カレーは今や国民食の一つであるといえる。そんなカレーを味わうだけでなく見て、感じて、体験できる「横濱カレーミュージアム」が今年1月、横浜・伊勢佐木町にオープンした。もともとカレーはインドからイギリスへ、そして日本へ伝わり、横浜の開港と同じ時期に上陸したという。この歴史的にカレーと関係の深い横浜にこのミュージアムは誕生した。カレーをより一層広く楽しんでもらいたいという思いから「美味しく遊ぶカレーのテーマパーク」をキャッチフレーズにしている。ミュージアムへ向かうエレベーターが開いた瞬間から別世界で、大正時代の洋館の一室を思わせる空間になっている。再び扉が開くと、大正時代に港町として最も栄えていた横浜港が目の前に広がる。インドの民族衣装サリーを着た女性や、シルクハットをかぶった紳士が歓迎してくれ、異国情緒たっぷりの雰囲気である。当時の電灯、郵便ポスト、自転車が置かれ、懐かしいカレーの広告が展示されていたり、港湾管理局や郵便局などの建物が並び、昔ながらの町並みが見事に再現されている。ふと映画館で足を止めると、昭和30年代のモノクロのものから近代までのカレーのテレビコマーシャル11種類が上映されていて、何十年も前から国民食であったと感じさせられた。カレーという語源の諸説や、夏目漱石や正岡子規の小説に登場したカレーの紹介、日本に伝来した頃の横浜の様子もパネル形式で展示されている。港広場には豪華客船「QUEEN PIA号」が停泊し、港祭が始まると夜空に花火が打ち上げられ、イルミネーションがきらめき、港町はロマンチックな雰囲気と活気に満ちていく。 また、カレー研究の第一人者で名誉館長の小野員裕氏が全国1000店ものカレー専門店を食べ歩き、選び抜かれた究極の7店舗のカレー専門店がある。タイ風、インド風、和風、欧風とそれぞれのオリジナリティ溢れるカレーが味わえる。究極のカレーを大勢の人に堪能してもらいたいというミュージアムの人たちの想いは非常に強い。出来るだけ多くのカレーを味わえるように、各店にはハーフカレーが用意されており、1日に7店舗食べ歩くことも可能である。また、カレーを食べてから別の場所に遊びに行き、再びカレーを食べに戻って来ることもできるように、入館料が無料となっている。カレーの達人「スパイスマスター」を目指して、随所に隠されたヒントを捜索しながら解く「クイズ・スパイスロード」は、街中を見て、触って、聞いて、五感を働かせて楽しむことができる。現代からタイムスリップし、大正ロマン溢れ、カレー文化に染まった港町で1日過ごしてみると、まさに当時のカレー通のような気がしてくるに違いない。今やどの家庭でも簡単に食べることができるが、カレーをより深く知り、感じて極めてみるのもいいかもしれない。学生編集委員(白金通信2001年6月号)
http://www.currymuseum.com/