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学科主任近況報告

座談会

座談会 ~今後の展望~


 

【福田】 それではちょっと今後の展望や課題というほうに行かせていただきたいと思います。
4年間は文科省の縛りもかかっていて、カリキュラム改正等もできなかったわけですが、来年度からやろうと思えばできますし、小改革は現に進んでいます。そういうときの方向性として、どんな改正方向がよろしいかということを伺っていきたいと存じます。最初のカリキュラムを中心的に考案なすった京藤先生から、お聞きしましょうか。

【京藤】 そうですね。まず当然変えなくちゃいけない部分はあると思います。立ち上げのときには4年生にも必修としてどうしても取ってもらう必要のある科目を置いて、4年間でバランスよく授業を取るということになっていますけれども、学生の不安や負担を考えると、3年生で基本的にどの科目でも取ることができるようにしておく必要があると思います。4年生というのは、現実には、就職活動がかなり大変ですので、こうした点に配慮して、学生自身が自分で選択して、計画的に、取るべき科目を取れるように配置する必要はあると思います。これは法律学科でもそうですし、完成年度に達して、いわゆる縛りが取れた段階では変える必要がある。
その他の点では、これは学生の抱く印象とは違うのかもしれませんが、私自身は、わりと、必修科目として取るべき科目は少なくするように考えていたつもりです。この点では、必修科目を少なくするということについては、世代的な感覚の違いという面もあると思いますが、私が最左翼に属するほうではないかと考えています。必修科目はかなり少なくした、少なくしすぎたくらいであると思っています。これから、次の世代の人が、この学科を担っていくというときに、教育的な観点から、もう少し基本的な科目を必修化して必修科目を増やすといった形で、揺り戻しがあるのではないかと思います。そういったときには、バトンを渡す側は、自分自身が障害にならないように、黙っていよう、黙っているべきだと当時から考えていました。学科の主要な担い手の判断を尊重することが大切でしょう。学生の印象としては必修科目が多いという印象を持っているようですが、この辺りは、次の世代の人が、解決してほしいと思います。
消費情報環境法学科は、まさに消費者というものに目を向けていることもありますから、やっぱりサービスということを非常に重視している学科だと思うのですね。
学生がどうしたら自分が知りたいことが身に付くのか、そして学生の成長につながるのかという視点から、ぜひ、より良いカリキュラムヘと展開していってもらえばと思います。この4年間、私自身は、これはむしろ学部経営という観点からですけれども、学部の先生方自身が、情報処理機器を教育に活用することを通して、教育能力が格段に高くなったのではないかなと思っています。CD教材を新たにつくるというような苦労をすることによって、先生方の教育能力というのは非常に向上したと言えるのではないかと思いますから、これをさらに活用して、次のステップヘ展開していってもらえばと考えています。

【福田】 今の京藤先生の最後のお話の具体例は、私ですね。私は怠慢でしてCD-ROMの情報を森山さんにHTMLで提出する期限は、本当は2月なのですよ。それでも3月になってしまうので、当然ながら最低HTMLにしなければ出せませんよね。そこまでやるんだったら、ホームページ立ち上げるのも、すぐだからというので、授業用のホームページを立ち上げました。ですからこの学科に所属していなければ、いまだにホームページも立ち上がってなかっただろうと思います。
それでは菅野先生は今後のカリキュラムの改変なんかで、どんな点を注意すべきだとお思いでしょうか。

【菅野】 最初のときに3つの柱を立てましたけれども、これが少し今、福田先生中心にこの辺を改変のことをやっていますね。それでそれの話を承っていると、比重がどちらかというと、この第2の柱に今までは強かった部分があるように思うんですけども。

【福田】 消費情報環境法の基礎科目群ということですね。

【菅野】 基礎科目群ですね。

【福田】 ここ全部必修でしたからね。

【菅野】 これが必修になっていた。だから学生が非常に必修が多いように感じていたんだと思いますが、それをほとんど選択必修に変えるということになっていますね。それはいい方向ではないかというふうに思います。やっぱりあまり必修が多いと、学生はそれで非常に力を使ってしまって、自分のやりたいことがなかなかできなくなる。
だけれどもあまり野放図にすると、今度逆に自分の好きなものしか取らなくなるという可能性が出てきます。それから、これは学生にありがちなんですけれども、好きか嫌いかではなくて、単位が取りやすいか取りにくいかという選択の仕方をしてしまうと、それはちょっと学科をこういうふうに学生を育てたいんだというものから外れてしまう可能性があるので、カリキユラムの組み方も1つなんですけれども、やはり難易度と言うんですか、それを同じように、バラつかないようにするという、もっと実務的なことも必要ではないかというふうには感じています。
それで、あとはこの3つの柱を、果たしてこれからもずっと維持していくのかどうか。これはいろんな人のいろんな意見が出てくると思いますけれども、やっぱりどちらかというと、消費者法に重点が置かれているように私自身は思いますが、環境法というのがそれほどまだ法律学の中では大きな地位を持っていないのかなというふうに、これは個人的な
考えなんですけどね、思います。

