フランス文学科で追究した「美しく生きる」私の生き方

吉田 深夏

23年度卒業 MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社

 美しく生きる–––言葉にすると少し恥ずかしいですが、これが私の信念です。フランスに関心を抱いたきっかけは、中学生のときに食べた一粒のショコラでした。芸術をはじめとするフランスの諸文化や価値観の根拠には、「生活を豊かに、美しく生きる」ための人生哲学(Art de vivre)があると知り、私もそんな感性を生きたいと、幼いながらに強く決意しました。

私には、1年半ほど大学を離れていた時期があります。より充実した自分自身になりたい、いつも素敵なもので心を感動させていたい………そんな理由で大学を出ました。他大学への転学、フランスへの単身留学、視野を広げようと写真の専門学校へ通っていた時期もあります。紆余曲折を経て明治学院大学に復学したのは、フランス文学科で学んでいたときが一番たのしかったから。私が好きなフランスを教えてくれる場所だったからです。

「これが最も美しいと言える、しっかりとした美の基準が自分の中にあるのは、とても良いことですね。」芸術の授業で、先生にいただいた言葉です。私がこれまで必死に追い求めてきた理想、そこに費やした時間は無駄ではなかったと、このときはじめて自分の人生を肯定することができました。それまでは、周囲と違う道を歩み、妥協を許せない自分の性格が嫌になることもありましたが、「美しいものだけを選びとりたい」というこだわりを感性として尊重し、伸ばしてくれたのはフランス文学科です。いまも自分の軸が揺らぎそうになると、この言葉に立ち返ります。

卒業後は、フランスに本社をもつ高級洋酒の商社に就職しました。ずっと、私の憧れだった会社です。メゾンの歴史や物語、お酒とともに過ごす幸せな体験を通じて、お客様に自分の人生をもっと好きになっていただきたいです。

私がフランス文学科で学んだことは、好きなことを好きでいられる生活の愉しさ、豊かさです。「世間から見て正しい道ではなくてもいい。自分の好きなように生きる人たちを受け入れ、育むことのできる学科でありたい。」卒業式で先生方が仰っていた言葉が、深く印象に残っています。

私にとって、美しさとは「世界にはこんなに素敵なものがあるんだ」という感動、そして、困難な事柄に立ち向かうときに心を強くしてくれるものです。みなさんを幸せに、強くするものは何でしょうか。フランス文学科での学びが、自分にとって大切なものと向き合う、心豊かな時間となることを願います。

 

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