UMEZAWA Aya 梅澤 礼
プロフィール
初めてフランスを訪れたのは8歳のときでした。「親に連れられて…」とか「親の仕事の都合で…」とかだったらかっこいいのですが、デパートのガラガラくじに当たったからでした。それでもバブル期だったので豪華なツアーで、イタリア、デンマーク、それにフランスを1週間かけて回りました。
なかでも私がとくにひかれたのがフランスでした。それはフランスの人々が、東洋の小さな女の子を、まるで自立した一個人であるかのように対等に扱ってくれたからです。
大学に入りフランス語を選択したのは、フランスについてもっと知りたいと思ったからでした。しかしフランス語を話しているのはフランスだけでないことを知り、8歳のときよりもっと多くのものを見たいとベルギーに交換留学しました。
まったく知らない国で、つたないながらも言語がわかることで新しい文化に触れられたことは、とても幸せなことでした。ベルギーというヨーロッパの中心地で、各国からの留学生の意識の高さに触れることができたのも、非常に貴重な経験となりました。
研究について
その後修士課程では、ベルギーのルーヴァンカトリック大学に留学して犯罪学を学びました。博士課程ではパリ第1大学に留学し、監獄の歴史に関する博士論文を書いて帰ってきました。
今はおもに3つのテーマで研究をしています。
ひとつは文学と犯罪というテーマです。2019年には、これまでの研究成果をまとめた単著『囚人と狂気─19世紀フランスの監獄、文学、社会』(法政大学出版局)を出版し、第36回渋沢・クローデル賞奨励賞と第42回サントリー学芸賞(思想・歴史部門)を受賞しました。今年は隠語について国際学会で発表します。
また、エティエンヌ・ド・グレーフというベルギー人についても研究しています。20世紀に活躍した犯罪学者なのですが、精神科医としての顔も持ち、そのうえ晩年には小説も書いているという、まさに私の興味ど真ん中の人物なのです。今年中にこのテーマで本を出し、来年は彼の小説の翻訳もするつもりです。
そのほか作家のエクトール・マロについても、フランスで発表することになっています。『家なき子』を書いた児童文学作家として知られるマロですが、じつは大人向けの作品を残しており、そこには精神の病や犯罪が多く描かれているのです。
ゼミについて
1830年代に大流行したコレラについて、また、19世紀末のアルジェリアで起きたフェミサイドについて、回想録や裁判記録といった歴史資料と、それらをもとにした文学作品を読んでいます。日本語訳がないので難しいと思うかもしれませんが、グループで「こうじゃないか、ああじゃないか」と言いながら解読してゆくので、みなさん楽しく受けて(いたらいいなと思って)います。