやりくりしなければならない。最近そういうことが気になり始めている。
 にもかかわらず、自分のキャリアがまだ始まったばかりでいってみれば青二才に過ぎない、というのもたしかな事実で、自分の出来の悪さはおいてもまあ高齢化社会ということだな。下手すると40代まで「若手」といわれかねない世の中だものなあ。

 相変わらず古本やディスカウント本は丹念に探すようにしている。最近の収穫はDavid Heldの教科書Models of Democracy: second edition, Stanford U.P.かな。いろんな人がネタに使ってそうだが翻訳はされないのだろうか。初版の翻訳前に第二版が出て大慌てという奴だろうかそれとも。
 SFもろくに読めもしないのに少し買っている。翻訳(貴重なサンリオ文庫!)を人に貸したっきりのThomas M. Disch, Camp Concentrationとか、やはり翻訳は持っているDavid Lindsay, A Voyage to Arcturus とかはともかく、James Blishの悪魔小説Black Easter and The Day After Judgementなどというマニアックなものを買ってどうするんだ俺。今ブリッシュって日本で(『宇宙大作戦』ノヴェライゼーション以外)読めるんでしょうか。『悪魔の星』(創元推理文庫)とか『宇宙播種計画』(早川書房)とか面白かったですよ。代表作の『宇宙都市』シリーズ(ハヤカワ文庫)は全然ピンとこなかったけど。
 あと、古書でもディスカウントでもなかったがCarole Pateman, Sexual Contract, Cambridge U.P.も買う。第2セメスター(途中で早々に帰国しなければならないが)で出たいセミナー(ハンナ・アーレント、アグネス・ヘラーにペイトマンときた。)で取り上げられるのだ。この本はフェミニスト政治理論の基本書として重要だそうですね。たしかに社会契約理論における家族、結婚、家父長制の位置づけは思想史的にもアクチュアルな問題としても興味深いのだ。一体何で翻訳ないんだろう。とか言うと「おまえやれ」になるのか? いやマジに誰かやれよ。


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