私たちは自衛隊イラク派遣に強く反対します

 

米国政府は、イラクが国際社会の平和と安全に与えている脅威を取り除くための最後の手段と称して、2003年3月20日、対イラク先制攻撃に踏み切りました。しかし、これが(*)国際法に反した戦争(**)であったことは明白であり、また現在まで開戦(**)理由となった大量破壊兵器はイラク国内で発見されていないために、その正当性はいっそう失われています。そして何よりも憂うべきことに、以来、戦局は混迷を深め、多くのイラク民間人、イラク人以外の民間人、兵士、公務員の方々が亡くなっています。

私たち明治学院大学国際平和研究所のスタッフ有志は、この正当性なき戦争(**)と軍事占領を一日も早く止めるべきと考えてきました。

それ故、私たちは、今回、日本政府が人道復興支援のためと称して自衛隊のイラク派遣を決定したことに強く反対します。国際平和の価値を学生たちに日頃より白金および横浜キャンパスで伝え、且つさまざまな平和教育活動を実施してきた研究所のスタッフとして、この決定は私たちの理念に余りに反するものであり、受け入れることができません。

今イラクに自衛隊を派遣することは、むしろ現地の人々や内外の日本国民に危険を招くおそれが強く、本来中立である赤十字・NGOまでもが撤退を余儀なくされているという現在のイラクの状況改善に役立つとは、とうてい思われません。正当性を欠いた現在の軍事占領からの脱却・転換を米国政府に働きかけることこそ、真の友好国の態度であると私たちは考えます。国連主導(***)の体制のもとで、復興・建設のために文民専門家を派遣することが、日本国憲法の平和主義の理念にもとづいた国際社会への貢献であり、実際に日本に求められていることではないでしょうか。今回の自衛隊派遣の実施要項策定の中止、派遣基本計画の撤回を、政府に強く求めます。

2003年12月12日
明治学院大学国際平和研究所 スタッフ有志
高原孝生、孫占坤・秋月望、阿満利麿、新川梓、井上孝代、大島純、
大林真一、勝俣誠、黒崎輝、佐藤アヤ子、宋立水、竹尾茂樹、中山弘正、
原後雄太、古市剛史、松崎美和子、吉原功、涌井秀行  (あいうえお順)

(*) 涌井秀行は、「アメリカの国家テロであり」という文言を挿入するべきであるとの留保条件をつける。
(**)涌井秀行は、「戦争」・「開戦」を「攻撃」に替えるべきであるとの留保条件をつける。
(***)涌井秀行は、「アメリカの国連利用を糾弾しつつ」という文言を挿入するべきであるとの留保条件をつける。