ハンガリー旅行…🙊出張記
「世界にはフランス語圏の国がいっぱい。フランス語ができると、そうした国の人たちと仲良くなれますよ。」
これはフランス語の教師が使う殺し文句。私も何度も口にしてきました。
ところがいま私はハンガリーにいます。ハンガリーの大学で行われている、フランス語を使った学会に参加しているのです。
そして参加者の国籍はというと、ハンガリー、フランスのほか、ドイツ、ポーランド、スロヴァキア、それにトルコ。「フランス語圏」にとどまらないのです。
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学会のテーマは« L’argot et l’identité : Comment une langue périphérique peut-elle contribuer à la construction de soi ? »というものです。日本語にすると、「隠語とアイデンティティ:周辺の言語はいかにして自己の形成に貢献するか」となるでしょうか。
ある言語学者によると、隠語は複数(les argots)と単数(l’argot)に分けられます。Les argotsは、さまざまな職業で使われる独自の言葉です。それに対してl’argotは犯罪者が使う言葉です。
ご存知のように、私の専門は犯罪と文学。そこで私は、ラスネールという19世紀の「殺人詩人」が、隠語をどのように使ったかについて発表してきました。
ラスネールはもともとお金持ちで、隠語のネイティブではありません。そんな彼は、どのようにして隠語を覚えたのでしょうか。彼の詩には、隠語がどのように使われているのでしょうか。隠語は彼のアイデンティティの形成に、どのような役割を果たしたのでしょうか。
発表の内容はハンガリーの紀要に掲載されるので、ここでは話さずにおきましょう。
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ほかの参加者たちは、若者文化や言語学を専門にしていました。そのため、ラップについてであるとか、非行の子どもたちが使う言葉についてなど、じつに多岐にわたる発表が行われました。
それでもみな、母国ではフランス語を教える先生たち。夕食会では、「もはや世界では英語はできて当たり前。これからはもうひとつ言語ができないと仕事につけなくなる」という点で意見が一致していました。
「世界にはフランス語圏の国がいっぱい。フランス語ができると、色々な国の人たちと仲良くなれますよ。」
そのうえ世界のスタンダードは「母国語+英語+◯◯語」。仏文に入ったみなさんは、この機会にフランス語を極めておくのが良さそうです。
写真1 会場のエトベシュ・ローランド大学
写真2 発表中のようす
写真3 事務の方(左)はハンガリー、院生さん(右)はルーマニアのご出身です