日本被団協のノーベル平和賞受賞に対し、明治学院大学国際平和研究所所長より、以下のようなメッセージを発表しました。
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日本被団協のノーベル平和賞受賞の報に接して
10月11日、2024年度のノーベル平和賞が、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に授与されることが決定されたとの発表がありました。心より祝意を表したいと思います。
明治学院大学国際平和研究所は、核軍縮を、研究・教育活動の一つの重要なテーマとしています。2004年からは「広島・長崎講座」を毎年開講し、初回以来、被爆者の方々の証言を、講座・講義の大きな柱として位置付けてきました。
79年前、広島・長崎の上空で炸裂した原爆は、地上に地獄を現出させました。もはや兵器とも形容されるべきでない代物です。それを身を以て体験し、戦後の苦しみを生き抜いた被爆者の方々は、もう二度と、誰の頭の上にも核は使われてはならないと訴えてこられました。
「自分たちと同じ思いを他の誰にも経験させてはならない」という被爆者の方々の訴えは、現実に核兵器禁止条約を成立させ、そして、ノーベル委員会が授賞発表で述べたように「核のタブー」を維持する上で現実的な力となって、核戦争の勃発を防いできました。それはまた、今日の世界で戦火が止まぬ中、際限のない暴力の応酬を断ち切る方向へと人類が進むための、尊いメッセージでもあります。
しかしながら、「核戦争を起こすな、核兵器をなくせ!」「原爆被害者援護法の制定を今すぐに!」という被爆者の二大要求は、未だに実現していません。核戦争の危険は今、戦後最悪のレベルに達しているにも拘らず、多くの日本国民はそうした厳しい現実から目を逸らし、偽りの安逸の中にでもいるかのようです。
今回の受賞を機に、今、改めて核兵器の脅威に目を向けようという機運が拡がり、被爆者の方々の経験とメッセージが、日本及び世界の若い世代に継承されてゆくのであれば、明治学院大学国際平和研究所は、それを促進し、対話を広げてゆきたいと思います。
2024年10月12日
明治学院大学国際平和研究所長 戸谷 浩