【福田】 その点でいうと、実は大きな地位は持っておりまして、ただ学科創設時に環境法の専任の方を、もうちょっとのところまで行ったのですけど、最後でうまくいかず、来ていただけなかったというのがあって、片肺飛行みたいなことでやっていたところに、一因があるかもしれません。来年4月からは環境法の専任の方が赴任されます。
ということで、今までは消費者法のところにやや重点があったようです。

【菅野】 企業のことですかね。もちろんそれは1つの学科の方針として、3本柱があるからといって、全部の柱を同等にしなければならないということはありませんからね。3つ目の柱が少し細くても、それは3本目の柱がなければ全体がひっくり返ってしまうところを、3本目の柱でちゃんと支えているということで、貢献は間違いなくしているわけですから。
それからもちろん自分の力もなくて、この3本目の柱の中に環境法の中での1つの科目として担当しているわけですから。これは非常にユニークであって、ほかに第1の柱、第2の柱には理科系の科目が現状では含まれていないので、また含みにくいところもあるとは思うのですけれどね。ただ企業というのは物質をつくっている製造業が非常に多いわけですし、消費者も物質のことを扱うわけですから、本当はこういう中にも物質、つまり自然科学の知識が必要だと思うのですが、そんなに欲張ってたくさんの科目をつくることはできないわけですけれども、できればそういう自然科学の知識を、環境ということだけではなくて物質という立場からとらえたら、消費者の扱う物質、それから企業の扱っている物質、そういうもの、あるいは生命のほうもそうですが。そういう観点から少しずつ考えていくような、基礎知識を持てるような科目ができていければいいという、ささやかな考えを持っています。
ただそれは非常に負担になりますから、それを教えることのできる先生方を、どういうふうに手当てできるかということで、必ずしもすぐにできるとは思いませんけれども。

【福田】 今おっしゃった中でも、食品の安全性なんてことに関しては、1つ自然科学系の科目を入れてもいいぐらいの法律問題は出て来ていますね。それと生命に関するのことですが。

【菅野】 生命倫理とか。

【福田】 生命倫理で、ここで言いますと、法律基礎科目群との関係でも大きな問題です。

【菅野】 ええ。

【福田】 法律基礎科目群の中にすでに含まれてもいいぐらいの問題性があって、今、法制審議会でも生殖技術の発達と法なんていうのをやっていて、立法化もできつつあるということなんですね。だから科目をつくるかどうかは本当にマンパワーとの関係で難しいですが。

【菅野】 そうですね。脳死の問題というのは非常に重い問題があると思うんですけれども。それは法律もそうですけれど、それだけではなくて、まさに人間に関する深い洞察力と知識がないと、脳死の問題は適切に扱うことは非常に難しいんだと思います。

