近年、東京・青山付近は若者の文化発信地として発展目覚ましい。そんな青山に建つのがこの岡本太郎記念館だ。岡本太郎といえば「芸術は爆発だ」の名言や70年の大阪万博以来、見る人々を圧倒し続ける『太陽の塔』などから少々エキセントリックなイメージを持つ方もいるだろう。しかしこの記念館を訪れるとそんな彼へのイメージは変わるはずだ。ここが彼の元アトリエという、作品が生まれるまでの「静」と作品が生まれるときの「動」が凝縮された場所だからかもしれない。彼の作品そして人生といったものに込められた強いパワーを感じることができる。彼は創作活動からインタビューまでのあらゆる仕事をこの場所でこなしたという。その一部を見て触って感じてほしいと思う。展示される作品は未完成のものが多い。完成されて私たち受け手に届けられる「絵」よりも、作者がストレートに伝わりやすいことがある、とインタビューに応じてくださった岡本敏子さんは言う。まだ展示されていない作品もあり、今後もモチーフにあわせて順次展示されるので、そのたびに新たな岡本太郎を発見できそうだ。死後もそのままというアトリエでは、使いかけの筆やパレットだけでなく、ぽたぽたと床に落ちた絵の具、彼が46歳から始めたスキーの道具や、とても上手だったというピアノといった愛用品から彼の創作への一端がうかがえる。庭には日本中に散らばる彼の彫刻作品の原型が無造作に展示されていて、直接座ったり遊んだりできる。隣接のカフェで庭を一望しながら手作りケーキを食べて過ごすのもいい。彼の作品からはいつもどことなくユーモラスで、親しげな印象を受ける。あの『太陽の塔』にしても強烈な存在感をもちながら、ドンドン移り変わっていく世の中をどこかひょうひょうと、そして実は何も考えていないかのように見つめている、そんな気がするのである。そのユーモラスぶりはサロンに何気なく置かれている彼のそっくり人形にもあてはまる。生前に生身の身体から型を作ったもので、体格はもちろん皺から指紋まで岡本太郎のまんま。今にも動き出しそうな姿で、見る者を驚かせる。今も生き続ける岡本太郎のパワーを求めて記念館を訪れる人々は、世代を超えて後を絶たない。彼の作品が愛され続けているのは高度成長期という繁栄の中で忘れてしまった感情、暗いニュースの続く現在だからこそ必要としている生命感がそこにあるからだ。時代の変化に色あせることなく、見る者に強く鮮明な思いを呼び起こさせる。「ちょっとより道」して、そこで受けた感動をストレートに、真の意味で「爆発」させてほしいと思う。TEL:03・3406・0801○岡本太郎の作品は実は皆さんの身近にあります。ぜひそれぞれの「爆発空間」を感じて下さい。川崎市岡本太郎美術館/青山こどもの城前『こどもの樹』/代々木体育館『走る』『競う』等/数寄屋橋『若い時計台』/横浜そごう『太陽』/浦安市運動公園『躍動の門』『五大陸』/近鉄バッファローズのロゴ 等学生編集委員(白金通信2002年2月号)
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