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〈性現象論〉ブックガイド   (2004年11月29日更新)


 「ジェンダー論」や「女性学」全般への入門書

  『AERAムック ジェンダーがわかる。』朝日新聞社
   *私も「本質主義と構築主義」について簡単にまとめています。
  
江原由美子ほか『ジェンダーの社会学』新曜社
  
井上輝子『女性学への招待』有斐閣選書
  
落合恵美子『21世紀家族へ(新版)』有斐閣選書

 ★もう少し専門性に踏み込んだアンソロジーとして

  竹村和子編『ポスト・フェミニズム』
  
竹村和子『フェミニズム』岩波書店

  『岩波講座現代社会学11 ジェンダーの社会学』岩波書店
  
『岩波講座現代社会学10 セクシュアリティの社会学』岩波書店
   *どちらも、講座ものの割には内容に体系性がないし、論文の質にもバラツキがある。でもとりあえず色々なテーマについてかじってみるにはよい。

 ★フェミニズムの歴史と現在

  加藤秀一・坂本佳鶴惠・瀬地山角編『フェミニズム・コレクション(全3巻)』勁草書房
  
井上輝子・上野千鶴子・江原由美子編『日本のフェミニズム(全7巻・補巻1)』岩波書店

  
奥田暁子・秋山洋子・支倉寿子編著『概説フェミニズム思想史』ミネルヴァ書房
  
江原由美子・金井淑子編『ワードマップ・フェミニズム』新曜社

 ★〈性〉の概念について

  加藤秀一「性現象論に何ができるか」(『性現象論――差異とセクシュアリティの社会学』勁草書房、序章)
  
J・バトラー『ジェンダー・トラブル』青土社
  
長谷川真理子『オスとメス=性の不思議』講談社現代新書
  
H・ガーフィンケル「アグネス、彼女はいかにして女になり続けたか」(『エスノメソドロジー:社会学的思考の解体』せりか書房)


 ★〈性〉の歴史(日本)

  
女性誌総合研究会『日本女性史』全5巻、東京大学出版会
  
女性誌総合研究会『日本女性生活史』全5巻、東京大学出版会
  
脇田春子、S・B・ハンレー『ジェンダーの日本史』上下、東京大学出版会

 ★近現代日本社会におけるジェンダー役割規範と性差別

  井上輝子・江原由美子編『女性のデータブック 第3版』 〔データ満載、レポート作成に便利〕
  
江原由美子「「差別の論理」とその批判」「からかいの政治学」(『女性解放という思想』勁草書房)
  
上野千鶴子編『キャンパス性差別事情』三省堂
  
伊田広行『シングル単位の社会論――ジェンダー・フリーな社会へ』世界思想社
  
加藤秀一「女という迷路――性・身体・母性のスクランブル」(『性現象論』第5章)

 ★労働問題

  
竹中恵美子他『新・女子労働論』有斐閣選書
   
熊沢誠『女性労働と企業社会』岩波新書
   久場嬉子・竹信三恵子『「家事の値段」とは何か』岩波ブックレット
   川崎賢子・中村陽一編『アンペイド・ワークとは何か』藤原書店

 ★ジェンダーと世界社会

  M・ミースほか『世界システムと女性』藤原書店
  
アニータ・アナンド編『女性が語る第三世界の素顔――環境・開発レポート』明石書店
  
S・ジョージ、M・ミース、V・シヴァ、M・カール『食糧と女性――フェミニズムの視点から』アジア太平洋資料センター
  
田中由美子・大沢真理・伊藤るり編著『開発とジェンダー――エンパワーメントの国際協力』国際協力出版会

 ★宗教とジェンダー、性差別

  
奥田暁子・岡野治子編著『宗教のなかの女性史』青弓社
  
ズィーバー・ミール=ホセイニー『イスラームとジェンダー――現代イランの宗教戦争』明石書店
  川橋範子・黒木雅子『混在するめぐみ―ポストコロニアル時代の宗教とフェミニズム』人文書院

 ★戦争とジェンダー

  
大沼保昭・下村満子・和田春樹『「慰安婦」問題とアジア女性基金』東信堂
  
シンシア・エンロー『戦争の翌朝』
  
シンシア・エンロー『フェミニズムで探る軍事化と国際政治』御茶の水書房
   *エンローを交えた連続セミナーの記録。コメントは上野千鶴子、御巫由美子、佐藤文香、竹中千春、武者小路公秀、古沢希代子。

