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学科主任近況報告

座談会

座談会 ~4年間の反省点~


 

【福田】 それで4年間学科を立ち上げてやってきて、反省点と言うのでしょうか、どんな点ですかね。わたしは今年4月から学科主任をやっていて、カリキュラム上のことを改めて見て思ったことは、大変やはりタイトなカリキュラムなんですね。どういうことかと言いますと、本来ならば大学院辺りでこの学科を立ち上げたら、ちょうどいいかもしれないものを、学部で立ち上げたもので、法律的な基礎知識を必要とした上に組み立てられる科目がありますもので、まず学ぶ量が多い。後で前提される科目は前にやらせておかなければいけないので、必修になるというようなことです。学生としては、期待される学生像を演じていたら、これは膨大な勉強時間になってしまうなというような気がするんですね。
ですから学生にかなり多くの時間を勉強するのを強いている。それから科目の選択も、かなりバラエティーのあるものを提供している割に、必修が多いものですから、現実問題として選択できるかというと、その幅が狭いのではないでしょうか。

【河村】 今、言われたように、やはり少し高度な専門的な、普通の学部では少し無理かと思われるような科目も入っていますので、それが3年生・4年生のところに重なっているということがあるものですから、負担はわりと大きいのではないかというふうに思っています。ただその分非常にいろんな高度なことも学ぶことができるという利点もあります。まだ今年4年目で、4年生科目が全部はまだスタートしていないのですが、就職活動のことも考えて後期に開講する科目などは、就職が決まって社会に出ていく上での準備ということも含めて、あまり法学部でやってないような分野の科目も入れております。1つ特徴的なのは「リスク管理と制度設計」というものがありますが、リスクをいろんな分野から考えるということ、それにどう対応していったらいいのかなどの視点で、先生のそれぞれの専門分野からリスクをどう見るかという内容のものです。立ち上げた4年前にそういう発想があったというのは、今、リスクマネージメントと世の中で言われておりますが、非常に先見性があったと思います。

【福田】 特にオムニバス形式ですものね。

【河村】 オムニバスで6名程度の先生が数時間ずつ、学生にとってみれば、いろんな分野の話が一挙に聞けるということで、非常に面白いかなと思っています。まだこれからですので、それがどういう効果をあげるのか分かりません。このように実験的な授業もやれるというところもあります。

【福田】 情報系科目を束ねる役をやって頂いている鶴貝先生、この情報系の科目というのは、ある程度教室のインフラが整備されてないといけませんよね。いくら自らノートパソコンを持ってくるにしても。それでそんなような点で、学部がというか、学科が反省すべき点というのは、今まで4年間やってきてあるでしょうかね。

【鶴貝】 そうですね。情報処理の科目でできることというのは、限られています。CD-ROMからデータを読むというのは1回やるかやらないかぐらいですから。それをもう1度やろうとすると、つまずく学生も出てくるわけです。ですから情報処理のスキルを上げるには、情報処理関連科目以外の科目で、コンピュータを使って何かやるというような作業をしない限り、学生諸君がもう一歩先に進むことは難しいと思われます。
学生に今日はなぜパソコン持ってきてないのと聞くと、今日は情報処理の科目ないですからと言います。毎日持ってくるというか、毎日持ってくるような環境を整えてあげて、ノートパソコンを使うというような学科にしたいと思います。

【福田】 いや、ここは4年間ずっと、いろいろな意見があったところのようです。と言いますのは、例えばインターネット接続が大学でなければできない時代、このときに大学でインターネット接続をして何かやるという意味が大きかったのですが、今ではADSLもかなり普及してきたし、各家庭でインターネット接続状況は整えられましたよね。そのときにいつも携帯しなくてはいけないのはなぜかというのは、大変難しい問題になりつつあるのではないかなと思うんです。
例えばわたしの場合、授業用のホームページというのを立ち上げて、そこにレジュメだとか練習問題だとか載せています。しかし家でもインターネット接続できたら、家で見て、それからプリントアウトして紙で持っているとかということで足りてしまう。携帯をしなくてはいけないというのは、どうしてかというのは大変答えづらいのです。パソコンを携帯しなければいけないという使い方はどういう使い方がありますかね。

