白金校舎から品川駅へバス通りを歩いて行くと小奇麗な古書店が目に入る。「啓祐堂」である。この古書店は奥にミニ画廊を備え合わせた変わり者だ。午後3時。取材に伺った。店主の杉本さんは、お客さんとの話に花を咲かせていた。いつしか私も仲間入りしておしゃべり。会話の中からミニ画廊での企画案などが出てくる。程なく1時間が過ぎ、その方は帰路につく。しばらくすると、今度は若い男性が現れて何やら杉本さんと打ち合わせ。帰り際、私に「2月にここで展示をするんです」と案内をくれた。その間にもお客さんがちらほら。次に現れた男性は、取材のためにNIKONのカメラをかかえていた私に「君は、カメラが好きなのかい?」と尋ねた。どうやらこのお店の常連さんのようである。古書店に常連さん…。なんだか不思議な気もする。しかし、それが啓祐堂である。とにかく人とのつながりを大切にするお店だ。ミニ画廊では毎月のように企画展が催されている。なかなか作品を発表する機会がない若者から年配の方まで作者は様々である。この企画展はお客さんを中心に行われるそうだ。小冊子「黄金の馬車」も発刊している。それぞれのフィールドから色濃い作品が寄せられる。これも編集から何からお客さんに支えられているという。啓祐堂を拠点に1つのネットワークが生まれているのだ。アートと文学の出会い。杉本さんも想像していなかったほど、このスペースは多方面に広がりを見せた。「買う、買わない関係なく遊びに来てください。」と杉本さんはおっしゃる。気持ちのいい午後、大学からの帰り道、ちょっと寄り道してみてはどうだろうか。こんなに洒落た空間が明学のすぐ側にあるのだから。そこには小さな楽しさのかけらが詰まっているかもしれない。夕方6時、取材を終えてお店を出ると、外はもう昼間の明るさを失っていた。しかし、私の心の中にはなんだか温かい光が残っていた。4年生の秋に立ち寄った私は、もっと早く入ってみればよかった。もう少し明学の学生でいたいと願った。学生編集委員(白金通信2002年1月号)
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