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明治学院大学国際平和研究所(PRIME)
東日本大震災に関する声明
このたびの東日本大震災の犠牲になられた多くの方々に追悼の意を表し、被災された皆様に対しお見舞い申し上げます。
私たち、明治学院大学国際平和研究所(以下PRIME)は、明治学院大学の学部組織から自律し、学外の研究者や市民活動家にも開かれた平和研究組織です。世界平和実現の条件を研究し、学内外の平和研究者、NGO・平和運動関係者と学際的交流を行うことを目的として、 1986年に設立されました。普遍的視点からの地域的研究、社会性あるいは時代性のある研究、学際性の高い研究を重視しながら、平和の諸問題に取り組んできました。
私たちは、2011年3月11日に発生した東日本大震災及び原発事故によって、この地域にすむ人々の生命と生活が著しく損なわれると同時に、社会全体の安定と多様性が危機にさらされていると認識しています。
1.安全地帯への避難を
福島第一原発で、放射性物質の流出が起こっています。今も、放射線にさらされながら周辺地域に多くの人々が取り残され、今後の推移によっては生命への危険も否定できない危機に瀕しています。迅速な避難策、特に乳幼児や妊婦、病人を、一刻も早く福島第一原発から遠く離れた場所に、コミュニティの絆に配慮しながら、避難させる必要性を強く認識します。政府や関係機関には、早急な対応を要望します。
2.正確な情報を
こうした事態についての関係諸機関の情報伝達は十分とは言えません。政府及び地方自治体は、生命の保全を第一とする正確な状況分析と情報開示をおこなうこと。被災の状況や、原発や放射性物質の流出をめぐる正確な情報を提供すること。以上を要求します。
3.差別なき支援を
その際に、地震、津波、放射能汚染に直面する人々が置かれている状況は、居住地域や、その人の年齢、性別、障害の有無、国籍の違い、来歴などによって異なり、個別の背景に応じて丁寧にケアしていく必要があります。
4.私たち大学は状況分析と提言を
市民社会は、「非常事態」や「自粛」の雰囲気に流されず、社会的に弱い立場の人々への目配りをし、少数意見への寛容性を失わずに、草の根のレベルで連帯と信頼を築く必要があると考えます。
私たちは、東日本大震災と原発事故がもたらした深刻な危機は、経済的成長に専心し、格差を拡大し、環境を破壊し、弱者を切り捨ててきた近代日本社会のあり方と密接に結びついたものであると考えます。震災復興において生命と生活の保障とコミュニティの再生が急務です。このような社会の再建のために叡智を集める必要があります。その際には、経済成長に依存する社会のあり方を検討して、新たな生産と生活のあり方を模索する必要があります。私たちは、原子力発電への依存から脱却し、核のない社会を実現する決意です。こうした営みは、現存する政治や経済の仕組だけではなく、広義の研究や教育のあり方に対しても批判的な問い直しを必要とします。
5.開かれた言論と自由な批評を
大規模災害時の社会においては、被害の増大を食い止め、復興を進めるために、開かれた言論と自由な批評が保障されなければなりません。しかし、政府とメディアによる情報管理や、国民の一致団結を求める社会的風潮によって、自由な言論と批評が妨げられる危険があります。批評や批判を封殺することのない、開かれた議論と表現の場が必要です。
PRIMEは以上のような課題を解決する使命を負うと考え、人々の平和と安全を第一に尊重する立場から研究教育活動を進めていくことを宣言します。
2011年4月1日
明治学院大学 国際平和研究所(PRIME)
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