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学科主任近況報告

座談会

座談会 ~消費情報環境法学科の科目の特徴~


 

【福田】 それでは今度は消費情報環境法学科の特徴的な科目はどんなものがあって、そしてそれぞれについての若干の内容等と科目に関する苦労を、2代目の学科主任である河村先生にお話していただきましょう。

【河村】 そうですね。先ほど京藤先生からお話がありましたように、法律系の科目がやっぱり基礎になるということもありますので、全体のカリキュラムの中で7割強ぐらいは従来あった伝統的な法律の科目となりました。その残りの部分について、やはり現代的な3つの柱に関連する法律関係の科目が積み上がっているという状況だと思います。
特に特徴というのは、学生数が、定員は150人ですけど、初年度は130人ぐらいで、少人数の授業ができるということかありまして、割と演習関連の科目が多いということです。情報処理の関係では、情報処理を1年から必修で、学生の能力に応じて積み重ねていっていただくということです。あとは消費者法が1つの柱ということもありましたので、消費者法演習という形で、これは消費者問題を直接扱っておられる国民生活センターの方に来ていただいて、現実にあった相談事例などを利用していただいて、消費者問題が抱えている特徴的なものを、学生と一緒に考えていただくというような必修の演習科目です。これも非常に評判がいいというように間いています。
それとコンピュータの関係になりますが、技術的な部分だけではなくて法律をコンピュータを使って勉強するために、法情報処理演習というものをおきました。これは法律をちょっとやって、かつ情報処理の技術も少しやったという学生にいいということで、2年からスタートするというものです。内容的には、法律学科は法学基礎演習という法学入門的な演習科目があるのですが、消費情報環境法学科はそれがないので、この法情報処理演習1で少し法学入門的なことも一緒にやろうというようなことでやり出したわけです。しかし、コンピュータを学生が満足いくほど使いながら、法律を勉強するという難しさを感じましたし、試行錯誤的にいろんなことをやってきたということかと思います。内容的には多少先生によって、やり方が違った部分もあるかと思いますが、私自身はその都度話題になっている事例や、新聞の記事などをベースに、そこから少し掘り下げて法情報がどこにあるのか、それに関する判例について、どこから調査して、それをどうまとめていったらいいかとか、また文章の書き方的な部分についても、皆さんパソコンを利用して、簡単にレポートをつくる作り方的なものを含めてやりました。
それと先ほどCD-ROMの教材の話がありましたが、『法律学小辞典』をCD-ROMの中に入れていただいてますので、その辞典から簡単に用語を検索し取り出すことができるということかありまして、本来は著作権の問題もあるわけですが、レポートを簡単に作成するというような技術的なことも少しやったりしました。もう1つはパワーポイントというプレゼンテーションのソフトがあるわけですが、それを使うということは頭の中の整理ができるということもありまして、プレゼンテーションの能力を高めるために、できるだけ自分のやってきたレポートを、パワーポイントの形で表示してもらうようなところまでやったかと思います。
3年生は、次のバージョンということで、少し外国法まで広げるという理想があったわけですが、現実的にはそこまでやるというのは難しい部分がありました。これも1つの特徴かと思いますが、レクシスというアメリカにある情報データベースがあり、それを利用するためのIDを学生の皆さん、私たち教員全員に割当て、全員が使えるという状況となっています。これは全国の大学でも非常に珍しいことであり、学生全員がレクシスに同時にアクセスできるというのは一つの特色だと思います。そういう形でアメリカの法情報検索もできるということを、実体験し出したところだと思います。

【福田】 今、河村先生がご説明された、この演習科目も大変特徴的なのですが、講義科目の中で特徴的なものを挙げると、佐藤一雄先生が必修科目として講義しておられる消費情報環境法という学科の名前と同じもの、それから京藤先生が担当しておられる経済刑法、これも経済刑法を必修としている大学はないのではないかと思います。それと先ほど菅野先生がおっしゃった環境科学ですね。これいわば法学部で講じてるというところもないのかなと思われます。それと情報処理に関して4段階の設けていることも大変特徴的ではないかと思います。
そこで菅野先生の担当しておられる環境科学についての若干の内容と、学生の反応と言うのでしょうか。多分多くの学生が受講してるのではないかと思うのですが、その辺の話を聞かせて頂けますか。

