現在では函館や広島など、少数派となってしまった「路面電車」だが、都内ではまだ現役なのでご存知の方は多いだろう。しかし、この路面電車が横浜市内を闊歩していた時代があったことをご存知だろうか。横浜の路面電車の歴史は古く、明治37年から運行を開始した。関東大震災や空襲で壊滅的な被害が生じたにも関わらず運行を続けたが、モータリゼーションの大波には勝てず、昭和47年3月31日、横浜の路面電車は全廃された。その車両を今でも保存している場所が磯子区滝頭の「横浜市電保存館」である。ここはかつて市電の滝頭車庫があった場所で、その跡地に昭和48年にオープンした。現在は市営バス滝頭営業所の敷地内にある。7両の車両が公開保存されており、一部を除いては車内に入ることが出来る。各車とも内装は木製で、時代を感じさせる。歴史的資料としての価値も大きく、保存状態も極めて良い。職員の方によると、保存には相当費用と手間がかかる、とのこと。しかし、小さい子どもに自由に遊ばせたい、との理由から、全面公開されている。更に奥へと入っていくと、巨大な鉄道模型のパノラマが広がっていて、Oゲージの模型車両を走らせている。ここで走っているSLなどの一部車両は、横浜市民の故吉村栄氏から寄贈されたもので、市電などの車両は実際に運転することもでき、この規模には圧倒させられてしまう。隣には、市電の後継役を務める横浜市営地下鉄の紹介コーナーがあり、その一角には運転シミュレーターがある。実際に自分もチャレンジしたが、これがなかなか難しい。来場者は主に子どもで、親子連れもかなり多い。お父さんと子どもが夢中になって鉄道模型のパノラマに食い入る姿や、お孫さんと一緒に在りし日の市電を懐かしむ老夫婦の姿が多く見られた。ここを取材させて頂いた日は3月31日。そう、ちょうど30年前に横浜から市電が全廃された日であった。以降30年に渡って昔を語り続ける市電たちは、まさに歴史の生き証人だ。今年から横浜に来た新入生の皆さん、市電保存館とその周辺を散策して「昔の横浜」と「今の横浜」に直に触れてみてはいかがかな?学生編集委員(白金通信2002年5月号)
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