白金通信2000年12月号でも特集が組まれたが、地下鉄南北線の開通により、アクセスが便利になった白金台に一層の注目が集まっている。開通の前後には、テレビ・雑誌等で、大学近辺の様々な建物が紹介されているのを目にした人も少なくないと思われる。その白金台に、1999年4月オープンしたのが、松岡美術館である。外苑西通りをしばらく歩き、ソニーミュジックのビルを過ぎたところで左折してすぐの所にある。白金台駅からだと徒歩5分になる。正確を期すなら、オープンではなく、新橋からの移転である。創立者であり実業家でもあった松岡清次郎(1894―1989)が80歳を転機として、自らのコレクションを広く一般の愛好者に公開すべきとの信念に至り、1975年、自社ビルの8・9階に美術館を開設した。その後、松岡の蒐集熱の一層の高まりにより所蔵品が増えて手狭になったことや、収蔵美術品の地震対策などを理由に白金台にあった松岡の私邸を取り壊して、新たに独立の建物として再開させた。最大の特徴は、所蔵品の幅の広さにある。洋の東西や時代を問わず、様々な作品が展示されている。1階には主に彫刻類が展示されている。古代オリエントやギリシア・ローマの石像や現代彫刻、ガンダーラ石像などが展示されている。正直、美術に余り造詣が深くない私であるが、エジプトの彩色木棺や、ヒンドゥーの神像彫刻などを見ると、古代に思いを馳せながら、暫く見入ってしまった。一方、現代彫刻は箱根にある彫刻の森美術館のようなものを目指して晩年に蒐集されたもので、ヘンリー・ムア、エミリオ・グレコの作品が目を引く。1階ロビーのガラス窓からは日本庭園を望むことができ、ここがもとは松岡の私邸であったことを偲ばせる。これを見るだけでも、気分が落ち着くし、価値があるように思えた。2階の展示室に入ると、思っていたより広いことに気づき少々驚く。東洋陶磁の展示室に入る。中でも中国陶磁は、松岡が蒐集を始めるきっかけとなったものでもあり、館のメインコレクションとなっている。景徳鎮官窯のものが多い。細やかな筆使いに驚嘆し、人間の技量に感動しながら、それに引きかえ自分の大雑把な性格ときたら何とかならないものか、などと考えずにはいられなかった。フランス近代絵画は、印象派の作品を中心に松岡が最晩年に関心を示し蒐集していったものである。ルノワール・モネ・シャガール・ピカソ・モディリアーニなど巨匠の作品も所蔵されている。松岡の意欲の壮大さに感心するとともに、「きっとまだまだ集めたかったんだろうな」などと考えながら鑑賞させていただいた。客層は年配の方が多いが、フランス近代絵画の企画展をおこなうときには若い世代も多く訪れるという。大学から歩いて行ける場所にあるし、講義の合い間に訪れるとよいかな、と思った。外苑西通りでショッピングやお食事を楽しみながら寄ってみるのもよいのではなかろうか。学生編集委員(白金通信2001年1月号)
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