【菅野】 環境科学は選択必修ということで、必ずしも取らなくていいのですけれども、1年次に設けてあることもあって、かなりの、4分の3ぐらいの学生が一応最初は来ます。それでその中から少し抜けますけれども、かなりの部分が履修登録を出して実際出席してきます。だから相当の数の人が受講することになるんです。
ただ法学部に入ってきた学生が話を最初聞き始めると、いろいろと自然科学の言葉や記号が出てくるのに戸惑いを受ける人たちが一部いるわけです。それでそういうことで質問やコメントを受けたりすることはあります。だからそのときに自然科学の基本的事項を説明しなければいけないわけです。それで法学部の新人生ガイドブックに、文系の学生だからといって理系のことに無関心でいいわけではないことも少し書いておいたのですが。法学部のガイドブックを学生さんがどこまで読んでるか、最初の時点では分からないので、はっきりしませんが、多分戸惑いを感じる学生がかなりいるであろうということは想像できます。
環境科学は自然科学のことが中心になるわけですけれども、一般に環境科学を法学部の科目として扱っているところは、まずわたしは知らないんです。法学部のことをよく知ってるわけではないですし、全国の大学を調べたわけではないのですが、法律の専門家に、あるいは法律に関する仕事に、将来就く学生さんたちが、全く自然科学のことを知らないで卒業していくというのは、ある意味、ちょっと知識の偏りが生じてしまうということになるわけで、そうならないように、初めから、選択必修という形ではありますけれども、この科目が法学部のこの新しくできた学科の科目として入ったということは、わたし自身は非常にこれは画期的であり、いいことだと感じています。
それだけに責任は大きいというふうにも感ずるわけですけれども、できるだけ難しい言葉を使わないで、学生さんたちが理解できるように考えなければいけないという、それは理科系でそういう科目を教えるのに比べれば、かなりそれなりの苦労があるというふうには感じております。
最初に入ってきた学生にアンケートをとったことがあるんです。高等学校で一体どういう科目を自然科学系で習ってきたかということです。高等学校では物理学、化学、生物学、地学というのが、理科系の科目としてあるわけです。数学は別ですので除きます。そうすると一番多いのは化学と生物の組み合わせなんですね。それで地学、物理学は履修者が少ないというのが分かるんです。だから化学のことはある程度知ってるんではないかと思って、学生さんに化学の記号を使うと、それは知らないとか、習ったことがないとかいう反応が、全員ではありませんけれども返ってくることがあって、それから始めなければいけないという部分はあります。
だから、法律の学科に入ったのにという戸惑いを感じる学生がいると思うんですけれども、授業がだんだん進むに従って慣れてくる人たちもいますし、それからもともとそういうことがそれほど苦手ではなかった人たちもいますから、だんだんその授業はスムーズにいくようになる。そういうふうに感じてはいます。ちょっと長くなりましたけれども。

【福田】 今の大学ではどこでも、環境という名が付く科目は、大変履修者が多くなる傾向があって、菅野先生の科目も多いと思うのですが、一方で今おっしゃったような自然科学の知識が足りなかったりすると、興味を持たせるというところの導入部分で苦労されるのではないかと思うんですね。すなわち、例えば理系の学生だったら、やらなくちゃいけないことだからやるんだということで、いいかもしれませんけれど、法学部の学生用には、どんな導入の工夫をなさるのですか。

【菅野】 それはむしろ明学の学生さんたちは、環境に関することはある程度新聞とか雑誌で読んで、言葉だけは知っている例が多いんですね。大気汚染とか温暖化という。だけどなぜそれが起こるかとかいうことについては、ほとんど全く知らない。それから、その原因になっている物質が何であるかとかいうことも名称以外は知らない例が多いんですね。
ですから興味を失わせないためには、世間に流布している話も時々ちりばめながら、だけれども最初はやはり、何の自然科学の知識も持っていないと、話が本当のところで理解してもらえないので、トピックスと、それから基本というのをうまく組み合わせながら、興味を失わずに基本も分かってもらうというふうに授業を進めていく。そういう苦労と言いますか、工夫が必要だというふうに感じています。
だんだんそれが進めば、秋学期の環境科学2のほうでは、ある程度基礎知識を身に付けたというふうに判断して、ずっとトピックス的なところまで持っていっています。

【福田】 学生さんは、科学の知識が足りないと、菅野先生が、言われたのですけど、私なんかも、環境問題の訴訟を読んでも、事実認定のところが大部なのですが、難しいのでそこを飛ばして法律論のところだけを読むというので、忸怩たる思いがあります。
あとは京藤先生の経済刑法ですけれども、12回やるのは至難の業ではないかと思わなくもないのですが、どうでしょうか。

