清正公大祭(せいしょうこうたいさい)

白金キャンパスの北隣りに、桜田通りに面して小さなお寺がある。都ホテルやラーメン屋さんの近くなので、気付いたことがある人も多いと思う。では、ゴールデンウィークでみんなが白金に来ない頃、そこで東京でも有数のお祭りがあるのを知っているだろうか。
普段はひっそりとしているそのお寺で、実は毎年、こどもの日を含んだ5月4日、5日に、3 - 4万人もの人が訪れ、警察が交通規制に出るほど大きなお祭りが行われている。
そのお寺は覚林寺といい、釈迦牟尼佛と、あの豊臣秀吉の家臣だった武将加藤清正を祀った日蓮宗のお寺である。江戸以来およそ370年の歴史を持つこのお寺は昔徳川幕府からお花畑として与えられた地であった。境内には北里柴三郎の片腕として活躍した事で有名な古賀博士も眠っている。
加藤清正公は尾張に生まれ、12歳の時に長浜城主であった豊臣秀吉に仕えた。賤ヶ岳七本槍の一人に数えられるほど勇猛で、日本三大名城の一つとして数えられる熊本城主としても名高い。
清正公大祭は、そういう武運長久であった清正公にあやかって、子供が強く立派に育つようにと願うもので、人生の苦悩に打ち勝ち、幸運に恵まれるようにと「勝負」と「菖蒲」を掛けて菖蒲の葉が入った勝守りや、出世鯉などが有名だ。
大祭当日になると、お寺から太鼓の音が鳴り響き、こいのぼりが雄大にゆらめく。境内をはじめ約200もの出店が軒を連ね、通りを埋め尽くし、本学の側までもずらっと広がるほどである。菖蒲湯にするための菖蒲の葉を山盛りにして売る店からはよい香りが漂う。
普段人通りもまばらな天神坂の両端には出店がぎっしり並び、特に晴れた日のお昼頃はたくさんの人でごった返す。子どもたちもどこからともなく大勢集まってきて歓声をあげている。
お面やわたあめといったよく見かける店のほか、山吹鉄砲といった歴史の古いもの、ガラス細工、色々なキャラクターの立体的な飴を売る出店など、挙げきれないほど多くの種類の出店が並ぶ。数件あるベビーカステラ屋のある一軒は、いつでも長い行列ができている人気の出店である。
出店には流行が反映されるもので、今までたまごっち、ピカチュー、去年はだんご三兄弟が店頭にたくさん並べられていた。今年はどうなるのだろうか。
清正公大祭は、お御輿が出たりする一般の夏祭や花火大会といったものでは味わえない、歴史深いお祭りならではの、地域の人との結び付きや、ただの出店の店主を越えた職人魂がかいま見られる。見るだけでも楽しく、明治、大正の風情を残したお祭りの歴史の長さを感じることができる。
商店街もにぎわいを見せ、地域の一大イベントである。この地域で育った人にとって、清正公大祭は地元に帰りたくなるような、思い出深いものなのである。今では、何十年前とは違い、新しいマンションが立ち並ぶ白金であるが、お祭りを楽しむ人々の様子は変わらないものがありそうだ。
せっかく学校の隣でお祭りがあるのだから、この連休中にも白金に足を運んでみてはどうだろうか。
学生編集委員(白金通信2000年5月号)

交通:覚林寺―地下鉄「高輪台駅」 徒歩15分