【鶴貝】 例えば能動的な授業を展開するというのは1つの方法です。学生からの反応を集めて、それを集計して学生に提示するというような形式の進行をする授業が展開できれば、その場に学生がノートパソコンを用意して答え、発表できるというような形式の授業を展開することによって、授業で必ずパソコンが必要になります。
それからその反応を調べて、それをまたレポートにまとめるような展開の授業をすれば、これは1つの例ですけれども、良いでしょう。そういうことが可能な時代になってきたと思います。

【福田】 加賀山先生という方が法情報学でやっておられます。
法情報学に書いている即時の双方交通の授業のときには、これは完全に要るのですが、例えば今、言ったようなことをアンケートのような形で取る場合には、即時性は要らないですよね。ですから本当にその教室の中で学生の反応を即時に集計したものに基づいて、またこちらが何か発信するという場合は、分かるのですが。

【鶴貝】 例えばその授業の理解度を調べるような設問を投げ掛ける、というのはどうでしょうか。時間内で学生が、どれだけこの授業を吸収してるのかということを問うようなセッティングにすれば、学生は必死で聞くでしょうし、それにこたえるような展開もできるんではないかと思います。

【河村】 そこはなかなか難しいところがあると思うのですが、まずやっぱりコンピュータというのは、まだ学生は使うという機会を強制されないと、なかなか勉強しないということですね。ですからパソコンは持ってくる必要はないかもしれないけれども、自分が持っていると、そこに情報が蓄積されますから、すごく役立ちます。それから私が担当している法情報処理では、出席はそのパソコンでキーワードを入れてメールを送らせ、指定した通りに送ってこないと、そこにいても欠席として扱うということにしています。それからあとはいろんな課題を出しておりますが、それもその日の記事とか、そういったものから選んで出したりしています。そして授業中にちゃんと作業して、その回答をメールで送らせ、あるところまで達成した学生について、評価点を少しあげるということとしています。

【京藤】 あと、わたしが想定したのは、授業でコンセントさえあれば、ノート代わりに使ってくれる学生がいるといいなと思っていたのですが。燃料電池入りの携帯用のパソコンが提供されるようになれば可能かもしれませんが、1時間か2時間しか持たないようなパソコンではノート代わりに使えないので、この部分は、インフラの整備のほうがまだ追い付いていないということで仕方のないところです。将来的には、やはりパソコンでノートをしながら、たとえば、パワーポイントなどでつくられた教材に書き込みをするという受講スタイルというのがあってもいいのかなと考えていています。
あと、これは反省ですけれども、教材をCDに載せておくと、それを印刷したくなりますが、学校のプリンターで印刷する人がいるのですね。時々、情報センターに怒られています。刑法でも1枚ずつ印刷すると、パワーポイントですから、700~800枚になるのですね。これを全部一気に印刷しようとすると大変なことになるのです。学生が家にプリンターを持つようにすすめて、そのときには、一枚に4ページから6ページくらいを収めて印刷するようなやり方を教えてはいるのですが。少し迷惑を掛けたりしたことがあって、このあたりは、電子媒体で与えても授業に出て聞くというときには、パソコンを持ち込めないと、やっぱり自分で印刷して持っていないと、非常に不安になりますし、学生としてはやらざるを得ないという気持ちはよくわかります。このあたりのルールづくり、環境の整備というところがうまくいかないところで、多分情報センターのトラブルの順位は、最近、かなり上位にランクしているのではないかというふうに思います。

