Eテレ「オイコノミア」バブル篇について (2013年1月8・15日放映)

オイコノミアをご覧いただきましてありがとうございました。
昨年8月の円高篇に比べると、少しは気持ちの余裕を持ちながら説明できたような気がします。
今回ははじめから、私自身も、わかりやすく、という気持ちを忘れないようにしたのと、番組の構成自体も工夫されていて、あきないで観ることができるようになっていたと思います。
以下、補足と感想です。

〇何気に緊張した面持ちだ、もっと目をぱっちりあければいいのに、こういう言い方すればよかったな、などなど、後になっていろいろ反省しながらみました。

〇番組に採用されていなかった説明として、「バブルだと気付いていてもバブルから一人だけ抜けることはできない」という話があります。バブルのとき、誰も何も気づいていないわけではなく、これはバブルなんだろうな、と気づいている人ももちろんいます。しかし、そういう人でも、自分だけが投資から手を引いて、高収益を逃すわけにはいきません。特に、自分が運用担当者だったり、証券を売る立場であれば、バブリーな投資から手を引いて、自分だけ業績を下げる、ということはできないのです。一方、バブルが崩壊するときのように全員一緒に収益が下がるときは一人だけ咎められることはないでしょう。そうなると、わかっていてもバブルが崩壊するまでは手を引くわけにはいかないのです。こういういったこともバブルを膨らませる要因になっています。

〇もう一つ、番組ではあまり出ませんでしたが、バブル時代、私は学生だったこともあり、インタビューに登場した方たちのような体験は残念ながらしていません。あのインタビューをみて、あらためて、バブル時代を知ってる世代といわれるけれど、私は外から傍観してただけなんだな、と思いました。ジュリアナができたのは1992年です。日経平均が落ち始めたのが1990年初頭ですから、ジュリアナができたのはバブルの最後の頃ということになります。私は大学院生でしたが、当時「さすがにあれ(ボディコン・お立ち台・扇子)はやりすぎじゃないの?!」と思っていたことを思い出しました。

〇バブルが崩壊したらどうしたらいいでしょう、と又吉さんに聞かれたときは、まったく答えを用意していなかったのでかなり慌ててしまいました。バブルが崩壊したときの政策的な対応策は沢山思いつきますが、又吉さん個人(というか一人の個人投資家)がどうしたらいいか、という素朴な質問は予想していなかったので。。。その場面が映っていたのでお恥ずかしいです・・・。

〇バブルを崩壊させないように金融政策を運用する、という部分は、現在も大変注目されているところなのでもっとお話ししたい気持ちもありましたが、それだけで一つの回になってしまうくらいお話しすることがあるので、今回は最後に簡単に説明するのにとどめました。

〇毎回思うことですが、番組の編集・構成ってとても大変な作業ですよね。私が何時間もだらだらしゃべったことが、あれだけコンパクトにうまくつながっているのをみて、すごい!と思います。制作関係者の皆様ありがとうございました。

〇最後に、今回私があらためて読み直した本をいくつかご紹介したいと思います。もっと深くバブルについて勉強されたい方の参考になればうれしいです。

「熱狂、恐慌、崩壊―金融恐慌の歴史」チャールズ・P. キンドルバーガー著
「バブルの物語」ガルブレイズ著
「国家は破たんする」(This time is different)ロゴフ=レインハート著
(合理的群衆行動については、オイコノミアに出演されている安田先生が過去に日経新聞に書かれた説明を参考にさせていただき、安田先生のコメントも事前にいただきました。ありがとうございました。)

2013.1.16.



Eテレ 「オイコノミア」円高篇について(2012年8月放映)

オイコノミアをご覧いただいた皆様ありがとうございます。
慣れないテレビで、なかなか思うように説明できないところもありました。
ここでは、オイコノミアをご覧いただき、さらに興味をもった、あるいは、疑問に思ったことがあってここを開いてくださった方に向けて若干の補足をしておきたいと思います。

○ 放映日のことですが、もともと前編は8月7日(火)と11日(土)に放映されるはずだったのですが、オリンピックの関係で、変則的に11日(土)・14日(火)・18日(土)の3回放映されることになりました。

○ PPP(購買力平価)のところの説明は、できればもう少しわかりやすく話したかったです。授業ではもっとわかりやすく説明できているとおもうのですが、やはりテレビの仕組みがよくわかっていなくて、あとになっていろいろ後悔するところもあります。。。。ここでは気になった点だけメモしておきます。

・・・わかりやすく説明すると、購買力平価説というのは、自国と外国の物価が同じになるように為替相場は変化していく、という考え方です。最近の日米のように、日本の物価はほとんど変化せず、アメリカの物価がどんどん上がっていたようなときには、円高になる、と考えられます。
購買力平価説  日本の物価 → = 円ドルレート↓ × アメリカの物価↑
(より正確な説明は、国際金融のテキストを見ていただければと思います。ほとんどのテキストが購買力平価説を取り上げています。)

・・・為替相場は需要と供給で決まります。その需要供給を大きく動かす要因を取り上げて、為替相場の動きを考えるのが為替相場の決定論であり、購買力平価説はそのなかの代表的なものです。ただし、購買力平価説は物価を基本としているため、物価が調整されるような長期的な動きを考えるときに役立つものです。短期的には資本市場での取引の影響が大きく、それについてはアセットアプローチなどといった決定論で説明されています。

・・・例に出したPPPレートは一例に過ぎないです。基準を変えると上下に動く可能性もありますし、物価の選び方によっては形がかわります。

・・・最近の円高のインパクトは、以前の円高のときより小さい、という説明がありましたが、そこで説明したかったことは、日米の最近の物価変化の違いです。例えば、最近20年をとってみると、日本の物価はほとんど変化がありませんが、アメリカの物価は測り方によっては1.5倍くらいに上がっています(下図参照)。為替相場が変わらなければ、日本の商品はアメリカの商品にくらべて相対的にかなり安くなったでしょう。(実際に、大きく円高が進む前の、2000年代前半までは一部の産業では日本製品の価格が相対的に下がり、輸出競争力が上昇していました。)あるいは違う見方をすれば、このような物価の相対的な違いがなければ、今回の円高はもっと悲惨な影響を与えたと考えられるのです。現在の円高は若干高すぎるという見方もできますが、少なくとも最近5年くらいの名目相場の変化の大部分はそれ以前に大きくひらいた物価格差を是正するものであり、名目相場の変化がそのまま日本の輸出をだめにした、というような表現は誤りだということです。

○ この前編での主なメッセージは、円高・円安には当然ですがいい面も悪い面もあるということ、一物一価の話から、購買力平価を理解し、さらに目の前の円相場(名目円相場)だけでなく、自国と外国の物価がどう動いているか(実質円相場)を考えるべきである、ということです。


〇 後編については追加説明はありません。

*題名「円が高いのいいんじゃない?!」というのが誤解を呼んでしまったかもしれませんが、「円高賛美」と誤解されている方がいてびっくりしました。この番組は、多くの大学生が経済学部で学ぶような一般的な経済学の考え方を紹介するもので、円高を賛美したり、逆に円高を目の敵にしたり、というものではありません。

2012.9.24.


(参考)日本の消費者物価指数とアメリカの消費者物価指数