子どもの頃に見たアニメやドラマなどを、もう一度見たいと、ふと懐かしい気持ちに駆られることはないだろうか。そんな気持ちを満たしてくれる絶好の場所があった。関内駅から徒歩10分の横浜情報文化センター内にある「放送ライブラリー」である。小学生の集団の賑わっている様子や、学生の熱心な姿、親子がそれぞれの世代のアニメを楽しんでいる様子が見受けられた。広々と落ち着いた雰囲気に包まれた館内では、日本でテレビが誕生した1953年以降に放送されたドキュメンタリー、報道、ドラマ、バラエティ、アニメなどのテレビ番組、1946年以降の貴重なラジオ番組など全て無料で視聴することができる。コマーシャルや、短時間のミニ番組を視聴できるのも、ここならでは。さらに、ラジオの時代、街頭テレビの時代、テレビが急速に普及した時代など、放送の変遷と暮らしとの関わりがペーパー・クラフトにより表現されているコーナーや、重大ニュースのハイライトシーン、コマーシャルなどの名場面を映像で一挙に振り返るもの、放送の歩みがまとめられた特大の年表などがある。そのほかにも、二ュースや天気予報などのアシスタント役を体験できたり、スイッチングを主とした野球中継の放送技術を体験できるといった様々な設備がある。実際に映像を通して体感でき、子供から幅広い年齢層のひとが楽しめるようになっている空間もここの魅力のひとつである。この放送ライブラリーを運営しているのは昭和43年に設立された、財団法人放送番組センターである。多くの放送局が増え、激しい視聴率競争により俗悪番組が目立ってきたという背景もあり、「自分で良い番組を作り、それを増やしていくことも必要ではないか」と考えたNHKと民放が、お金を出し合って設立した。当初は、教育・教養系のテレビ番組を民放に貸し出すという仕事をしていた。ところが、昭和50年の終わり頃、それぞれの放送局で保存している番組が非常に少ない、ということに気付いた。莫大な費用がかかることや、著作権法の定めで保存が難しかったからである。これではいけないと、放送界全体を視野において、歴史の記録として残すべき貴重な番組を、恒久的に保存するという仕事も始めたという。さらに、一般にも公開しようと、この放送ライブラリーが作られたわけである。「現在保存され公開している番組は9000本ほどですが、これから順次増やしていき、これが20万、30万本となったとき、社会の記録として非常に有意義なものになると思っています」と、語ってくださった放送ライブラリーの山岸さん。自分の世代で終わる仕事ではなく、100年後、200年後につながる仕事なのだ、という気概がひしひしと伝わってきた。懐かしい時を思い出すなり、放送の歴史を研究するなり、目的に限らず、ふらりと足を向けてみてはどうだろう。多くの番組が溢れる現代、本当に良い番組を選ぶ目を養うヒントがみつかるかもしれない。学生編集委員(白金通信2002年4月号)
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