10年ほど前に、北アイルランドのベルファストという都市で数ヶ月を過ごす機会があり、それ以来、この地方の紛争の背景を歴史的にさかのぼって研究するようになりました。研究課題の一端を紹介すると、(1)この紛争をプロテスタントとカトリックという二つの宗派の人々の間の「宗教紛争」と考えることは正しいのかどうか、という問題や、(2)多数派のプロテスタント住民の多くは自分たちをイギリス人(ブリティッシュ)と考え、北アイルランドはイギリス(連合王国)の一部であると主張していますが、かれらは本当にイギリス人と言えるのだろうか、といった問題などが挙げられます。北アイルランド紛争をネイション(国民・民族)、エスニシティ、アイデンティティといった歴史社会学の概念や理論によって分析することを通して、世界各地において起こっているさまざまな地域紛争と比較研究する視点も見失わないように心掛けています。
明治学院大学で教鞭をとるようになって30年が経ちました。赴任した頃の白金キャンパスの建物や設備、当時の学生数とか学生の生活スタイルなどを想い起こすと、まさに隔世の感がありますが、この間、ほとんどすべての学生諸君が社会学科で勉強した4年間に満足して卒業していったように思えます。これは、私たち社会学科の教員が誇ってよいことだと思いますし、また、よい学生にめぐり会えた幸運にも感謝しなくてはならないことだと思います。
社会学の研究領域は大きく変わってきましたが、今、私たちの社会学科には新しい社会の大きな変化を深く鋭く考えることのできる若い世代の優秀な社会学者がそろっています。これから大学を受験する皆さんも、すでに社会学科を卒業された皆さんも、私たちと在学中の学生諸君の動向に注目してください。