今回はちょっと足を延ばして武蔵小杉駅まで来てみた。川崎市民ミュージアムを訪れるためだ。JR南武線、東急東横線の武蔵小杉から市民ミュージアム行きのバスに乗り約10分。メタリックな外観の建物が見えてくる。10年前に開館したこのミュージアムは、大衆に影響を与えてきたものを中心に扱っているとのこと。私たちがいつも何気なく目にしているものが、近未来的な建物の中で「特別扱い」を受けている、それが妙に面白く感じられる空間である。 私が訪れた時には、「サロメ」などの書籍の展示や雑誌の挿絵を中心に活躍した職業画家のオーブリー・ビアズリー展の他、ギャラリーでは「町は紫煙に包まれ…」と題し、ミュシャ、ロートレック、シエレなどによる世紀末の嗜好品ポスターが展示されていた。 ビアズリー展を横目に私が目指したのは、ミニホールで行なわれる「日本ニュース映画研究講座」だ。 今回で3回目を迎えるというこの講座。毎回ニュース映画制作に関わった方をゲストに迎え、実際にニュース映画を観ながら、第二次世界大戦期にニュース映画がどのように国民を扇動していったのかを考える、というものである。参加者は、当時を懐かしむ70代の老人から学生まで様々。座布団にあぐらをかきながらの参加である。参加者もゲストも一体となった和やかな雰囲気のなかで、ニュース映画を通じて戦争に加担したことを反省するゲストの姿が印象的だった。 今のところ先の見えない学生生活を送っている私も、いつの日か自らの過去を誰かに語る日が来るのだろうか。私にも何か語れるだろうか。このミュージアムでは、ビデオライブラリーとしてニュース映画以外にもドキュメンタリーやCMなど様々な映像を収集保存している。ビデオライブラリーは川崎市民でなくとも利用可能。Tel.044-754-4500まで。 学生編集委員(白金通信1998年5月号)
http://www.kawasaki-museum.jp/