五反田駅から白金キャンパス方面に出ると、すぐに東京デザインセンターがある。1992年3月、日本初の本格的トータル・インテリア・ショールームビルとして建てられたものである。驚いたことに、このビルには看板がない。壁と屋上にいくつかの旗が立てられているだけだ。会社のポリシーである「美しさの追求」を優先して、ビルの外観を損ねるような看板は出していないそうだ。利便性には少し欠けるかも知れないが、ビル自体がもうすでに1つの創作物であると考えれば当然のことだろう。正面中央の大階段を上がった先には、高さが約4メートルもある巨大な馬のオブジェがあり、訪れる者の目を引いている。これはイタリアの彫刻家ミモ・パラディーノの作品である。馬の首の後ろに人間の顔が彫られているが、そこには「生きとし生けるもののすべての中には、人間の精霊がこもっている」という意味があるのだという。馬のオブジェの横から階段の小道が延びており、そこを上がってみると緑に囲まれた公園に出る。季節の花や植物が植えられているスペースは、ビルの表側とは一味違った雰囲気の空間を作り出している。館内は地下2階から地上八階までの造りとなっており、輸入家具やインテリア雑貨、カーテンや壁紙などを扱ったショップ、インテリア関係のショールームが入っている。地下1階と2階は貸しホールとなっていて、様々なイベントや展覧会、シンポジウム、結婚披露宴など幅広く利用されている。1階にある受付案内はこのビルの情報ステーションで、各ショールーム情報、イベント案内を提供している。またここでは、インテリア・コーディネートの相談を受け付けており、部屋の設計から家具の選び方まで、コーディネーターから様々なアドバイスをしてもらうことができる。ほとんどのインテリアショップとショールームがヨーロッパの家具メーカーの製品を扱っている。なぜヨーロッパなのか、社長の船曳鴻紅さんに聞いてみたところ、「アメリカのデザインセンターに比べてここは面積が小さいため、扱う製品の的を絞らなくてはいけない。そこで製品のクオリティを最も重視したら、結果的にヨーロッパの製品が多くなった。値段やメーカー名ではなく、機能性が高い・環境を考えたもの・見て美しい・耐久性に優れている、といったクオリティのある商品を揃えています」との答えが返ってきた。1階には建築やインテリアの専門書店、2階と3階にはカフェとイタリアンレストランがあるので、学校帰りにちょっと立ち寄ってみるのもいいだろう。さすがはデザインセンターである。使われているテーブルや椅子、食器やライトなどは非常にハイセンスでかつ使いやすいものばかりであり、細かいところにまで心配りがされている。インテリアにとことんこだわったこのビルは、私たちに生活空間というものについて改めて考えるきっかけを与えてくれているという気がする。学生編集委員(白金通信2000年4月号)
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