【河村】 そういうお話をお伺いして、2年前から一応レックスマークから、たまたま安くプリンターを提供してもらえるようになったので、学校で推薦の東芝のパソコンを買った人にプリンターも付けてお売りするという形になっています。多少は改善しているかもしれません。大学としての全体の情報のインフラが、まだ追い付いてないという部分が少しあると思います。私はまた、3年生の専門科目として国際取引法をやっているわけですが、法律学科と一緒ですので、なかなか消費情報環境法学科の学生の皆さんのパソコンを持ってくる人を前提にした授業をやるというわけにはどうしてもいかないことになるわけです。先ほど福田先生が言われたように、自分のホームページに教材を載せたり、自分でアクセスできる人はそこから読み取れる、またノートが取れるというふうに工夫しているわけですが、なかなかそこまで皆さんがフォローできるという状態ではないということにあると思います。

【福田】 それと、敢えてコンピュータ苦手の旧世代の人間として反論すると、情報技術を補助手段として使うのはいいのですが、講義という同じ場所に集まってやる授業というか作業のときに、パソコンが必要な共同作業をやってしまったら、講義の意味がないのではないかと。全部eラーニングにしたほうがいいのではないかと思うわけです。ですから、講義のときは丁々発止のやりとりが面白いのが一番いいのであって、その基礎知識と議論の行方展開を、情報技術で伝達するほうが理想ではないかというよう気がするのです。
例えば練習問題で解答がどうなったかまでも、ちゃんとコンピュータで出るような、そういうような内容と、それからそういう形式を備えたものをつくってコンピュータに載せておいたら、学生としては極めて有難いと思うのですけれど、つくるのは大変ですね。他方、講義の中では一方通行じゃなくて、言葉の双方交通という、そういうのをあれですか、ソクラティックメソッドとか言うのでしょうか、そのように、パソコンの使い方も場に応じて使い分けたほうがいいのではないかと、旧世代の人間は考えます。

【河村】 それはまず少人数で教えられなくてはいけないということが第1の条件ですし、それからもう1つは学生がある程度予習してくるということを期待できる、全員が予習してくるということを期待できるという2つの環境がそろわないと、なかなかできないかなと思うんですね。今の学生は、大学の学部レベルですと、やはりアンケートなんかとっても非常に歴然としていますけれども、事前に準備してこない学生が非常に多いんですね。そういう学生に予習してきて、eラーニングなどで基本的な知識をしっかり押さえた上で聞く人を前提にした講義をすると、あらかじめ勉強してこない学生にとっては、出たことが限りなくゼロに近い成果しか得られないと。やっぱりそこは全天候型の講義というのは、ある程度展開しなくちゃいけないので、基本的な知識を押さえながら、プラスアルファのところをちょっと付け加えるというような形にせざるを得ないかなというふうに、わたしは妥協して考えているので。福田先生がおっしゃることは理想なのですが、今度つくられるようなロースクールなどの場合には、多分みんな一生懸命やってくるから可能だと思うのですけれども、学部レベルではなかなかそういうふうに。学生自身が悔い改めないと、教師もそうですけれども、なかなかできないかなという気はしていますが。

【福田】 わたしは実際のところは予習ゼロでも分かる授業というのをやっていますので(笑)、先ほど話題に出たソクラティックメソッドとは全く違うんです。ただ情報技術と質疑応答と言うんですか、話し合いというのをどうやって使い分けるかということがこれから大切ではないかということなんです。だから帳面として機械を使ってもらうということは、まったく問題なく、すごく大事で、どんどん学生がやってもらって結構だと思いますが、ノート代わりに使ってる学生はまだ少ないですね。

【河村】 そうですね。

【福田】 ええ。アメリカなんかの映像とか写真で見ると、ノート代わりに使ってる学生のほうが多いみたいなんですね。だからもう少したつと、そういう時代が来るのではないかと予想します。

【河村】 その違いは、やっぱりアメリカの場合は、そのまま打ち込めば、そのまま画面に単語として出てきますので、使いやすいし、分かりやすいのですが、日本の場合には、いちいち変換しないといけないものですから時間がかかるわけです。変換がもう少し性能が良くなって、文章として完成度が高くなれば、割と話し言葉をそのままノートに打っていけるということになります。