【福田】 河村先生、今後のカリキュラム等については、どんな点が重要だとお思いでしょうか。

【河村】 今、菅野先生のお話で3本柱は必ずしも維持しなくてもいいというお話なのですが、やはりこの学科は伝統的な法律から学ぶというよりは、現代に起きている問題から法律を学ぶという意味で特色があるわけですし、日本語の名前は消費情報環境法学科ですけど、実は英語の名前はカレント・リーガル・スタディーズという名前で、現代法を学ぶということになっていまして、現代のいろんな問題から法律を学ぶということから言えば、やはり現実に起きている問題、人工生殖の問題、遺伝子医学とか、あるいは食物の関係とかがやはり中心になってくれば、そういうところは1つのまた新しい柱としてできてくるか分かりませんし、それが3つプラス1になるのか、あるいは3つの中の1つだというふうに変わってくるのか分からないが、これは流動的に考えてもいいのではないのかなという気はします。
人工生殖なんかは明らかに日本の民法で、家族の問題だとか親子関係の問題だとかいうことにもつながってくる問題ですから、法律的にもやはり面白い分野ではあると思います。
あとは少し学生さんからのいろいろな非難というか、問題指摘がなされた点があります。昼夜開講制ということで、昼と夜の授業があるという前提で学科が立ち上がっているわけですが、どうしても夜の学生さんとして社会人を前提にしていたということで、できるだけ自由に科目が取れる、つまり昼の授業も自由に取れるというふうな形で、時間割を組んだり制限を少し緩めたりした結果と言いますか、2つ大きな問題がありました。
1つは昼間主として入った学生の方から、自分たちは非常に縛られており、夜の授業を取ろうと思ってもなかなか制限がかかって取れないというお話ですね。それを自由にしていかざるを得ないということです。もう1つは、立ち上げたときから予想はしていたのですが、教員の負担ということで、これも当然に重要な問題として考えなくてはいけないわけですが、昼・夜の授業がどちらかというと、夜型で時間割が組まれているという点です。昼間主の学生の方が、横浜で完全に朝9時から夜6時までの時間帯で学んでいた人が、白金に来た途端に、だいたい昼頃から夜9時ごろまでという夜型に近づいてきているという部分があります。学生さんも朝早く起きるよりは夜型の生活に慣れてきている点はありますが、やはり夜9時まで授業があり、帰宅に時間がかかる人は、夜遅い帰宅となってしまうという問題があります。その辺をどう対応していくかという問題です。
あとは夜間主の定員をどうするのか、少し昼間に人数を振替えるかということがあります。わたし自身は学科の夜の時間割部分をなくすという意味ではなくて、社会人などの入り□としてあっても構わないと考えているわけですが、入ったら一緒という形にすべきだと思っています。社会人が入ってきて、その社会人もどちらかというと、多分来ていただける可能性があるのは、ある程度余裕ができてきた人で、こんなことも勉強してみたいと思われる方だとすると、時間的な余裕もあるので、あとは、夜も昼も、どちらかというと夜型に近い形で時間割を組んでやれば、今のままで十分にいけるという点もあると思っています。ちょっと自由になるかなという感じはしています。

【福田】 今、河村先生がおっしゃった第1のほうは、白金に3年、4年次は来るのですけれども、そのときに夜間主に1つの完結したカリキユラムをつくり、昼間主にも1つの完結したプログラムをつくれればいいのですが、そうではなくて、いわゆる共通時間帯に1つだけある科目を設定し、それを昼間主にも夜間主にも受講させるという、そういうことですよね。
それと2番目の問題は夜間主、昼間主という区別ではなくて、入り□は2つなんだけども、カリキュラム上は1つで、その1つのカリキュラムを履修して卒業していくというので、よろしいのではないかということでしょうか。
それでは、菅野先生はもうお聞きしたので、次に、鶴貝先生はどうでしょうか。

【鶴貝】 私に関係する情報処理関連科目のことを先に言うと、大学で情報処理教育というのはユニークというか、やらなければならないことです。今年からは高校で情報という必修の科目がありますし、昨年からは中学で必修の情報というのがもう文科省の方針で始まっています。これからその卒業生たちが大学に入ってくると、大学でやらなければならない情報教育が多様化してきます。どれぐらいわれわれが高校、中学に期待できるかというのも、ちょっと問題もあるのですが。それから家庭の環境にも大きくよってしまうので、情報処理のスキルがどれぐらいの学生が入ってくるかというのは、予想ができないところです。それでも情報処理に関する大学での授業、講義は多様化して、いろいろなレベルの学生に対応した講義を展開していかないと、画一的な情報処理スキルを持った学生を対象とした他の科目で、こういうことができるんじゃないかというふうな期待ができないとは思います。そこがこれからの大学の教育で難しいところです。それから消費がノートパソコンを持たせるというのが決まったときに、私は他学科もこれに続くのではないかというのを、少し期待していたのですが、この4年間でそれがちょっとなかったので、それがちょっと残念なことですね。
他学科も続けば、大学の方針として確立するので、インフラの整備ももうちょっとスムーズにいった可能性があるのですが、1学科というと、やっぱりなかなか当初に設立したインフラ以外のものが整備できなかった、強く言えなかったというところがあって。そういう面でも他学科で情報処理教育に力を入れている学科もありますので、ノートパソコンを持たせるような展開をしていただけると、われわれも助かるのではないかと思います。

