あとは『経済学という教養』の姉妹編というかたちで「経済思想」っぽい本を書こうと思って、「市場」の前提としての「所有」についていろいろ考えている。で、民法の勉強も必要だなと思って、とりあえず素人らしく、受験生(司法試験よりも公認会計士とか非専門科目として法律の勉強をしなきゃいけない受験生)に人気絶大の長瀬範彦『ファーストステップ 民法』(東洋経済新報社)[bk1, amazon]を読んでいるとまあなんとやっぱり学界法曹界の外側にいる人は違うと言うかいろいろ思い切ったことを書いておられることよ。たとえば;
法律の条文が不合理なまま放置されたり、その解釈が一般の人にとって分かりにくくて複雑であったり、また、その結果としてさまざまな学説が次から次へと提唱されることは、法律家(特に法律学者)にとっては自分たちの飯の種なのです。ですから、彼らが、一致団結して、分かりやすくて明解な条文や理論を作る方向にその能力やエネルギーを注ぐことはありません。彼らは協調することがありません(学者仲間で共同研究をすることや共著書を作ることはありますが)。互いの違いに意識を向けて争いあい、各自がより良いと信じる新しい理論を発表するために頑張っているのです。
このような状況であっても世の中は動いていくのです。実際に起こる紛争については、条文がどのようになっていようが、裁判官がなんとか解釈して事件を無理やりに解決していきます(裁判官が条文の解釈をするときに、学者の議論を参考にします)。