国立近代美術館フィルムセンターは国立近代美術館のフィルム・ライブラリー部門として発足し、現在国内外の映画フィルム約19000本を所蔵している。フィルムセンターは国際フィルム・アーカイブ連盟(FIAF)正会員で、文化遺産として、また歴史資料としての映画フィルムとその関係資料を破壊・散逸から救済し保存するという理念の下で活動している。年間200本近い映画を買い取り、寄贈も含めて収集し、相模原の分館で半永久的に保存している。日本で唯一の国立映画保存機関であるため、担うべき仕事は多い。映画を網羅的に集め、テーマ企画を立て、京橋の本館で上映している。今となっては一般に見る機会の失われた映画が低料金で上映され、貴重な懐しい映画に、その当時に青年期を過ごした人々が多数訪れる。本館にはレストラン、映画を上映している大小ホール、図書室や展示室があり、誰もが訪れることができる。上映中の企画に関連した展示会が開かれていることが多く、映画を見に来た人には2度楽しめる。さらに図書室では映画に関するあらゆる出版物が自由に閲覧することができる。誰もがビデオなどにより映画やそれに関する情報を手に入れられ、自ら作り出すことができる一方、それは安易に消費されて新しいもの、誰もが得られるものが溢れ、価値を認められる。同時に失われていくものがその数十倍存在することを忘れがちである。映画は安易に消費されるのみで、文化歴史資料として長く保存され伝えられることは最近になってようやく見直されてきたばかりである。例えば第二次大戦の存在により戦前の貴重な映画フィルムの多くが失われてしまった。上映機会の失われた映画を過去に失われた映画フィルムををどう補いながら現在の流行廃りの激しさと関わっていくのか。一つの機関で担うにはあまりに大きい課題である。新しさに価値を置く世界の中で、失われつつあるものの重要性は見落とされがちである。映画という一分野でフィルムセンターは保存という重要性を確信している。映画ファンのみならず、誰にも触れてほしい映画がフィルムセンターでは上映されている。学生編集委員(白金通信1999年8月号)
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