【福田】 鶴貝先生は情報センター長でもありますから、今のことは、よく理解できるなと思って伺っておりました。インフラの整備は大変なところですから。

【菅野】 むしろ大学のコンピュータを利用する学生が、今は多いということですよね。自分でわざわざ持ち運びしないで、大学ですべて済ましてしまう。家に帰ればコンピュータはない。あるいは家のコンピュータを共用ですね。1人では持っていないというのが多いみたいですね。僕のゼミの学生も、聞いたら、だいたい兄弟姉妹で共有をしてると言うんですね。というのは、ゼミに法律学科の学生が来てるんで、消費情報環境法学科の学生は全員持ってるわけですけれども、法律学科の学生に聞いてみると、家にコンピュータはあるのかと聞くと、あるけれども、それは親と共用であったり兄弟で共用であったりということで、あまり占有する状況にはない。
だからどうしても学校に来て使うようになって、プリントも学校のプリンターで印刷するということで、学校の紙がどんどん減っていきますけれども、でもそれはいちいちコンピュータを持ってこないで済むし、学校に長い時間いられれば、そこでずっと利用することになるし、それから就職にもコンピュータなしにはもうできないような時代になってますから、どんどん需要が増えてきて、大学がコンピュータをそれこそ学生に1台、これは不可能ですけれど明学の場合は、学生数からいって、でもそれにできるだけ近づくような整備しなければならないとなると、さっきの話に戻ってしまいますが、1人が1個ずつモバイルのコンピュータを持つ動機付けがなかなか難しいのではないかというふうには思ってます。

【河村】 自習室に来てパソコンを使う人というのは、情報処理のスキルを身に付けたいという人が多いわけですが、専門科目、つまり自分の専門の学問をやる上で情報処理技術を使おうというところまでは、自分のパソコンを持ってない人はなかなか行かないのではなりかと思います。これは法情報処理のなかで、学生の反応で非常に強く印象に残ったのは、ワード文章のなかで『法律学小辞典』を簡単に引けるといったようなものを組み込んでやると、学生はそれで非常に勉強がしやすくなったみたいなことがあります。コンピュータというのは、やっぱりそういうふうに勉強することに役立つんだということが、非常に強く印象付けられるみたいなんですね。
学校の自習室を使ってパソコンを使うといった場合には、情報処理のスキルは身に付くけれども、自分の学問に役立つという形で、これを利用しようというところに持っていくためには、やっぱり個人がパソコンを持つといった環境というのが、やっぱり必要なのかなというふうな気がしています。

【菅野】 それはまさにその通りだと思いますね。つまり自分の個人のパソコンでないと、結局そこにストックしておくたくさんのデータを、他人と共用することになって、それは非常にまずいことも起こるし、やりにくい面が多いだろうし、やっぱり自分しか持っていないデータとスキルというものを身に付けるには、学生一人が1台ずつ持ってるというのは必要だと思うんですね。だからその辺をいかに消費情報環境法学科の学生に訴えて、やっぱり自分のコンピュータを高いけれども買わなければいけないというか、買ったほうが非常に自分にメリットがあるということが分からせてもらえるという、あるいは教員のほうが分からせていくという努力が必要になると思いますね。

【福田】 そうですね。わたしはコンピュータ旧世代の人間なのですが、同感です。すなわち携帯が毎日必要かどうかでない問題ですよね。自分のコンピュータを持って、それを勉強にも情報収集にも使うこと、これは現代において必須です。ここは同感ですね。

【菅野】 だから携帯電話は、ほとんど連絡手段に使っているわけですよね。声で連絡しなくてもメールで連絡するというのができる。けれどももう一歩進んで、データを蓄積しておくのに使うには、ちょっと今のところは足りないですね。だから、非常に簡単な携帯電話型パソコンが、画面が携帯電話よりもう少し大きいようなやつができると、そっちのほうに取られてしまうかもしれませんけれども、今のところまだ、小さなパソコンつまり、ノートパソコンと携帯電話の間にギャップがありますから。

【福田】 そうすると、ちょっとこれは学科だけの問題ではないのですけども、例えば大学の情報センターとして、どこにこれから投資していくかというのは、コンピュータ室をつくるというところじゃなくて、どこでもコンピュータが接続できるような基盤整備と言うのですか、そういうことになるのでしょうかね、鶴貝先生。


【鶴貝】 そうですね。ホットスポットという無線LANが整備されつつありますので、大学でも白金校舎はパレットゾーンがそのように設定されていますから、実際無線LANの設備がある学生は、パレットゾーンに持っていけば自由にインターネットが使えるし、コンピュータが使えるという環境が整っていますが、まだまだどこでもコンピュータが使われるという環境にはなってないので、そういうところを増やしていくというのが大切です。セキュリティーの面もありますので、難しい問題がまだまだ残っていますけれども、どこにいてもインターネットで検索ができて、情報の収集、発信できるというような設備が必要になってくると思います。

 

 

 

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