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先輩の遺志を絶やさず、途上国の子どもたちへの支援を続ける。JUNKO Associationの学生たちの意志

2021.12.09

「途上国の子どもたちが満足な教育を受けられる環境を創出するために一生をささげたい」。1993年に事故で逝去した国際学部3年生(当時)、高橋淳子さんがベトナムで考えたことです。その遺志を継ぐ学生団体が、NPO法人JUNKO Association。57名の学生が活動しており、ベトナムでの「ジュンコ・スクール」創設、ミャンマーでの図書館建設など、東南アジアで教育支援を行っています。功績が評価され、2020年には外務大臣表彰を受賞しました。今年創立26周年を迎えたJUNKO Associationの学生たちが活動について語り合いました。

Nozomi Kitajima 北島 望 国際学部 国際学科 3年

JUNKO Association 副代表。タイ旅行で海外に興味を持ち、国際法、難民などについて学ぶために入学。孫占坤ゼミ所属。読書、バイオリン演奏、音楽鑑賞、バスケットボールが趣味。バイオリンは1年次に管弦楽団でも弾いていた腕前。

Natsumi Akane 赤根 夏実 国際学部 国際学科 2年

JUNKO Association ミャンマープロジェクトリーダー。さまざまな国際的な分野に魅力を感じて入学。平山恵ゼミ所属。入学前から明学でボランティアをしたいと考えていた。趣味は高校まで部活動をしていたバスケットボール。

-ボランティアや東南アジアに興味がありJUNKO Associationに入部

赤根

国際学部のオンライン新入生イベントで、先輩が声をかけてくれてJUNKO Association(以下、JUNKO)に入りました。大学ではボランティアをしたいと思っていたし、見学したら楽しそうで。

北島

東南アジアの文化や人に興味があり、自分の目で見たいと考えていたとき、JUNKOに出会いました。学生団体であるだけでなくNPOでもあるしっかりした団体で、ガッツリ活動できると思ったので入部しました。実際そのとおりでした。

-活動にある「2つの軸」

赤根

ミャンマープロジェクトのリーダーとして、現在はコロナ対策の緊急支援(感染対策)をメインに行っています。現地の4つの学校(幼稚園から高校までの一貫校、僧院学校1校、2つの孤児院)と交流中です。コロナ禍前は図書館を建設して、運営のノウハウを伝える図書館企画や、意欲ある生徒を奨学金で支援する助成金企画を実施していました。神奈川県の高校生と現地の生徒のペンパル企画も行っており、今後、「ミャンマーを知ってもらうパンフレットを作ろう」という企画も行う予定です。この活動には2つの軸があり、1つはボランティアの固定観念を壊すこと。「国際ボランティアは国内からはできない、できることはない」といったイメージから脱却します。2つ目はミャンマーを知ってもらうこと。そのために高校生が自分でパンフレットを考案します。

北島

JUNKOで副代表を務めています。赤根さんの前のプロジェクトリーダーです。自分たち3年生は、ミャンマーで活動できた最後の世代。1年次には現地で助成金企画などを実施しました。

赤根

私はリーダーとしては新人なので、現地とのコミュニケーションもまだまだです。現地の人から返信がないこともありましたが、そんなときは、北島さんをはじめ先輩が助けてくれています。

北島

JUNKOには卒業生などの理事もいます。理事以外にも現地赴任中の方や日本語学校経営者も。特にコロナ禍ではすごく助けてもらいました。現地は軍事問題もあるので、SNSで町の様子を伝えてくれるミャンマーの人も含めると20人くらいがサポートしてくれています。

-今、力を入れているのはミャンマーへの緊急支援(感染対策)

北島

前例もなく活動の見通しが立たなくなる中、最後に現地に行ったのは2020年1~2月でした。ミャンマーでも感染者が増え始めたので、5~6月頃から衛生支援を最優先で行うことになりました。ミャンマープロジェクト(1年生8人、2年生4人、3年生5人)全員で取り組んでおり、引退した4年生もたまに来てくれています。

赤根

衛生面をハードとソフトから支援しています。ハードでは石鹸や石鹸ネット、消毒用のスプレーやマスクの送付。現地の協力できちんと物資が届いています。ソフトとしてはポスターを10種類制作しました。衛生用品の使い方、感染対策の必要性、ウイルスはどう広がるかなど、厚労省のサイトを参照したりして、一目でわかるポスターを作りました。

北島

感染対策だけではなく、感染の仕組みなども伝わるようにポスターを制作しています。

赤根

ポスターの言語はミャンマー語なので、ミャンマーへの留学経験があるJUNKOの先輩、佐藤夏希さん(国際4年)が翻訳してくれました。

北島

交流先の孤児院は外部からの出入りが多いのですが、ポスターの効果もあり、現在、感染者0で抑えられています。

赤根

現地からの写真で、ポスターを興味深く見てくれていることがわかりました。なにより嬉しかったですね。「洗面台のそばに貼ろう」と提案するなど、掲示場所も考えました。クーデターなどの社会情勢がなければ、もっと多くの地域の人に見てもらいたいのですが…。さらに何ができるのか、現地の人とオンラインで話し合う予定です。

