社会学科

実習紹介


 社会学科では、毎年度、社会調査関連科目の総仕上げとして、
  1年間の「社会調査実習」が開講されています


写真:社会調査実習報告書
「社会調査実習」とは,社会調査の企画から,実査,データ分析,報告書の執筆までを,10~20名ほどの少人数で行う科目です。専門の教員の指導のもとに,学生自身がフィールドに出てデータを集め,さまざまな方法で分析を加え,得た知見に基づいて年度末に報告書を作成します.自らの手で「社会学」を実践することができる,貴重な機会です。社会学科の学生は3年次にこの「社会調査実習」を履修することができます。また,2年次には「社会調査実習」の準備ともいえる「フィールドワーク演習」という科目も置かれています。


  2008年度の実習風景(柘植) ・・・沖縄
人々は「健康」についていかに考え、行動しているのでしょうか。
それは、どんな経験や価値意識に支えられているのでしょうか。
また、健康であること、そして健康でないことは、社会的、文化的にどのように評価されているのでしょうか。
2005年度に女性の平均寿命が一番高かった沖縄県中頭郡北中城村の大城と安谷屋地域において、インタビュー(聞き取り)によって調査した様子を紹介します。

調査地の沖縄に到着

地元の方の案内でフィールド調査

学生だけでフィールド調査

グループインタビュー


  社会を見る力を獲得しよう

1:社会を紙に書いてみよう

「社会学とはどのような学問ですか」と問われたとき,私は「社会を紙に書く仕事です」と答えることにしています。「社会を紙に書く」って,一体どういうことでしょう。リンゴや梨のように,見たり触ったりできるものであれば,比較的容易に紙に書き取ることができるでしょう。ところが「社会を紙に書いてみましょう」と言われると,見たり触ったりできないものを紙に書くというのですから,ちょっとびっくりするだろうと思います。

2:たとえばこのように書くことができます

でも,書くことは可能です。たとえば地図という表現方法を使うことができます。膨大なデータをコンピュータで解析し住民のライフスタイルを分類することにより,どこに,どのような人びとが暮らしているか,描き出すことができます。すると,どんなメリットがあるか。たとえば,郵便番号から「その人が読んでいる雑誌,食べている夕飯のおかず,リベラルな共和党員なのか,それとも政治に関心を失ってしまった民主党員なのかを示すことができる」(ワイス,1994:1)のです。企業の経営戦略,行政による施策立案,地域福祉の策定などの基礎資料として,有効に活用できるでしょう。

3:思いつきだけでは,書けないのです

「なんだ,簡単じゃないか」と思われたかもしれませんね。「現代社会の特質は,格差社会である」のように,思いついたままに書けばよいのか。それなら簡単だと思われたかもしれません。残念ながらそれほど簡単ではありません。現代社会とはいつの時代の,どこにある社会なのかをきちんと説明しなければなりません。また,格差社会とはどのような社会でなぜそう呼ぶことができるのか,証拠を示さなければならないからです。なぜ証拠が必要か。証拠の提示がない議論は無益だからです。「格差社会だと思う」「そうは思わない」などと言い合っていても埒があかないことは,すぐに想像できますね。

3:社会調査実習で社会を見る力を獲得しよう

証拠とはどのようなものでしょうか。犯罪を立証するときのことを考えてみましょう。現場に足跡が残っていたとか,犯行におよぶ動機がみとめられるとか,犯行時のアリバイがない,などが証拠になりますね。つまり証拠とは「足跡」のような物的なものだけを指すのではありません。「動機」のように解釈を通してしか探り得ないものもあるのです。また,「アリバイ」のように論理的な推論を通して得るものもあります。したがって,証拠集めの技法,つまり社会調査の技法は,集めたい証拠の種類によって多様となるわけです。

目的に応じて自在に操ることができる社会調査の技法を身につけるためには,社会調査実習を通して実際にやってみるのが一番です。実際に調査をするのですから,簡単ではありません。でも,証拠を集めたうえで「社会を紙に書く」力を獲得しませんか。「社会学って何ができる?」と問われたとき,「社会を見る力があるのさ」と胸を張って答えられたらいいなぁ,と私は思っております。

参考文献:M.J.ワイス『アメリカライフスタイル全書』日本経済新聞社,1994年
社会学科 2009年度「実習」責任者 浅川 達人