●課外講座 担当講師●

刑法総論(基礎Aコース)/刑法各論(基礎Bコース)

豊島 住夫

■ 自己紹介 ■
 
 私は、昭和62年司法試験に合格し、翌年司法修習生となりました。2年間の司法修習の後、平成2年に弁護士登録し、以来、主として国内の民事関係の実務に携わっています。

■ 講座の概要 ■

*法律を学ぶことについて*
(1)世の中には、「反権力」ということを標榜する人がいます。それが、いわゆる普通の人であれば、ほほえましい限りですが、中には大学の教員やジャーナリスト、評論家という肩書きの人もいます。しかし、私は、このように「反権力」を標榜する人たちのことを、子供じみた考えをする人たちだと感じています。
  もし、私たちが、犯罪の被害に遭ったり、遭いそうになると、近くの警察署や交番に駆け込んで警察の保護を求めます。民事上のトラブルも、自力で解決することができなければ、裁判所に訴えを提起し、更に、判決が出ても相手方が応じなければ、裁判所や執行官に対して、強制的に権利を実現してくれるよう求めます。このようなことができるのは、警察や裁判所(裁判官・執行官)が“権力”を持っているからです。
  社会福祉にせよ、その他の公共サービスにせよ、それらが提供される原資は国民・住民から強制的に徴収される税金です。福祉などのサービスの提供は、強制的に徴収した税金の再配分過程にすぎません。税金の徴収、行政サービスへの支出も、それぞれの担当官署が“権力”を持っているからこそできることです。
  私たちが、安全に、そして快適に暮らして行くためには、国家や地方自治体などの活動(公権力の行使)が不可欠だということがわかるでしょう。「反権力」を叫ぶ人も、実は、このような公権力の恩恵を受けて、日々生活しているのです。その中で「反権力」を叫ぶのは、まるでお釈迦様の掌の上を飛び回って胸を張る孫悟空のようなものです。

(2) ただ、私は「全ての権力は常に正しい」と言っているのではありません。
  先に述べたように、私たちが、日常生活を送るにあたって、公権力は生活の隅々まで関係しています。それゆえ、もしも公権力が誤って行使されると、安全・快適な国民生活は著しく脅かされることになります。公権力の行使は、公平で、しかも公正でなければなりません。そのため、公権力に対しては、不断のチェックも不可欠です。
  公権力の行使が、公平・公正になされているかどうか、判断の基準となるのが、皆さんが学んでいく法律です。

*講座の内容*
  本講座は、主として公務員試験、司法書士試験を目指す学生を対象に、前期に刑法総論を、後期に刑法各論を解説することを予定しています。

(1) 刑法全体について
  刑法は、ある人が行った行為に対して、裁判所が刑罰を言い渡すことに正当な根拠を与える法律です。懲役刑や、罰金刑、没収などを言い渡して犯罪者の自由や財産を奪うこともできます。死刑を言い渡して、生命を奪うことすらできます。
  学生の頃、私が刑法という科目について持った印象は、「刑法の学者は頭が固いなあ」とか「融通のきかない学問だなあ」というものでした。しかし、「頭が固い」とか「融通がきかない」ことには、ちゃんとした理由があったのです。
  先ほど述べたように、私たちが犯罪被害に会わないように、安全に暮らすためには、警察活動や犯罪者に対する刑罰権の行使は不可欠です。しかし、一個人にとってみれば、警察に捕まったり、刑罰を受けるというのは、非常に大きな苦痛を伴うものです。
  昨日まで許されていたことが今日は処罰されるのでは、安心して行動できません。自分がすれば処罰され、同じことを他人がしても許されるのでは、納得できません。このように、処罰の基準がぐらぐらして不明確では、国民は安心して生活することができません。合理的な理由もないのに、犯罪者相互で処罰が著しく違うということも、法の下の平等を定めた憲法の原理から見て好ましくありません。
  犯罪と犯罪でないものの基準を明確にしたり、犯罪者相互間で処罰が著しく違わないようにするためには、合理的で整合的な理論の体系を作って、その体系から導き出される基準(ものさし)をぐらつかせないことが大切なのです。そのような「スジを通す」「明確な基準を作る」という学問の特性が、学生の私には「頭が固い」とか「融通がきかない」と思えたのでした。刑法を学ぶということは、法学部に学ぶ専門家のたまごとして、犯罪と犯罪でないものについて、自分自身の「ものさし」を作り上げるということなのです。

(2) 刑法総論について
  ある行為が、刑法など刑罰法規の条文に当てはまる場合でも、直ちにその行為が犯罪とされて、行為者が処罰される訳ではありません。代表的な例が医師の行う手術です。医師は、患者の体をメスで切り開いて、内臓を取り出すことさえあります。これは患者の体を傷つける行為です。場合によっては、患者を死なせてしまうことすらあります。つまり、包丁で誰かに切りかかる行為と同じで、手術は傷害罪、または殺人罪に該当する行為です。しかし、それが相当の注意のもとになされた医学的に正当な手術であれば、手術を行った医師が傷害罪、殺人罪で逮捕され、処罰されることはありません(では、余命の短い患者に、医師が毒薬を注射して安楽死させた場合はどうでしょう?)。また、皆さんは、犯罪となるべき行為を行った者が年少者であったり、高度の精神障害であれば、処罰されないということも聞いたことがあるかもしれません(では、精神病院に通院歴があれば、常に処罰されないのでしょうか?)。
  そこで、法律で処罰される犯罪に該当するような行為を行った者を、「犯罪者」として処罰すべきかどうかについて、すべての犯罪現象に通じる理論的・統一的な基準(ものさし)を作り、国家の刑罰権が、適正に、そして、安定的に行使されるように“しばり”をかけるのが刑法総論の目的です。
  前期は、刑法総論(主として、犯人が一人の場合)について勉強します。

(3) 刑法各論について
  刑法各論では、「どういうことをすると、どういう犯罪になり、どういう刑罰をうけるのか」ということを勉強します。
  すべての刑罰を定めた法律(「刑罰法規」といいます)の中心となるのは「刑法」という法律の各則の部分の規定です。
  後期は、この刑法各則のうち、代表的ないくつかの犯罪の勉強をします。

■ 講座の進め方 ■

  特に教科書は指定せず、私の作成するレジュメに沿って説明する予定でいます。気楽に参加して下さい。
  法曹や公務員の仕事は、国民生活に直接関わる大変やりがいのものです。皆さんが、国家試験対策室の講座で法律をしっかり学び、法律実務家として、公務員として、公のシステム・公権力の良き担い手となってくれることを期待しています。

■ 使用教材 ■

適宜レジュメを配布します。

 

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