【京藤】 これは本来は必修から外したほうがいいのかもしれないというふうには思っていたのですが。この学科に法学科らしからぬ部分がもしあるとすると、民事法科目には必修がかなりあるのですけれども、憲法や刑法が必修になってないのですね。取らなくても卒業できる。これは、極めて大胆な発想でした。それでも、刑法については、やはり全く触れないで卒業してしまうのも問題があるということで、経済刑法を消費者法に位置付けて、必修科目とすることによって、講義の最初の1、2時間で、刑法の総論と各論の概略的な解説をしたうえで、本論に入っていくのですね。
経済刑法自体は、本来は、大学の3年生か4年生に向いた科目ではあると思いますし、2年生にとっては、ちょっと難しいかなと思います。たとえば、独禁法罰則や証取法上の内部者取引や相場操縦、損失補てんといったような罰則規定、それに商法罰則については全体に触れています。それから出資法関係の罰則などです。これらの規定の知識は、企業などに就職した場合には、非常に役立つ知識だとは思いますが、条文そのものが、難しくて長い。この前、内部者取引の条文で1条がどれくらいの字数か数えてみたことがありましたが、1条だけで5000字以上あるのですね。これを学生が読んで理解するというのは、非常に至難の業であるということは重々承知ではあるのです。私にも難しい。しかし、学生は、こういうニュースになるような問題には興味は持つようですね。
学生がこれらをこなすには、やっぱりもうちょっと法律の基本的な部分の知識を身に付けながら条文に慣れてゆかないと、ちょっときついかなというような気がします。4年ぐらいたって、だんだん中身が整理され、わたし自身の考え方も固まってきまして、現在では、ある部分、むしろ検察官のような実務家のための研修などでやったほうがいいような、非常に難しい内容も話しているように思います。それでも、大学教育というのは、もともと、最高学府における教育であるわけですから、求めれば、非常に高度な知識も得られるというような科目が、あってよろしいのではないかと考えています。
ただ、試験をするときには、これらについて正確な知識を要求するというのは、無理があるので、この辺りは加減しなくちゃいけないということで、次第に、採点は甘くなりつつあると思いますが。

【福田】 そうですか。あと情報処理というのは4段階ありますよね。そのうちの2つを取らなくてはいけないという選択必修なんですが、この4段階あるということの良さと、それから教育をするほうの難しさというのは何かございますか。

【鶴貝】 4段階というか、半期科目で4つの科目を用意しています。新入生がどれぐらいパソコンの経験があるかというと、およそ半分ぐらいの学生が、それほどパソコンを使いこなせないという状況ですから、パソコンの基本的な操作方法から、文書作成のための簡単なアプリケーションを使うという情報処理1を開講しています。情報処理2では既存のアプリケーションの代表、表計算を使ったデータの加工を習得します。情報処理3は、1、2、3というのが1年次配当で1年生から取れる科目なんですが、アプリケーションプログラムの基本的な構造を調べます。法学部ですので長文のデータを使いますから、文字データの加工に有利なようにPerlという言語を用いています。
3年次、白金に来て情報処理4というので、情報の発信をテーマにしてWEBを作りながら、いろいろなアプリケーション応用の問題に取り組みます。先ほど河村先生もおっしゃったように、消費のいいところは少人数で、この演習、情報処理というのは30人ぐらいのクラスですから、学生は仲良く講義に参加しています。われわれ教員とも仲良くなります。自然系と法律系の先生との違いは、われわれの研究室は横浜にありますので、ちょくちょく顔を出していろいろ質問に来ることができます。特にわたしは月曜日をフリーな日にしていて、授業を履修している学生にはいつでも質問に来て良いと言っています。1年次のときも研究室に質問にくるのですが、2年次になって情報処理でつまずくと、わたしのところまで来て(笑)、質問する学生も少なくはありません。

【福田】 そういう学生の中から、鶴貝先生の3年次の専門演習、コンピユータフリークでないと理解できないような高度な情報処理を学ぶ集まりみたいな中に入っていく学生さんが出るのですね。

【鶴貝】 私のゼミには情報処理に興味がある学生が来ます。でもちょっと残念だったのが情報処理4という3年次で履修できる科目なのですが、百何十人の学生でどれぐらいの学生が履修するのかと、ちょっと不安と期待があったんですけども、昨年は開講している3コマに、どれも十数人ぐらいで、合計でも30名ぐらいしか履修する学生がいなかったのです。多くの学生は、もっと情報処理の科目を増やせ、増やせと言ってるようですから。3年は必修が多いのでしょうね。必修の課目が多くて、情報処理関連の科目はもう2つ取ったので、それ以外を早く取る必要がないのかもしれません。

【福田】 多分興味があっても、卒業との関係では一応必要がないので、時間が許さないので取らないという、そういう流れじゃないのでしょうか。

【菅野】 わたしの中では、150人ぐらいの規模で、3、4というのは非常に中身としてはやっぱり高度ですから、文科系の学生で30名取るというのは大したものだというふうに思いますけど(笑)。

【福田】 コンピュータの販売についてですが、大学が仲介の労を取っているのですね。ですから売りっ放しというのではないのですよね。

【河村】 パソコンを導入するときには基本的には何社かから、最後は6社から見積もりを取り選定したわけですが、やはりパソコンという高価なものを持って、後のフォローが十分でないと、問題だということもありまして、保険をつけたわけです。それと保守サービスを、通常お店で買うと保守は、自分でメーカーに送って、修理してもらうということですが、大学へ来ていただいて見てもらうというサービスがあったほうがいいと思い、保守サービスをつけたわけです。したがってその分の値段が入っていますので、少し金額が高くなっているかもしれませんが、いつでも故障に対応できるというようにしたわけです。


【福田】 そうですね。大学の場で直してもらえるとか、アドバイスが受けられるとか、そういう利点があるのですね。

 

 

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