臨床実務教育

臨床実務教育の必要性

今般の司法制度改革の目玉の一つとして新たな法曹養成制度があります。従来の司法試験の合格という「点」から、一定の専門家養成教育という「プロセス」が重視され、その主要な部分を担う法科大学院においては、「理論」と「実務」の架橋に教育の中心を置くことになりました。法科大学院では、カリキュラムとして「法律実務基礎科目群」が要求されており、そのうちの一部が「臨床実務教育」です。

医学部における医師の養成のために、臨床研修指定病院などで臨床研修という形で行われている臨床医学教育と同様に、「臨床実務教育」とは、法曹専門家としての養成のために必要とされている法律務家として欠くことのできない実務上の技能、実務知識、職業倫理などを習得するための実務教育です。

当然のことながら、法曹の実務家の養成には、一部でも実務に携わることが教育効果の点でも最も重要であり、そのためにも「臨床実務教育」というものは、医師の養成におけるインターンと同様に、必要最小限のものといえます。

本学法科大学院における臨床実務教育

本学では、よき法曹となるために「理論的な法的思考力」と「現実的な実務技能」の効果的な育成をめざしています。法的基礎知識をベースとした法的思考力の育成や実務技能の育成には、理論と実務、および両者を架橋する内容の教育が必要です。そのために実務を体験する臨床実務教育が欠かせないことはいうまでもありません。

本学における「臨床実務教育」は、まず法曹実務家として当然に守るべき「法曹理論」をはじめ、「法律文書作成」、「ローヤリング」、あるいは「訴訟実務の基礎」など、実務や事例をベースとした学内で実施する実務教育を基礎とします。さらに、「エクスターンシップ」や「リーガルクリニック」など、現場における実務を体験することを中心とする教育を実施しています。

リーガルクリニック

「リーガルクリニック」とは、公設の下記弁護士事務所において、一定の法律相談実務や紛争解決実務に携わるものです。

本学におけるリーガルクリニックの実施要領は下記の通りです。

場 所: 渋谷パブリック法律事務所(國學院大學校舎内)
      東京弁護士会による公設法律事務所
      http://www.sbpb-law.jp/

時 期: 3年次の春学期15週

参加者: 学期あたり、1クラス2名(合計6クラスで、計12名まで)
     ※参加者は選抜により決定します。

指導者: 公設事務所所属の弁護士と法科大学院の研究者教員が共同して行います。

教育の内容: 実際に指導弁護士の立会いのもと、依頼者の相談をうけ、その処理や必要な文書作成なども含めた事件受任および紛争処理対応までを行うものであり、実務の世界を垣間見ると同時に、法律相談における事例に適用される法理論の教育をも行うものであります。

クリニックとしての相談事例は、原則として民事関連を中心としています。今年度は、刑事関連のものも対象として実施しており、具体的には、個別相談事例の内容に基づき、教育効果を考慮して、別途指導弁護士と教員が協議して決めることとなっております。

参加の条件: 「法情報処理」「法律文書作成」の修得はもちろん、「法曹倫理」や「民事訴訟実務の基礎」・「刑事訴訟実務の基礎」や「ローヤリング」などの「法律実務基礎科目」の履修が必要です。 また、相談実務を実施するということからも、基本的法知識の修得が前提であり、一定のレベルの成績が条件となります。また、相談内容などについては、厳格な守秘義務の遵守が求められており、違反者には学則等により退学措置などを規定しております。

エクスターンシップ

「エクスターンシップ」は、弁護士事務所や企業法務などの現場での法律実務の体験を行うものです。

 「エクスターンシップ」は、「リーガルクリニック」とは異なり、従来から司法研修の一環として行われてきた弁護実務研修と同様、弁護士事務所での各種の法律実務体験を行うものであり、これまでに実施された例では、夏季集中型のものと、秋学期の通常時間帯に実施するものとがあり、2007年度には合計6名の学生が2名ずつに別れて参加しました。

参加した学生も実務に触れることにより、法律をより現実的に、また体験的に学ぶことができ、勉強の仕方が理解できたという感想で、非常に効果があったと考えております。 今年度についても、人数の増加に伴い、現在複数の弁護士事務所との間で詳細な条件などを交渉しています。

また、同様の実務体験のために、企業法務や紛争処理の機関でのエクスターンシップの可能性も検討中です。これに参加するためにも、「法情報処理」「法律文書作成」の修得はもちろん、一定のレベルの成績が条件となります。

臨床実務教育での主な教育内容

1)法律相談への立会い
-依頼者からの相談の受け方
-関係する事実の把握の仕方
-法律問題と非法律問題との区分けの仕方
-対応策の整理と具体的提案(法的根拠も含む)

2)受任事件に対する補助的業務
-受任案件の事件記録の作成
-聴取した事実の整理と法律問題の指摘(メモの作成)

3)法律文書の作成
-簡易な法的文書(内容証明、催告書、示談書など)の作成
-訴訟関連文書(訴状、答弁書、準備書面など)の作成
-契約書の検討および作成

なお、上記以外にも資料調査や法廷立会などを予定しています。