研究会
若者ボランティアが、着目されるようになって久しい。だが、若者ボランティアには、若者の「自分探し」や「居場所探し」に終始している、といった批判も寄せられてきた。たしかに、社会関係が断片化し生存競争が激化するなか、若者がボランティアを通じて自己肯定的なアイデンティティを模索していることは間違いない。しかし、なぜ、特別な知識も技術も持たない若者の「身勝手な」ボランティア活動が、時に現地の人びとの意識や行動を変えたり、現地社会の福利に成果をあげたりするのだろうか。
本報告では、孤独や不安を抱えた若者と、貧困・差別・災害といった問題を抱える現地の人びとが、
正義や理念ではなく、肉体労働や共同生活から得られる「実感」を通じて、反目や軋轢も孕んだ親密な共同性を新たに創出していることに着目する。そして、通常の世界では、負の烙印を押されてきた弱さ・苦しみ・素人性が人びとと繋ぎ、社会を変革する新たな契機を生み出していると論じたい。
日下渉氏(名古屋大学大学院国際開発研究科)
西尾雄志、日下渉、山口健一『承認欲求の社会変革―ワークキャンプにみる若者の連帯技法』京都大学学術出版会、2015年。
日下渉『反市民の政治学 フィリピンの民主主義と道徳』法政大学出版局、2013年。など。
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