【菅野】 そうですね。タイプライターの代用にならないんですね。

【河村】 今のところまだならない。

【福田】 それが結構大きいわけですね。

【河村】 ええ、それが大きいと思いますね。

【菅野】 そういうことでやってないという。

【福田】 それから慣れていないから遅いというのもあるし。

【河村】 そのデータを加工できるようになる材料を学生に渡して、それに学生が書き込んでいくと。ですからパワーポイントのようなものは非常に使いやすいと思いますし、何かそういった工夫が必要なのかなと思います。
そこに使おうとしている一番学生に今やってもらって良かったと思うのは、レポートで出して、そのレポートにワードでファイルを送ってもらって、それにいろんなコメントを付けるんですけれども、それを色を変えてみたり、アンダーラインを引っ張ったり、それをどう直したらいいかという、少しコメントを矢印で出したりという形で加工をして返してあげる。すると、そこまでレポートを今まで見てもらってないという、そういう場が非常に少なかったということで、割とそれをやると、喜ばれるんです。毎時間それをやるというわけにはなかなかいきませんので、情報処理演習が少人数でも、やっぱり2回か3回で終わってしまう。

【福田】 そうですね。

【京藤】 学生の能力というのは、なかなかたいしたもので、あなどりがたいと思います。この学科のカリキュラムというのは、学生が学ぶ内容も豊富なのですが、自由度が大きいこともあって、むしろ、教師のほうも成長するので、教師を教育するためのカリキュラムであるようにも感じております(笑)。法情報処理演習をやってみて、学生はなかなかやるなと思ったのは教師よりもはるかに柔軟性がある点です。教材としてパワーポイントを使うことになっているのですが、少しお金がかかりますから、1年生、2年生では、まだもっていない学生がいるのですね。それで、オープンオフィスという、フリーの統合ソフトですが、インストールに際して日本語関係の処理が少し難しいものを、演習の際にちょっと紹介したら、3分の1くらいの学生は、お金がなかったせいかもしれませんけれども、ちゃんとオープンオフィスをインストールしてプレゼンテーションしてきているのですね。最後の宿題として、パワーポイントで演習を通じて自分なりに学んだことをまとめて、メールで送るようにという教材を出したのですが、そうすると、学生は、単なる電脳紙芝居のレベルにとどまらず、そこにいろんな加工を加えて出してきました。ちょっと教えただけなんですけれども、学生のほうには、やっぱりそういうかっこいいツールの使い方を身に付けたいという気持ちが非常に強いようで、私などにはできないような非常に手の込んだものをつくって送ってきました。やっぱり学生のほうが、先生より頭が柔軟で呑み込みがはやいなということを、つくづく感じました。

【福田】 そうですか。あと最近Eメールの添付ファイルですか、それでレポート提出を認めてることが多いので、よく教授会に出てく問題事例では、学生は送付してたが、しかし教員側の端末には届かなかったというのがありますね。着信ログというのがあるのですか、それがあるから提出期限内に提出したものと見なして、それで採点変更とか、これは現代的な問題だななんて思います。
あとは、インターネットに授業中でも接続できますよね。例えば法情報処理でも情報処理でも。そうするとよくできる学生は、授業以外の目的でインターネットを使っているなんていうのはあるんですか。いわば昔でいう内職するということの内職の内容が変わってきているということは、ありますか。

【鶴貝】 わたしの情報処理の授業ではあり得ないと思います。わたしは課題をかなりたくさん出すので、話を聞いてないと、その課題ができないですから。話を聞かないと課題はできないし、課題も時間内では終わらないような課題がでるので、内職をやることは自由ですが、内職やってると課題が。

【福田】 できない?


【鶴貝】 できないから、結局課題を完成するためには自分の時間を使わなければならないですから。講義形式の授業でノートパソコンを持ってくるような学生がいたら、そういうことはある可能性は大きいですよね。このごろはノートパソコンだけじゃなくて携帯電話からもいろいろな情報収集できますので、ノートパソコンではなくて、おしゃべりしてない、し-んと聞いていると恩ったら、携帯電話で(笑)、コミュニケーションしたり情報収集したりというようなことはあるのではないかと思います。

 

 

 

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