 ★セクシュアリティ全般について

  M・フーコー『性の歴史 1 知への意志』新潮社
  
S・L・ギルマン『性の表象』青土社
  
上野千鶴子『発情装置』筑摩書房
  
G・モッセ『ナショナリズムとセクシュアリティ』柏書房
  
赤川学『性への自由、性からの自由』青弓社
  
赤川学『セクシュアリティの歴史社会学』勁草書房
  
川村邦光『セクシュアリティの近代』講談社選書メチエ
  
アムネスティ・インターナショナル編『セクシュアリティの多様性を踏みにじる暴力と虐待』大学図書

 ★同性愛と異性愛について

  キース・ヴィンセント/風間孝/川口和也『ゲイ・スタディーズ』青土社
  
伏見憲明『プライベート・ゲイ・ライフ』学陽文庫
  
掛札悠子『「レズビアン」である、ということ』河出書房新社

  
D・ハルプリン『同性愛の百年間』法政大学出版局
  
J・ボズウェル『キリスト教と同性愛』国文社
  
A・ブレイ『同性愛の社会史』彩流社
  
K・ドーヴァー『古代ギリシアの同性愛』リブロポート
  
氏家幹人『武士道とエロス』講談社現代新書


 ★性同一性障害、トランスセクシュアル、トランスジェンダーについて

 野宮亜紀・針間克己・大島俊之・原科孝雄・虎井まさ衛・内島豊
  『性同一性障害って何?―一人一人の性のありようを大切にするために』緑風出版
   *まずはこの一冊、そしてつねに手元に置いておきたい一冊。
  虎井まさ衛『女から男になったワタシ』青弓社
  
虎井まさ衛/宇佐美恵子『ある性転換者の記録』青弓社
  
虎井まさ衛『男の戸籍をください』毎日新聞社
  
吉永みち子『性同一性障害』集英社新書
  
松尾寿子『トランスジェンダリズム 性別の彼岸 ――性を越境する人びと』世織書房
  
山内俊雄『性の境界――からだの性とこころの性』岩波書店
  
山内俊雄『性転換手術は許されるのか――性同一性障害と性のあり方』明石書店
  
佐倉智美『性同一性障害はオモシロイ』現代書館
  
D・ショリンスキー、J・M・アダムス『ワタシが最後にドレスを着たとき』大和書房
  
石原明・大島俊之編著『性同一性障害と法律』晃洋書房
  
セレナ・ナンダ『ヒジュラ――男でも女でもなく』青土社
  
蔦森樹『男でもなく女でもなく』勁草書房

 ★インターセックスについて
 
  
小田切明徳・橋本秀雄『インターセクシュアルの叫び――性のボーダーレス時代に生きる』かもがわ出版
  
橋本秀雄『男でも女でもない性――インターセックス(半陰陽)を生きる』青弓社
  
橋本秀雄『性のグラデーション――半陰陽児を語る』青弓社

 ★性の商品化、買売春について

  リン・リーン・リム編『セックス「産業」――東南アジアにおける売買春の背景』日本労働研究機構
  
T・D・トゥルン『売春――性労働の社会構造と国際経済』明石書店

  
藤本由香里『快楽電流――女の、欲望の、かたち』河出書房新社
  
江原由美子編『性の商品化』勁草書房
   
加藤秀一「〈性の商品化〉をめぐるノート」(『性現象論』第7章)
  
森崎和江『買春王国の女たち――娼婦と産婦による近代史』宝島社
  
F・デラコステほか『セックス・ワーク』現代書館
  
A・コルバン『娼婦』藤原書店
  
B&B・ブーロー『売春の社会史』筑摩書房
  
山本俊一『衛生学者が繙いた売春性病史』文光堂
  
いのうえせつこ『買春する男たち』新評論

 ★性暴力、セクシュアル・ハラスメントについて

  中下・福島・金子・鈴木『セクシュアル・ハラスメント【新版】』有斐閣選書
   *旧版の福島瑞穂「性は日本でどう裁かれてきたか」も参照。
  
杉田聡『レイプの政治学』明石書店
   *「レイプの原因は性欲ではない」という意見の行き過ぎを批判。これまでの性暴力研究の問題点がよくわかる。
  
角田由紀子『性の法律学』有斐閣選書
  
角田由紀子『続・性の法律学』有斐閣選書
  
宮淑子『セクシュアル・ハラスメント』朝日文庫
  
東京・強姦救援センター連続講座『レイプ・クライシス』学陽書房
  
T・ベイネケ『レイプ・男たちの発言』ちくま文庫
  
渡辺和子編『女性・暴力・人権』学陽書房
  
上野千鶴子『ナショナリズムとジェンダー』青土社
  
J・L・ハーマン『心的外傷と回復【増補版】』みすず書房
   *著者の進めた療法や運動には様々な問題が指摘されているが、この本そのものは人間理解の必読書。
  
加藤秀一「性暴力の「力」はどこからくるのか」(『武蔵野美術』第115号)

