1997年10月16日(木)

 今日は Gender Trouble (Routledge)、Bodies That Matter (Routledge)といった著書でその名の通った Judith Butler先生の、学部ゼミの日。ゼメスターのテーマは「女の交換」で、Levi-Strauss、Irigarayから始まって、Sedgwickとかいろいろ読んでいってる。
 このあいだ、Gayle Rubin 'Traffic in Women'(1975) という、この世界では基本文献のひとつである名論文を読んだときに、学生たちがもりあがって、UCサンタクルーズ校の教授であるルービンさんをゼミに呼ぼう、ということになり、今日はいよいよルービン氏登場。
 小柄でなんとなく「中年の妖精」という感じのバトラーさんに対して、ルービンさんはかっぷくのいいおばさん。3時間、学生たちの質問に答えて、エネルギッシュに喋りまくってくれた。(彼女たちの仕事の中身についても、そのうちご紹介しよう。)

 このゼミは、学部生対象ということもあって、中身はそんなに難しくないんだけど、私の英語力では、特に学生さんの言うことが全然聞き取れないんだよなあ。先生の言うことはほぼわかるんだけど。若い人の方が早口だしね。そんなわけで、テキストをにらみながら、必死に議論に耳をそばだてているという感じで、情けなくも完全なお客さん状態。さらに、「ミメーシス」がテーマの大学院ゼミ(比較文学の講座)の方は、内容そのものがぐっと高度になるので、バークレイの優秀な大学院生たちのおしゃべりについていくのは至難の業だす。

 というわけで、ゼミと講義のあるWednesday、Thursdayは、家に帰ると「英語はもうたくさん」という感じです。で、そんなときは、田川健三『書物と
しての新約聖書』(勁草書房)をちんたら読んでる。ここ2週間ぐらい、そんなふうに間欠的に読んでいて、いまちょうど半分ぐらいですね。後に正統派になりあがっていった人たち以外の、古代の「異端」の話が、前半では面白い。とくに、「この世界は腐っとるから、そんなもんを神がつくったはずがない。したがって、神は世界の創造者ではない」としたマルキオンさんが印象的。ほかには、例の「死海文書」関係のとんでも本ブームは、冗談ではすまされないキナ臭いものだ、ということがよくわかったです。