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編集雑記


中国の一帯一路とアメリカ金融世界反革命 2018年11月7日
 
 中国の「一帯一路」とアメリカのヴェーチャル・金融資本主義(「株価資本主義」/デリバティブ)は,ポスト冷戦時代,とくにリーマン・ショック後に生まれた双子の兄弟です。アメリカの4兆ドルの「異次元金融緩和」と中国4兆元の対内・対外投資は,マグマだまりから吹上,溶岩となって世界に流れ出ました。アメリカから流れ出た先の南米では,経済の混乱=アメリカ・バーチャル金融の餌食になってしまいました。
中国から流れ出たマグマは,遠くアフリカの資源開発にまで向かい,中東やアセアンに流れ込みました。日経新聞は,次のように報じている。「オマーンで,中国の存在感が増している。港湾整備で融資や開発を相次いで約束した。・・『一帯一路』の一部」だと。アセアン諸国を借金漬けにして,過剰の「はけ口」にしながら,中国の存在を顕示しようとしている。スリランカは港湾の運営権(99年間)を,中国に譲渡した。インド洋に展開する米空母とインド海軍に対するに抑止力に効果を発揮するだろう。


 グルーバリズムと人間の破壊   2017年4月17日(月曜日)
 

 
 グローバリゼーションは,経済は無論,あらゆる社会事象を説明できる便利な用語である。だがこの言葉は,資本主義の「新局面」を表現できたとしても,矛盾を切開する「ターム」になり得るのだろうか。要点は「グローバリゼーション」=グローバル化が,国民経済の劣化をもたらしている,ことだ。それは,アメリカ・EU・日本で,次のような社会問題として表れている。
 アメリカ;アメリカ国民は,トランプを次期大統領に選んだ。この選択は,ラストベルト(さびついた工業地帯)の,ささやかなアメリカンドリームを奪われた製造業労働者が託した「希望」だ。この希望は,俺たちの仕事を奪った「不法移民」への憎しみと背中合わせだ。トランプの主張する「メキシコ国境の高い壁」はその憎しみをすくいあげている。
 同じことが欧州でも起きている。昨年6月23日の国民投票でイギリス国民は,EU離脱を選択した。様々な理由がある中で,移民問題は一つの焦点だろう。ここでも移民が「俺たち英国民の職を,仕事を奪っている」。EU離脱で,移民を排斥すべきだ。欧州での極右政党の台頭も,そうした排外主義の表れだろう。その受け皿がポピュリズムだ。
 日本では,移民問題としては,ないわけではないが,それが派遣社員=非正規の雇用問題として表出している。秋葉原通り魔事件(昨年6月8日)の犯人:加藤智大は,派遣社員で2日後の解雇が予告されていた。韓国でも若者の自殺が,深刻な社会問題になっている。その根もとにある財閥(チェボル)と朴槿恵の癒着への反発が,百万単位のローソク・デモだ。世界を覆う黒い雲はどこから湧いてきたのか。その発生源はなんなのだ。それは労働(者)の問題だ。
 「労働者は、彼がより多く富を生産すればするほど、彼の生産力と嵩(カサ)を増せば増すほど、それだけいっそう貧しくなる。労働者はより多く商品を創造すればするほど、彼はそれだけいっそう安い一個の商品となる。事物世界の価値増大に,人間世界の価値下落が直接比例してすすむ。」(『経済学批判』大月国民文庫,98頁)20世紀の科学革命は,1970年代後半日本から始まった技術革命・ME=IT革命に乗り移った。コピー生産によって機械制大工業=モダンタイムスをはるかにしのぐ大量生産が可能となった。商品1個当たりの価値低下=価格破壊は,ウイルスのように広がって,人間・労働者自身の自己破壊にもつながっている。
 加藤智弘は事件の2日前ツイッターで次のように呟いていた,という。「6月6日02:55 それでも、人が足りないから来いと電話がくる/俺(おれ)が必要だからじゃなくて、人が足りないから/誰が行くかよ,・・・誰でもできる簡単な仕事だよ」。熟練は生産から排除されて,ごく一部のものになった。労働の価値=価格破壊が,進んでいる。労働の喜び=人間発達の源泉は枯れ果てた。疎外は究極に進んだ。「キリスト者のあらゆる言葉、あらゆるわざ、あらゆる労働が、祈りとなるのである」(ボンヘッファー)。労働は「祈り」とならなくなった。

