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第二回「世界の水危機が食料生産にもたらす影響」 発言の要点◇
佐久間 智子さん:
「水ウォッチャー」として経済のグローバル化の社会・開発影響に関する調査・研究および発言を行っている経験から、マクロな視点で水問題について語っていただいた。また、世界の水危機に日本人の食生活がどのような影響を与えているか、具体例をもとに問題提起してくださった。
■ 概要 ?
1900年から2000年にかけて人口が3倍になった。また、一人当たりの水の使用が倍増したことで、世界の水使用量が7倍になり、世界の3分の1が水不足に陥っている。このまま人口と水使用量が増え続けると今後40年間で水需要は2倍になり、世界の3分の2が水不足に陥ると国連が予測している。
世界の淡水の7割が農業に使用されているため、水問題には農業のあり方が深く関係している。農業の大規模化にともなう水質汚染、地下水の枯渇は今後も深刻化することが予測される。他にも、森林伐採による自然の保水力の低下や、気候変動による降雨の減少や偏りが水問題に与える影響は大きい。 ? 私たちは穀物そのものというよりも肉を消費することで間接的に穀物をとっている。近年の日本人の食生活をみてみると、肉、乳製品、油脂など自給率が低い製品の消費量が増加している傾向がみられる。純輸入国である日本は輸入に頼ることなく食生活を送ることはできない。 飢餓は起きるはずはないのに起きている。それは先進国の過剰消費が原因である。お金があるからこそ可能だが、自然環境への付加は大きいうえ、途上国の人々が主食を買う権利さえも奪っている。私たちは生活の持続可能性を考えるべきだ。
■ 詳細 ?
地球では一定量の水が循環しているため絶対量は変わらないが、1900年から2000年にかけて世界の人口は3倍になり、一人あたりの水使用は2倍以上になった。それにともなって水使用量は7倍になり、世界の3分の1が水不足に陥っている。 世界の淡水の7割が農業に使用されているため、水問題には農業のあり方が深く関係している。1950年から2002年にかけて灌漑農地が2.5倍以上になった。さらに今後30年間で、途上国の灌漑面積は24%、水使用量は14%増加すると予想されている。 水問題をまとめると以下のようなことがあげられる。
・ 農業の大規模化にともない、大量に使用されるようになった農薬や化学肥料などによる汚染。
・ くみ上げ過剰による地下水の枯渇。
・ 食料やバイオ燃料作物を生産するために森林伐採が加速し、自然の保水力が低下することによる良質な水の減少。
・ 気候変動による降雨量の減少や偏り。それにともなう砂漠化や水害。
・ 水の商品化、民営化、ダム建設による水利権の移動による水へのアクセスの不平等。
・ 今後40年で水需要は2倍になる。16年後には世界人口の3分の2が水不足の地域に住むことになると
国連が予測している。
・ 水問題は私たちの食生活とも深く関係している。
・ 1人1日あたり2Lを飲料水、330Lを生活用水として消費するのに対し、穀物生産には1人1日あたり2000Lの水が必要。
・ 飼料としてとうもろこしが、加工食品用に大豆が大量に使用されているため、私たちは穀物そのものというよりも
肉を消費することで間接的に穀物をとっている。
・ 穀物を生産するには水を大量に使用するため、生活用水の10倍の水が穀物生産に使われている。
・ 1970年から2005年の35年間に世界人口は約1.8倍になったが、穀物需要の増加率はそれを上回っている。
・ 小麦の需要は1.9倍へ。
・ 家畜のえさの主原料となるとうもろこしの需要は2.7倍へ。
・ 家畜のえさや加工食品に多く使われている大豆の需要は4.8倍へ。
近年の日本人の食生活をみてみると、主食の米の消費量は減少している一方で、肉、乳製品、油脂など自給率が低い製品の消費量が増加している。日本は輸入に頼ることなく食生活を送ることはできない。 エコロジカル・フットプリントという言葉がある。私たちが生活するために必要な資源を生産するのに、どれくらいの土地面積が必要かという指標。全世界の人々が日本人と同じ水準の生活を享受するためには、地球が2.4個必要な計算になる。 穀物の輸入国の多くは途上国である。また、途上国における食費の割合は高い。食料危機により日本が食料を輸入すれば途上国が飢えるという構造がある。 飢餓は起きるはずはないのに起きている。それは先進国の過剰消費が原因である。お金があるからこそ可能だが、自然環境への付加は大きいうえ、途上国の人々が主食を買う権利さえも奪っている。私たちは生活の持続可能性を考えるべきだ。
■ 発言者プロフィール 佐久間 智子(さくま・ともこ)
アジア太平洋資料センター理事。 1996年〜2001年、市民フォーラム2001事務局長。
現在、「環境・持続社会」研究センター理事、女子栄養大学非常勤講師、明治学院大学国際平和研究所研究員
などを務めており、経済のグローバル化の社会・開発影響に関する調査・研究および発言を行っている
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