より道だけではなくてたまには遠回りもしてみてはいかがでしょう。今回私は上野にある「国際子ども図書館」を訪れた。ここは、今年の5月に国立国会図書館の支部図書館として全面開館した、まだ新しい図書館だ。といっても建物は明治39年に帝国図書館として建てられたもの。昭和期に増築され、国立図書館を経て平成10年までは国立国会図書館支部上野図書館として利用されていた。明治の建設当時、「東洋一の図書館を」というつもりで構想が練られただけあり、使われている素材は最高品質のものばかり。それは現在でも朽ち果てずに残っている寄木細工の床、衰えず輝いている金のシャンデリア、大掛りな改修工事に耐えた建物などからうかがえる。そのような歴史的な建築に建築家の安藤忠雄さんが構想を練った現代的なデザインの部分が組み合わされゆったりと落ちついた空間が誕生した。子ども図書館という名前はついているものの、利用者は圧倒的に大人が多い。本格的に児童文学を学ぶ人にだけではなく、最近の絵本ブームの影響か、デートスポットとしても幅広い層に利用されているようだ。建物は保存に配慮しつつ、改修によってさまざまな工夫もされている。例えば1階の「子どものへや」の照明は影ができないものであったり、椅子は見た目は小さいのに大人が座っても心地よく使えるものであったり。本と子どもたちの距離を近づけたい、けれど子どもだけの部屋にはしない、という思いがこめられている。2階は2つの資料室があり、一般の人も気軽に利用できるようになっている。アジアの部屋では日本であまり目にすることができないアラビア語などの絵本も手にとってみることができる。文字が理解できなくとも色使いや絵を眺める、それだけで楽しめるのが絵本のいいところだろう。ミュージアムでは年数回、職員の企画による展示会が開かれている。毎回違うメンバーで準備されているため、展示の仕方や素材にも個性がでる。私が訪れた時はアボリジニの文化を取り上げていた。絵本を中心としてはいるが、それだけにこだわらず現地の子どもが撮った写真、伝統楽器など、ありのままを見せることに重点を置いていた。「本物の威力」は強烈だ。館内にDON'T TOUCHの表示はひとつもないけれど、いたずらをする子どもはまずいないという。そのように、国会図書館というプレッシャーをよい方向に転換して魅力的な図書館づくりが行なわれている。図書館というとつい勉強に結びついてしまう人が多いと思う。そんな人にぜひ「遊び」に行ってもらいたい。学生編集委員(白金通信2002年12月号)
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