   *性暴力を他の暴力から際だたせる言説の暴力について分析。

 ★「男」について

  伊藤公雄『〈男らしさ〉のゆくえ』新曜社
   *日本の「男性学」をきりひらいた記念碑的著作。内容は著者の専門を活かしたイタリア研究など。
  浅井春夫・伊藤悟・村瀬幸浩編著『日本の男はどこから来て、どこへ行くのか―男性セクシュアリティ形成(共同研究)』
   *スポーツ、暴力など、様々な角度から見た男性研究。鋭い指摘が多いが平易。共同研究の熱気が伝わってくる。 
  
西川祐子・荻野美穂編『共同研究 男性論』人文書院
  
小谷野敦『もてない男』ちくま新書
  
勢古浩爾『こういう男になりたい』ちくま新書
   *どこまでも男でしかない自分を見つめるが、くだらぬ男らしさの強調は容赦なく罵倒する。男性論の最初の一冊に最適。

 ★家族、家庭について

  
諫山陽太郎『家・愛・姓――近代日本の家族思想』勁草書房
   *学問的には必ずしも精密に書かれていないせいか、あまり注目されていないように思うが、
   驚くほど鋭い議論が展開される名著。
    近代日本における結婚や家族については、まず本書を読んだ上で、その問題意識を参照しつつ、
   より詳細かつ慎重な文献に向かっていくことを勧める。

  
落合恵美子『21世紀家族へ(新版)』有斐閣選書
  
落合恵美子『近代家族の曲がり角』角川書店
   *「家族という名の下に人びとがしてきたこと」をつかむために最も手堅い導きの書。
    とくに前者は入門書だが、広い話題を一貫して論じる、見事なできばえ。ジェンダー論の入門書としても最良の一つ。

  
小山静子『良妻賢母という思想』勁草書房
  
小山静子『家庭の生成と女性の国民化』勁草書房
  
西川祐子『近代国家と家族モデル』吉川弘文館
  
牟田和恵『戦略としての家族――近代日本の国民国家形成と女性』新曜社
   *「家族」「家庭」と「社会」「国家」との関係、とくにその理念的な次元を理解するために格好の4冊。

  
坂本佳鶴惠『〈家族〉イメージの誕生』新曜社
   *「母もの」映画の分析を通して、日本における母性観念の軌跡を問う。
  
嘉本伊都子『国際結婚の誕生』新曜社
  
山田昌弘『近代家族のゆくえ』新曜社
  
山田昌弘『結婚の社会学』丸善ライブラリー
  
山田昌弘『パラサイト・シングルの時代』ちくま新書
  
伊田広行『シングル単位の恋愛・家族論――ジェンダー・フリーな関係へ』世界思想社
  
伊田広行『シングル化する日本』洋泉社新書y
  

恋愛・結婚・一夫一婦制について

 
森有礼「妻妾論」、山室信一・中野目徹校注『明六雑誌(上)』岩波文庫所収
  *自ら「契約結婚」を実行した改革者による画期的な一夫一婦制の唱道。

 
富田正文ほか編『福沢諭吉選集』全14巻、岩波書店

 
中村敏子編『福沢諭吉家族論集』岩波文庫
  *一夫一婦制論、男女関係論の代表的文書を収録。優生学的文書は収録されていないのが欠点。

 
金子幸子『近代日本女性論の系譜』不二出版
  *一夫一婦制論、廃娼論、母性保護論争、産児制限論についてバランスのとれた概観。

 
小谷野敦『〈男の恋〉の文学史』朝日選書
  *恐るべき博引旁証に裏づけられたシャープな分析。「恋愛」の日本史に関心をもつ誰もがふまえるべき本。

 
菅野聡美『消費される恋愛論:対象知識人と性』青弓社
  *明治・大正期の「恋愛論」ブームについてのコンパクトな分析。

 
加藤秀一『〈恋愛結婚〉は何をもたらしたか――性道徳と優生思想の百年間』ちくま新書
  *題名通りの本。ただし著者が焦点を合わせているのは、恋愛や結婚そのものではなく、それが
   内包する優生思想である。