北島

物資送付は表面的な支援にとどまりがちなので、衛生への理解、教育促進をより重視していこうと考えています。JUNKO自体、教育支援をメインで行っているので、ベースになるのはソフトだと感じています。

-26年目を迎えたJUNKOで思うこと

北島

課題はいろいろありますが、高橋淳子さんの遺志を学生・OBOGが毎年引き継いで活動することがとても大切です。外務大臣表彰も活動が認められたからこそ。現地の協力者、支援してくださる一般の人にも感謝しています。

赤根

以前、淳子さんのお墓参りで、お父さんが娘の淳子さんのためにもっとできたことがあったのではと自問しておられたことが印象的でした。何ができるか皆で考え続けた結果、25年も活動が続き、今の学生にも影響を与える団体になったことはすごいと思います。活動をなくしてはいけない、続けたいと思いました。

北島

今年の夏、ベトナムの方が、淳子さんの思いへの感謝とお礼を綴った詩を作りパネルにして、外務省経由で送ってくださいました。ジュンコ・スクールの卒業生などではなく、ジュンコ・スクールの取り組みを知り共感してくださった一般の方だったので、ここまで広まったことに驚きました。

-JUNKOが目指すこれから

北島

JUNKOはベトナム、ミャンマーなど現地の工芸品の制作や販売を手掛けるビジネスプロジェクトも行っています。販売の場であるイベントが中止され、営業休止中の雑貨店もあるので、昨年末からオンライン販売を始めました。今後の見通しが不透明なため、一過性のものではなく少し長いスパンで考えたいです。

赤根

緊急支援に注力中ですが、現地の社会情勢のために、学校や図書館に行けない児童や教師への教育支援も進めたいと考えています。

北島

JUNKOの本来のゴールは「現地からの撤退」。つまり、現地ですべてが回り支援が不要になること。それを目指して、現地で教育支援を続けたいですね。また、淳子さんの遺志を今後もずっと大切にしたいです。例えば自分が卒業後、理事になったり、子どもが明学に入学して、JUNKOに参加したりするかもしれません。そのくらい長く淳子さんの遺志が引き継がれていってほしいです。

赤根

いいですね!

北島

すごく先のことですが、自分の子どもにも参加してほしいと思うくらい、得難い経験です。

赤根

北島さんは人を大切にして力を注いでくれる先輩。すごく感謝しています。北島さんのようなたくさんの先輩の思いが、淳子さんの思いにのってどんどん大きくなっています。それを感じて活動するのは楽しいし、将来もそんな楽しさが味わえるJUNKOであってほしいと思います。

北島

自分も先輩に助けてもらいました。今は先輩の責任として、次の代に尽くしたいです。緊急支援が実施できているのは、リーダーである赤根さん自身の好奇心やメンバーと綿密に連携できる力などが大きいです。

-「コロナ世代は最強世代」。先輩からの励まし

赤根

活動で印象的な言葉が2つありました。1つは「絶対にかわいそうではない」。現地の人たちは幸せだし豊かなのです。かわいそうだから支援しているのではないということ。もう1つはJUNKOの代表である阿部雄也さん(英文3年)に言われた「コロナ世代は最強世代」。コロナだからできないと言っていても仕方ありません。それを乗り越えている自分たちだからこそできることが必ずあるはず。そう励ましてもらいました。阿部さんはそれをパッと言えるくらい思いが強い人。勇気づけられました。

-将来はJUNKOでの学びを生かして

赤根

ボランティア自体も、こんなに正解のない活動も初めて。JUNKOは成長でき、自分が活躍できる場所です。それはまわりのメンバーからのフォローや先輩からの協力があったから。もっと自分も成長させて、大好きなJUNKOやミャンマーのために力を尽くしたいです。

北島

3年間、JUNKOで毎日追われるくらい考え、毎週のミーティングなど大変なこともたくさんありました。でも、考えた成果を得て、成長が実感できるので、活動していてよかったと思います。何気ない動機で入りましたが、ボランティアの意義を知ることができ、他者に尽くす楽しさや素晴らしさを知ることができました。自己形成にもつながっています。

赤根

教職の授業やJUNKOでの教育活動、塾講師などから、教育はすべての問題を解決する根本だと感じています。できれば海外での経験も重ね、人と関わることができる仕事をしたいと考えています。

北島

将来を考える際もJUNKOの活動から影響を受けました。職種としてインフラ、開発、建設関係などを考えていて、どんな職業に就いても社会や人に貢献できる環境を軸にしていきたいです。

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