2003年6月

6月25日追加

 生協で衝動買い。
 ロバート・スキデルスキー『共産主義後の世界 ケインズの予言と我らの時代(柏書房)[bk1amazon]、定評あるケインズ伝[bk1]の著者による20世紀史論。
 ハワード・ゼア『修復的司法とは何か 応報から関係修復へ(新泉社)[bk1amazon]、「修復的司法」論の古典の邦訳。
 谷本寛治編著『SRI 社会的責任投資入門 市場が企業に迫る新たな規律(日本経済新聞社)[bk1amazon]、いわゆるエコファンド、ソーシャルファンドなど社会的責任投資の包括的入門書。古い知り合いが二人も執筆していてびっくり。

6月25日

 ゼミで学生相手に付け焼刃の哲学レクチャーなどしていて不安になり、ふとクワイン晩年の集大成?『真理を追って』(産業図書)[bk1amazon]のページを繰る。「付随」などといったタームを見つけてどきりとする。

 ここで紹介した計量経済史家ジェフリー・G・ウィリアムソンの講演録の翻訳が出た。『貧困、不平等と歴史』(ミネルヴァ書房)[bk1amazon]。「産業革命・工業化は分配にどのような影響を与えるか?/所得分配は工業化にどのような影響を与えるか?」を計量的、経済理論的に検証している。とりあえず必読文献であろう。グローバリゼーション関係の著作も紹介が待たれる。
 藤本隆宏『能力構築競争 日本の自動車産業はなぜ強いのか(中公新書)[bk1amazon]、調査マシーン藤本の仕事への入門書になるだろう。

6月12日

 16年前に中公新書から何の前触れもなく刊行され一部で絶大な反響を巻き起こしながら著者の行方がその後杳として知れぬまま忘れ去られていたまぼろしの名著小島亮『ハンガリー事件と日本 一九五六年・思想史的考察がついに復刊(現代思潮新社)された[bk1amazon]。日本の新左翼の起点をハンガリー事件の衝撃に求める異色の小品である。なお著者はその後アメリカ留学から奇しくもハンガリー長期留学を経て現在は日本の大学で教鞭をとっている。エッセイ集『ハンガリー知識史の風景』(風媒社)[bk1amazon]も長期滞在者ならではの味わい深いものである。

6月10日

 小熊『〈民主〉と〈愛国〉』の続きになるかと思ってすが秀実『革命的な、あまりに革命的な 「1968年の革命」史論(作品社)[bk1amazon]を購入して読む。インフォマティヴだか見通しが悪い。小熊の68年論(が書かれるとして、の話だが)を待つしかないか。少なくともインフォマティヴかつ見通しの良いものにはなるはずだから(もし書かれるとしたら、の話だがもちろん)。岩田弘の世界資本主義論が結構重要らしい(ニューレフトの戦後民主主義批判のテーマは実は総力戦体制論であったそうな)ので、「日本の古本屋」ネットで『世界資本主義』(未来社、絶版)を注文する。ついでに検索かけたら岩田世界資本主義論のサイトが見つかるが、あまりといえばあまりに当方の批判がピタリとはまってしまうので頭がクラクラする。おまえらマジに「中国デフレ」とか言うなよ。青木昌彦が「中国デフレ」とか言うのも実はマルクス主義を捨ててないからか? 

 思うところあって山室信一の大著『思想課題としてのアジア 基軸・連鎖・投企(岩波書店)[bk1amazon]を購入。ただしこれも古本だ。だって高いんだもん。

6月2日

 昨日は山形浩生を誘って芝居を見る。感想は山形のそれに準じる。遠い昔テレビのニュースで知って以来楽しみにしていた舞台なので、残念。

 帰りに娘へのお土産をと思い横浜ルミネの有隣堂で絵本を物色。カラー大判のケストナー『動物会議』を買おうかと思ったら、値段の高いのに驚愕。しかし「長いんだからしょうがない」と気を取り直して中身を見ると……漢字にルビが――振り仮名が振ってない。
 そりゃ娘はおくてで、やっとひらがなが読めるようになってきたところだから、とりあえずは親が読んでやる。しかしいずれは一人でも読めるように、ってのが親の気持ちだ。それを何だ? 子供のころ光吉夏弥訳の旧版で親しんでいたので、新訳で復刊と聞いて喜んでいたが、いったいこれは何のまねだ? 貴様ら絵本を、児童書を何だと思ってるんだ? 
 いいよ、わかったよ。お前らの「児童書」ってのは要するに子供向けじゃなくて、大人向けだったんだ。以前は親とか教師とかがターゲットだった。そして今は、児童書好きのマニアな大人がターゲットなんだな。だから原書風装丁『ホビット』とか、『ゲド戦記』普及版とかいったわけのわからない商品を一所懸命出すわけだ。
 いいよ、とりあえず40年近く前に出たのに今でも丈夫できれいな『くまのプーさん プー横丁にたった家』『ドリトル先生物語全集』を大事に読ませてもらうよ。
 というわけでなかや みわ『そらまめくんのベッド』(福音館書店)[bk1amazon]を買った。

 それからついにE・P・トムスン『イングランド労働者階級の形成』(青弓社)[bk1amazon]の現物を見る。卓上版のランダムハウスくらいでかくて重い。お値段も豪快に2万円プラス消費税。これで訳がまともなら翻訳文化賞もの。誰か買って俺にくれ。


インタラクティヴ読書ノート・別館

インタラクティヴ読書ノート・本館

ホームページへ戻る