ラスロベルトが託したアメリカン・ドリーム(2017/1/10〜03/01)
 アメリカ国民は,トランプを次期大統領に選択しました。この選択は,ラストベルト(さびついた工業地帯)の白人労働者,グルーバリゼーションによって工場が国外に移動し,ささやかなアメリカンドリームを奪われた製造業労働者が託した「希望」なのです。グローバリゼーションが行きづまり,その打開が「米国第一主義」,トランプの主張するメキシコ国境の高い壁,TPP離脱などなどなのです。グローバリゼーションからローカライ・ナショナライゼーションへと潮目は移りつつあり,グロバリゼーションの光ではなくが,くっきりと誰の目にも見えてきたのです。英国のEU離脱も,その流れなのでしょう。
 しかしグローバリゼーションの流れは,だれも止められないでしょう。グローバリゼーションの流れは,日本を水源とした「生産のアジア化・ME化」を源流とし,中流域にアジアNICsの流れを生み出し,今や世界の工場となった中国を河口のもつ大河です。その河口にはメキシコという分流も生み出しました。この流れは,性能千倍=価格千分の一という半導体の特性をもっています。
 生産性の飛躍的上昇をともなった生産=供給力は,最初から世界市場を目指さざる得ないほど巨大で,大陸的容量・需要力をもつアメリカ国内市場さえ狭すぎました。そのうえ技術革新のスピードは,ある期間の価格独占による利益も,企業・資本に認めてくれません。しかも性能千倍価格千分の一という商品特性は,商品の利幅をますます薄くさせ,人件費というコストの壁に突き当たり,その打開を国外に求めざるを得なくなりました。製造業の空洞化=雇用の空洞化が,アメリカから日本そして韓国へと逆流しています。企業=資本は薄利多売というマーケッティングを余儀なくされています。
 アメリカ企業・資本は,金融という世界市場の流れを作りだし,ここに利益の源泉を見出そうとしたのです。1990年代初頭のことでしょう。ファイナライゼーション=グローバリゼーション=アメリカナイゼーションであり,資本の利益の軸足のデトロイトからウオール街へシフトしました。現代はまさに「強欲資本主義」,実業より虚業,実態経済より相場経済の時代なのです。汗水流して働く人よりも投機に長けた人が大儲けする。ここに理性を求めるのは無理です。
12月24日例会に参加して・・・

グローバリゼーション考(2016/4/10〜05/15)
 グローバリゼーションは,経済は無論,あらゆる社会事象を説明できる便利な用語だ。「全球化」「グローバル化」など,時代を説明する「キーワード」となっている。だがこのターム=グローバリゼーションは,対象を外から見ている。それは資本主義経済をとらえる場合でもそうだ。例えば韓国経済のグローバル化,グローバル企業サムソン社など。だがこのタームは,資本主義の「新局面」を表現できたとしても,資本主義の矛盾を切開する方法論のタームになり得るのだろうか。例えば日本を見てみよう。「失われた20年」(もうすぐ30年)などと言われた日本は,「格差社会」「下流老人」「シングルマザーの貧困率6割」等々矛盾が噴出している。問題は,その根因の究明であり,日本資本主義の矛盾の切開だ。理論はそれにこたえなければならない。戦後資本主義の構造がそれを生み出してはいないのか。
 編集子の立ち位置は,再生産構造論の立場である。再生産論は,資本主義の矛盾を,過少消費もさることながら,不均衡ととらえる。不均衡は矛盾=恐慌として発現した。1929年恐慌がそれだ。その後の20世紀前半,資本主義の矛盾=恐慌は,熱戦(T・U大戦)となって表れ,20世紀後半,その矛盾は,体制制間矛盾=冷戦として発現した。そして1991年から始まるポスト冷戦の時代。1991年アメリカは湾岸戦争を開始した。国連を巻き込んだ「多国籍軍」でイラク・フセイン政権を倒し,中東全域の掌握をもくろんだ。フセインをペテンにかけてでも・・・。直接の原因は,ソ連邦崩壊後新たに分かった豊富な中央アジアの天然ガス・石油の掌握だろう。その外洋への移送・パイプラインにとって中東はホットスポットだ。その失敗はシリア難民の事態が語っている。
 ポスト冷戦の今日は,何かが始まりかけている時代であることは間違いない。だがまだそれを論定できない。のちの時代に,なになにの黎明期と名付けられるだろう。理論は,矛盾を切開する立場に立たなければならない。グローバル化することが,国民経済の劣化という矛盾を抱え込むことになる。生産力の拡大が狭い国民国家の枠を桎梏としている時代だ。===編集子======