生殖医療技術全般について

 
小西宏『不妊治療は日本人を幸せにするか』講談社現代新書
  *非常によくまとまっており、不妊治療を焦点とする生殖医療の大勢と問題点がよくわかる。

 
坂井律子・春日真人『つくられる命――AID・卵子提供・クローン技術』NHK出版

 
江原由美子編『生殖技術とジェンダー』勁草書房
  *多面的な論文集。所収拙稿は妊娠中絶の倫理学的検討。1996年時点での資料集としても有益。

 
柘植あづみ『文化としての生殖技術』松籟社
  *不妊治療に関わる医師へのインタビュー調査。まとまったものとしては類書がない。

 
金城清子『生殖革命と人権』中公新書
  *女性の自己決定権を重視する観点から、生殖医療を論じる法学者。オーストラリアの事例が詳しい。

 
金城清子『生命誕生をめぐるバイオエシックス』日本評論社
  *より網羅的に現状と問題点を指摘する。目配りよく穏当な整理。ラディカルな科学批判者には評判が悪いが。

 
A・キンブレル『ヒューマン・ボディ・ショップ』化学同人
  *臓器売買の現状に警鐘を鳴らす。中絶胎児の組織利用についても言及。

 
G・E・ペンス『医療倫理1、2』みすず書房
 *臓器移植、安楽死、妊娠中絶、障害新生児の治療停止などについての大部の事例集。議論は浅い。

 
唄孝一、石川稔編『家族と医療:その法学的考察』弘文堂
  *重厚な論文集。丸山による「ロングフル・バース/ライフ」についての裁判事例の整理を含む。

 
映画『ガタカ』 (監督・脚本:アンドリュー・ニコル、出演:イーサン・ホーク、ジュード・ロウ他)
  *遺伝的素質によってライフコースが振り分けられる近未来社会。静謐でスタイリッシュで切ない名作。

出生前胎児診断・着床前遺伝子診断

 
坂井律子『ルポルタージュ出生前診断――生命誕生の現場に何が起きているのか?』日本放送出版協会

 優生思想を問うネットワーク編『知っていますか? 出生前診断一問一答』解放出版社

 
C・ローゼンバーグ、E・トムソン『女性と出生前検査:安心という名の幻想』メディカルトリビューン
 *アメリカ国立保険研究所(NIH)で91年に行なわれた講演集。当事者となる女性の視点を徹底。

 
千代豪昭『遺伝カウンセリング:面接の理論と技術』医学書院
  *数多くの事例をふまえた「良心的」なマニュアル本。一刀両断的な「倫理学」書より考える種は多い。

 
大野明子編著『子どもを選ばないことを選ぶ――いのちの現場から出生前診断を問う』メディカ出版

医師が書いた本

 
佐藤孝道『出生前診断――いのちの品質管理への警鐘』有斐閣選書
  *生殖医療の暴走に批判的な産科医による技術的・倫理的諸問題の解説。

 
菅沼信彦『生殖医療:試験管ベビーから卵子提供・クローン技術まで』名古屋大学出版会
  *第一線で生殖医療を推進する医師による医学的解説。各国の対応についてもまとめる。

優生学の歴史

 
米本昌平『遺伝管理社会』弘文堂
  *「健康が義務である社会」に警鐘を鳴らした、日本での先駆的著作。悪を「ナチス」に押しつけない視点。

 
ダニエル・J・ケヴルズ『優生学の名のもとに』朝日新聞社
  *英米の優生学史に関する基本文献。女性の地位との関わりにも目配り。邦訳は丁寧だが、文献一覧がない。
   (追記。佐倉統氏が邦訳はひどいと書いていた。ぼく自身は日本語として十分こなれているという意味で
   「丁寧」と感じていたのだが、原文と照らし合わせたわけではないので、正確さについては保証の限りではない。)

 
マーク・アダムズ編著『比較「優生学」史』現代書館
  *ドイツ・フランス・ブラジル・ロシアにおける優生学の思想史・政策史。大部の共同研究。

 
スティーブン・トロンブレイ『優生思想の歴史』明石書店
  *英米独における優生学的断種の実態について広範に整理。

 
シュテファン・キュール『ナチ・コネクション』明石書店
  *ナチス・ドイツとアメリカ合州国(特にカリフォルニア州)との優生政策上の協力関係を指摘。

 
スティーヴン・J・グールド『人間の測りまちがい』河出書房新社
  *有名な古生物学者による「知能」概念とその政策応用の歴史。疑似科学の危険に警鐘。邦訳は読みにくい。

 
ジェームズ・トレント・ジュニア『「精神薄弱」の誕生と変貌:アメリカにおける精神遅滞の歴史』学苑社
  *フーコー的視点から19世紀末以降の「白痴教育」の進行をたどる。画期的な大冊。

 
Phillip Reilly, The Surgical Solution, Johns Hopkins, 1992.
  *法医学者による、今世紀のアメリカ合州国における優生学的断種の詳細な歴史。

 
Marouf Hasian Jr., The Rhetoric of Eugenics in Anglo-American Thought, The University of Georgia Press, 1996.
  *学問的言説だけでなく、大衆雑誌や女性解放運動の言説にも目配りした、優生思想の文化史。

 
Gunnar Broberg and NIls Roll-Hansen(eds.), Eugenics and the Welfare State: Sterilization Policy in Denmark, Sweden, Norway, and Finland, Michigan State University Press, 1996.
  
