キャンパスから目黒方面へ徒歩15分、目黒通り沿いに「東京都庭園美術館」の大きな文字が見えてくる。通りから中の様子は窺えないが、入場料100円(当時)※を払えば誰でも庭園を見学することが出来るというので思い切って入ってみることにした。中へ入るとつきあたりにある美術館の真下を約200メートルの道のりで鬱蒼とした木々が覆っていて、木陰特有のさわやかな風が出迎えてくれる。きびしい残暑の中にも確かな秋の訪れを感じる一瞬だ。現在美術館として使われている建物は昭和8年に完成された旧朝香宮邸で、白いアール・デコ建築が見ものだ。残念ながら邸内見学には別料金が必要となるが、青々とした芝が美しい西洋庭園から中の様子を想像してみるのも楽しい。休日であったせいかのんびりと花や緑を満喫する人々の光景が見られ、みな思い思いに自然とのふれあいを楽しんでいた。そこからさらに首都高速目黒インターの方へと進むと、小さな池と茶室から成る静かなたたずまいの日本庭園に辿り着く。池では美しい鯉とカルガモの親子が優雅に泳ぎまわっていた。楓で囲まれたこの日本庭園は、これから秋の紅葉のシーズンにかけてさぞかし美しいことだろう。今回見学したのは庭園のみであったが、たっぷり時間のある時に再び訪れて、幻の建築として名高くそれ自体が美術品とさえ言われる美術館と美術作品との融合をぜひ味わってみたいものである。学生編集委員(白金通信1997年10月号)
※備考:庭園料は現在、変更されています。詳しくは下記URLにてご確認ください。http://www.teien-art-museum.ne.jp/index.html