運動/思想としてのフェミニズムやフランスの思想家M・フーコーが提起した問題のいくつかを自分なりに考えつづけてきました。性差別・性役割の現状分析、性の商品化、身体論、フェミニズムの状況・運動論などについて書きましたが、いま特に興味をもっているテーマは大きく分けて二つあります。一つは、「性別とはそもそも何か?」という問いにかかわる、いわば性現象の原理論。もう一つは、「生殖」をめぐる問題系、具体的には生殖における女性の自己決定権をめぐる倫理学的な考察や、性道徳と優生思想との絡み合いについての歴史的探究。もちろんこれらは別個のテーマではありません。人間が〈性別を持つ〉という事態は、究極的には有性生殖という生物学的条件の上に成り立っているのですから。
そうした観点から、進化生物学や脳・神経科学の動向にもシロウトなりに深い関心をもっています。当面は、生殖技術と遺伝子技術の交わる地点に注目し、〈生命〉をめぐる権力関係の分析に集中していくつもりです。
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「遺伝子決定論、あるいは〈運命愛〉の両義性について---言説としての遺伝子/DNA』(柘植あづみ・加藤秀一[編著]『遺伝子技術の社会学---テクノソサエティの現在Ⅰ』文化書房博文社、2007年、第一章) |
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「性的身体ノート---〈男語り〉の不可能性から〈新しい人〉の可能性へ」(荻野美穂ほか[編]『資源としての身体---身体をめぐるレッスン2』岩波書店、2006年) |
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「ジェンダーと進化生物学」(江原由美子・山崎敬一編『ジェンダーと社会理論』有斐閣、2006年、第1章) |
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「ジェンダーの二〇世紀」(『岩波講座 二〇世紀の定義 8 〈マイナー〉の声』岩波書店、2002年) |
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「フェミニズムを古びさせるのは誰か?」(『大航海』39号、新書館、2001年) |
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「身体を所有しない奴隷---自己決定権の擁護」(『思想』No.922、2001年) |
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「構築主義と身体の臨界」(上野千鶴子編『構築主義とは何か』勁草書房、2001年) |
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「女性の自己決定権の擁護」(江原由美子編『生殖技術とジェンダー』勁草書房、1996年) |
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「『風の谷のナウシカ』試論---〈追憶〉と死者たち」(『季刊 窓』第22号、窓社、1994年) |
受験生諸君へ。人生のなかで、大学生として読書や議論にあけくれる日々ほど素晴らしいものはありません。それは、いかなる恋愛や仕事や旅にも優るとも劣らない貴重な時間です。ひとにお金を出してもらって勉強できるということが、この世界のなかで、どれほど恵まれた身分であるか。ほんの少しばかりの想像力を働かせてみればわかるでしょう。けれども、正直なところ、こんなハナシには「はぁ?」と言う人の方が多数派かもしれない、とも思います。それでも、上に書いたことが「もしかしたら本当かもしれない、本当だったらいいなあ」と感じられる人にこそ、ぼくらと共に学んでほしいと願っています。
在校生諸君へ。上に書いたことはそのまま君たちへのメッセージでもあります。「いまやりたいこと」が企業のインターンだったりする学生たちを見ていて、それ自体が悪いということではないけれども、「浮世を離れて勉強さえしていれば許される」という学生ならではのかけがえのない贅沢をもっと思いっきり享受すればいいのに、とときどき思います。
卒業生諸君へ。ぼくの好きな歌詞の一節を。「勇気なんていらないぜ/僕には旅に出る理由なんて何一つない/手を離してみようぜ」(くるり「ハイウェイ」)