二文字理明・椎木章編著『福祉国家の優生思想:スウェーデン発強制不妊手術報道』明石書店
  *1997年に日本でも報道された問題に関する記事・資料の翻訳と解説。

 
鈴木善次『日本の優生学』三共出版
  *題名通り。1983年出版の先駆的な著作で、学者の言説に焦点を当てた小著。

 
藤野豊『日本ファシズムと優生思想』かもがわ出版
  *両大戦期の政策決定過程を詳細に分析。啓蒙知識人やキリスト教系の優生思想にも言及。

 
市野川容孝・ぬで島次郎・松原洋子・米本昌平『優生学と人間社会』講談社現代新書
  *英米独仏、北欧、日本の優生学・優生政策史。特に松原による日本編は貴重。最初に手に取るべき本。

 
加藤秀一「愛せよ、産めよ、より高き種族のために:一夫一婦制と生殖の政治学」、大庭健ほか編『シリーズ【性を問う】3 共同態』専修大学出版局所収
  *明治〜昭和前期の〈性―結婚―優生学〉についての最初のノート。

現代の遺伝学と優生学

 
青野由利『遺伝子問題とは何か』新曜社
  *日本の科学ジャーナリストがヒトゲノム計画の歴史的背景と内容、社会的問題について概観。

 
ダニエル・コーエン『希望の遺伝子:ヒトゲノム計画と遺伝子治療』工作舎
  *著者は遺伝子産業会社ジャンセット社長。ヒトゲノム計画を全面支持する議論。

 
ドロシー・ネルキン、M・スーザン・リンディー『DNA伝説:文化のイコンとしての遺伝子』紀伊國屋書店
 
ルース・ハッバート、イライジャ・ウォールド『遺伝子万能神話をぶっとばせ』東京書籍
 
ダニエル・ケブルス、リーロイ・フード編『ヒト遺伝子の聖杯:ゲノム計画の政治学と社会学』アグネ承風社
  *上記3冊は、「遺伝子」という観念が一人歩きしている現状を批判的に論じた、それぞれ良質の科学論。

 
ブライアン・アップルヤード『優生学の復活?:遺伝子中心主義の行方』毎日新聞社
  *現代の遺伝子研究が新たな優生学をもたらす危険についてイギリスのジャーナリストが警鐘を鳴らす。

生殖の歴史全般

 
荻野美穂『生殖の政治学:フェミニズムとバース・コントロール』山川出版社
  *マーガレット・サンガー、マリー・ストープスという二人の代表的産児制限活動家について。

 
荻野美穂『中絶論争とアメリカ社会』岩波書店
  *アメリカ社会を二分する重要イシューである妊娠中絶論争の背景にある根深い対立を読み解く。

 
川越修『性に病む社会』山川出版社
  *ワイマール期からナチスに至る、近代ドイツにおける「性病」の社会的管理。

 
藤目ゆき『性の歴史学』不二書房
  *近代日本におけるセクシュアリティ(売春)と生殖(優生保護法)の国家管理を一元的にとらえた労作。

ヒト・クローニングについて

 
マーサ・ナスバウム、キャス・サンスタイン編『クローン、是か非か』産業図書
  *ウィルムット等の「ドリー」論文から、倫理学者、詩人まで、さまざまな視点を網羅。

 
ローリー・アンドルーズ『ヒト・クローン無法地帯』紀伊國屋書店
  *クリントン大統領に「ヒト・クローン研究禁止」答申を出した法学者による現状報告。

 
御輿久美子他『人クローン技術は許されるか』緑風出版
  *日本の「人クローン規制法」の欠陥を指摘。各国比較あり。

 科学技術政策研究所編『生命と法:クローン研究はどこまで自由か』大蔵省印刷局
  *生命科学技術に関する政府資料。日本における規制の法的検討。各国の規制についての要旨もあり。

 
粥川準二『クローン人間』集英社新書
  *クローン人間の話題から入るが、内容の核はヒト・クローン胚を利用した再生医療研究の問題点。

生命倫理学とその批判

 
市野川容孝編『生命倫理とは何か』平凡社

 
森岡正博『生命学に何ができるか』勁草書房