<テーマ2 セクシュアリティと権力作用――アイデンティティ・歴史・他者 >プリント
 
1 ジェンダー/セクシュアリティのマトリックス
 1・1 性別アイデンティティと性的指向 
ø『性理論三篇』(中山元訳、ちくま学芸文庫、pp.44-45)
「性対象の倒錯の概念と、主体における性的な特性の混淆の概念を明確に区別する必要がある。この二つの概念はある程度まで独立したものであることは明らかである。」(1915年)
1・1・1 19世紀の性科学とS・フロイト『性理論三篇』
1・1・2 現代日本における「オカマ」という観念   ø『精神保健講座』
1・1・3 ジェンダー/セクシュアリティから性別(ジェンダー)アイデンティティ/性的(セクシュアル)指向へ
 1・2 性別同一性障害と同性愛 
1・2・1 性別アイデンティティ/性的指向のマトリックス
◆三つの軸
@客観的(社会的)性別
A主観的(心理的)性別(「性別自認(アイデンティティ)」)
B性的指向(セクシュアル・オリエンテーション)
[社会的性別=男]                [社会的性別=女]
         《性的指向》                   《性的指向》       
           男                        男          




 

 同性愛
 (ゲイ)

 




 

 GID?

 同性愛?
 



《性別同一性》
  


  GID

     




 
          
  「正常」   
    
         
              
 男  




 



  GID

 
  女  男        
  
   「正常」


 




 

 GID?
 
 同性愛?
 




 

 同性愛
 (レズビアン)

 




 
           女                       女          
1・2・2 性同一性障害
1・2・3 インターセックス
1・2・4 同性愛/異性愛
 1・3 ジェンダー/セクシュアリティの相対性 
1・3・1 性的指向と客観的性別/主観的性別
1・3・2 性別アイデンティティに何を含めるか
1・3・3 両極化
 
2 「ヘテロセクシズム」の社会
2・1 ジェンダー二元制とヘテロセクシズム 
2・1・1 セクシズムとヘテロセクシズム
2・1・2 同性社会と同性愛
 2・2 ホモフォビア(同性愛嫌悪)をめぐる闘争 
2・2・1 現代アメリカ合州国の同性愛者解放運動〜「ストーン・ウォール」以後
2・2・2 現代日本の同性愛者解放運動〜「府中青年の家事件」
2・2・3 同性婚の展望
ø『クィア・スタディーズ'97』「特集・婚姻法/ドメスティック・パートナーシップ制度」
3 〈セクシュアリティ〉は実在するか?
 3・1 〈同性愛〉は実在するか? 
3・1・1 〈同性愛=ホモセクシュアリティ〉の発明
3・1・2 フロイトの同性愛論と現代の脳科学
ø『性理論三篇』(中山元訳、ちくま学芸文庫、pp.44-45)
「性対象の倒錯の概念と、主体における性的な特性の混淆の概念を明確に区別する必要がある。この二つの概念はある程度まで独立したものであることは明らかである。」(1915年)
「精神分析の研究では、同性愛を特別な種類の人間として区別する試みをはっきりと否定する。(……)精神分析にとっては、対象選択が対象の性別とは無関係であること、男性でも女性でも、同じように自由に選択の対象とすることができることは、根本的なことと考えられるのであり、これは幼年期においても、未開民族や先史時台においてもみいだされる事実である。このような自由な選択のうちから、主体の条件に基づいて、正常な対象選択が行われたり、性対象倒錯的な対象選択が行われるようになるのである。このように精神分析の観点からは、男性の性的な関心が女性だけに向けられることの方が解明を要する事柄であり、化学的な牽引力によって引きつけられるというような自明な事柄ではない。」(前掲邦訳書、p.44)
øサイモン・ルベイ『クィア・サイエンス――同性愛をめぐる科学的言説の変遷』(邦訳勁草書房、原著1996年)
3・1・3 「同性愛」と〈同性愛〉の区別
 3・2 〈同性愛〉ではない「同性愛」の三つの事例 
3・2・1 古代ギリシア社会の「少年愛」 øD・ハルプリン『同性愛の百年間』他、による【→プリント】
3・2・2 ニューギニア部族社会の「儀礼的同性愛」 øG・ハート『果実の守り手たち』による【→OHP】
3・2・3 日本・江戸期の「男色」文化 ø氏家幹人『武士道とエロス』講談社現代新書、他による【→OHP】
■同性愛(homosexuality)と同性社会(homosociality) との分離
ø『imago』一九九五年一一月号「特集 ゲイ・リベレーション」(81頁)
øプリント:北丸雄二「彼らは何を恐れているのか?――アメリカにおける同性間結婚の行方」、クィア・スタディーズ編集委 員会『クィア・スタディーズ'97』(七つ森書館)
øビデオ:『レズビアン・ロード・ドキュメント』(レズビアンの女性による、アメリカ南部に生きる「同性愛者」たちのドキュメント)
ø小田亮『性』より:
「英語の〈ホモセクシュアリティhomosexuality〉という語ができたのも、セクシュアリティという語ができた後でそう古いことではなく、一八九二年にドイツの性科学者であるクラフト=エビングの『性的精神病質』(原著は一八八六年刊)の英訳がなされた際に作られた。ドイツ語圏でも初めてその語が活字になったのは一八六九年である。」(14頁) 
øH・オースターホイス「ナチス以前の同性愛と男性結社」より:
「(男性)同性愛に関する今日の歴史的研究においては、ソドミーと同性愛との区別を指摘することは、ほとんど常識となっている。19世紀のかなり遅くまで、「ソドミー」とは、特定の性的行為、特に肛門性交を意味したのであり、それは原理的には誰にでも可能な行為とみなされていた。1870年以来普及するようになった「同性愛」homosexualityや「男性同性愛」uranismというコトバは、マイノリティーの性向を指し示すために用いられた。同性愛的な行為は、もはや単なる罪や犯罪、あるいは規範からの一時的な逸脱ではなく、本質的状態と見なされるようになった。」 (『imago 特集ゲイ・リベレーション』1995年11月号、青土社、p.132)
 3・3 〈セクシュアリティ〉という構築された〈現実〉 
øEve Sedgewick, Epistemology of the Closet(『クローゼットの認識論:セクシュアリティの20世紀』青土社)
ø小田亮『一語の辞典 性』(三省堂)
「セクシュアリティ(sexuality)という英語の語は、一九世紀になってつくられた生物学の新語であり、しかもそれが動植物の有性生殖を指すという生物学的な術語を離れて、「性的能力を有すること、性的感情を持ち得ること」という現在の一般的な意味(すなわち「性欲」という意味)で使われるようになったのは、一九世紀末になってからである。」(13頁)
ø「〈セクシュアリティ〉の3つの要素」、デビッド・ハルプリン『同性愛の百年間』邦訳43頁)
@人間の精神物理学的な性質の広大なひろがりの内側に分離して存在する独自の性の領域
A他の個人的、社会生活分野とのあいだに境界を画定し、孤立
〜たとえば、「親密さ」「愛」「肉欲」といった諸観念が、〈性〉とは別のものとされるようになった。
Bアイデンティティと密接にかかわり、個々人の本質を性にかんする用語で定義づける
〜たまたま同性と性的接触を持ったということではなく、そのような行為を行なう者、すなわち〈同性愛者〉とされ、そのような型の特殊な人間として、カテゴライズされてしまう。