SAITO Tetsuya 齊藤哲也

プロフィール

「フランス」との出会いは大学生のころ。なにがきっかけでのめり込んだのか、もうはっきりとは覚えていませんが、好きな小説や映画にフランスのものが多かったからかな??ワインやフランスの(B級)グルメにはまるのはずっとあとになってからのことだし……。

そもそも高校生のときには歴史に興味があって、歴史の勉強をするために文学部を受験したはずなんですが、大学でフランス文学に出会い、なんとも我ながらにあきれる急な方向転換。学部の4年間はフランス文学科の学生ではなかったので、フランス語もじつはほとんど独学ではじめました。

フランス語のhistoireという言葉(イストワールと読みます)には「歴史」という意味のほかに「物語」という意味があります。すると高校生のときから、人間たちの織り成す「歴史」を読みながら、じつはイストワールのもつもう一つの側面、つまり「物語」の方に強く引かれていたのかもしれない……。まあ、これはたんなる苦しい後づけかもしれませんね。まあ、いずれにせよ、大学時代にフランスの文学やアートにはまったことは事実です。

で、なにをどう思ったのか、無謀にも、大学院のときにフランスに留学する決意をしました。地中海沿岸の街、ニースに1年。そしてさらにパリに2年。映画をみるのが好きだったので、フランスにはじめて着いたその夜、さっそくホテルちかくの映画館にビクビクしながら入ってみたのですが、最後に「Fin(終)」という字がスクリーンに大写しになり、映画館を出ても、目のまえにパリの風景が広がっていることに、当然といえば当然なんですがビックリして、夢と現実とが混ざり合うような不思議な感覚を抱いたことをおぼえています。 学生生活だったのでお金はぜんぜんありませんでしたが、フランスでの毎日はとてもたのしかったですよ!!

その後も大学の研究休暇を利用してフランスに長期滞在する機会を持ちましたが、ぜんぜん飽きないですね、この国は。ブランド品や三ツ星レストランとはまた違ったフランスの魅力をみなさんにもぜひ味わってもらいたいと思います。


研究について

「シュルレアリスム」というものについて勉強しています。どこかで聞いたことがありますか?とりあえずは「20世紀に生まれた文学や芸術の運動」ということができると思います。

作家のアンドレ・ブルトンやルイ・アラゴン、画家のマックス・エルンストやルネ・マグリット、写真家のマン・レイやクロード・カーアン、映画監督のルイス・ブニュエルやヤン・シュヴァンクマイエル。ほかにも奇妙なオブジェの作り手や、奇抜なコスプレマニアのムッシュー(!)など、じつに強烈な個性たちがいっぱい……。

このようにシュルレアリスムには、詩や小説、絵画、写真、映画、オブジェなどなど、じつにいろんなものがあって、一言でそれを要約することはむずかしい……。研究すればするほどわからないことが増えていく。またそれがじつにたのしいのです!!

大学ではもちろん、たくさんのことを「わかる」ようになってほしいと思いますが、同時に、「わからない」ことについてトコトン考えることができるのが、まさに大学という場所であり時間だと思います。最近では世の中に「わかりやすい」「だれでもわかる」ものばかりが並んでいますが、そんなものはわかってもわからなくてもじつはどうでもよろしいのです 笑。

むしろ、みなさんには、みなさんなりの「わからない」ものをぜひ大学でみつけてほしいと思います。


ゼミについて

先ほど書いたように、シュルレアリスムとは「20世紀に生まれた文学や芸術の運動」です。ぼくのゼミでは、このシュルレアリスムという運動を中心に−−あるいはこのシュルレアリスムという運動を通じて−−、20世紀の文学や芸術、さらにはその他カルチャーや社会問題まで幅広く考えていきます。

過去のゼミでは、たとえばシュルレアリスムの立ち上げメンバーであるアンドレ・ブルトンや、ルイ・アラゴンの小説を読みながら、おもに文学の方面からシュルレアリスムの魅力をさぐる一年があったり、あるいはマックス・エルンストやサルヴァドール・ダリといった画家の作品を見ながら、現代絵画の見方について考えていく一年があったりと、直接あるいは間接的にシュルレアリスムにかんするいろいろなことを学生のみなさんとともに議論し考えてきました。最近では、これらの作家たちや画家たちは同時代にいったいどんな映画を見ていたんだろうという関心から、20世紀の初めに製作されたフランスのクラシックな映画の魅力についてじっくり考えてみたりなど、集まった学生の興味関心に応じて、ゼミで扱う内容はじつに多種多様です。

小説にせよ絵画にせよ映画にせよ、さっと読みとばしたり見とばしたりしては、そのたのしみ方はみつかりません。ひとつの作品とじっくり時間をかけて向き合っていきましょう。


シュルレアリスムについて

シュルレアリスムについて、ここで語り尽くすことはとても無理なので、これまで書いてきた文章のなかから、この運動にかかわる文章をいくつか参考に挙げさせていただきます。シュルレアリスムに興味を持った方はぜひ!

  • 『零度のシュルレアリスム』水声社、2011年

→シュルレアリスム全般について

  • 『ヴォルフガング・パーレン――幻視する横断者』水声社、2012年

→シュルレアリスムの絵画やオブジェについて

  • 「分裂するフレーム――シュルレアリスム〈と〉マンガ」 (鈴木雅雄編『マンガを「見る」という体験』水声社、2014年)

→シュルレアリスム絵画とマンガはどう関係するのか、しないのか

  • 「革命家たちの凡庸なスナップ写真――シュルレアリスム、写真、オートマティスム」(塚本昌則編『写真と文学――何がイメージの価値を決めるのか』平凡社、2013年)

→シュルレアリスムと写真について

  • 「アンドレ・ブルトン『ナジャ』」(永井敦子、畠山達、黒岩卓編『フランス文学の楽しみかたー ーウェルギリウスからル・クレジオまで』ミネルヴァ書房、2021年)

→シュルレアリスムの小説のついて

それでは、みなさん、いつか大学でお会いしましょう。