田原いずみ 専任講師
2009年4月に明治学院大学のフランス文学科に着任しました。
明治学院大学に来る前は約13年間スイスのジュネーヴに住んでいました。ジュネーヴでは、ジュネーヴ大学で言語学科の博士課程に在籍し、博士号取得後は日本語学科で日本語を教えていました。スイスでは、大学での専門の言語学と日本語教育の研究をすると同時に、スキーの楽しさを覚え、チーズフォンデューも作れるようになりました。
専門領域はフランス言語学です。最も関心があるのは、フランス語における時制、時間の副詞などの時間表現、客観性の表現の語用論的研究です。大学3年生の時のフランス文学講読の授業で、フロベールの小説の世界を鑑賞しようという担当の先生のお考えとは裏腹に、『ボヴァリー夫人』に用いられている半過去の多様性と難解さに衝撃を受けたのがきっかけになって、この世界に足を踏み入れました。
フランス語を対象とした言語学の分野から、2、3のテーマを選び、それに関する文献を講読することによって、フランス語という言語の様々な側面、そして言語学のとても広い学問の少なくともいくつかの分野についての基礎知識を学んでいただきます。2009年度は、前期に“フランス語史”と“フランス語の様々なヴァリエーション”を、後期には“フランス語の文法”(特に時制、アスペクト、モダリティー、限定詞)をテーマに選びました。今後は、“フランス文法”の中での他の文法事項(構文、ヴォイス(受身、使役)、モダリティーなど)や、“フランス語の話し言葉”、“フランス語の語彙論”、“フランコフォニー”などのテーマも扱ってゆきたいと思っています。また、文献講読の他に、1学期に1、2回各参加者にレジュメ発表、研究発表をしてもらいます。
前期は、文献の講読を通して、言語学の分野の一つである“語用論”の基礎知識や、それを基にした言語表現の分析法を学んでもらいます。2009年度はフランス語の“人称”についての分析を中心に講読を進めました。同時に、各自の卒業論文の計画やレジュメなどを発表してもらう機会を設けます。後期は主に卒業論文の指導に重点を置きます。2009年度のゼミ生の卒論テーマには“フランス語におけるオノマトペ研究”、“日本におけるフランス語教育”、“小説における過去時制について”、“フランス語のことわざ研究”、“多言語国家ベルギーの言語事情”などがあります。
“副詞maintenantの本質へのアプローチ”、『フランス語学の最前線 第一巻』、坂原茂(編)、ひつじ書房、近刊(2010年春出版予定)
“Adverbe déjà : ses diverses usages et son processus interprétation”, Cahiers Chronos 18 Information temporelle, procédures et ordre discursif, Luscher J.-M., Moeschler J., Puskas G. & Saussure L. de (eds.), Rodopi, Amsterdam/New York, 2007, pp.177-194.
“L’interprétation pragmatique de bientôt”, Cahiers de linguistique française 25, Université de Genève, 2003, 187-204.
“Le passé simple et la subjectivité”, Cahiers de linguistique française 22, 189-218, Université de Genève, pp.189-218.
『言語処理学事典』(「関連性理論」の項担当、言語処理学会(編)、共立出版、2009年12月刊行予定