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違和感もすべて受け入れて

2023.09.19

「背景に日高山脈が見えるって言われます」。おおらかで雄大、どんな場所でも違和感なく溶け込めて見守ってくれそう。周りからそんなイメージを持たれる安田さんですが、それだけでなく、確固たる主張と身軽さを武器に、時にキャンパスに違和感を持ちこむ存在にもなります。そんな安田大地さんの学生生活を紹介します。

安田 大地 国際学部 国際学科 3年

北海道出身。3兄弟で全員「自然」に由来する名前を持ち、山脈に囲まれた場所で大自然とともに過ごす。学校の授業では芋ほりなどの農業を、家庭ではガーデニングや菜園を経験。最近では意図的に「ぼーっ」とした時間を作ることのできる、温泉やサウナにはまっている。浪岡新太郎ゼミに所属し、政治社会学を学ぶ。

何になりたいかではなく、どういう人間になりたいか

北海道で生まれ育ち、教室の窓からは常に存在感のある山脈が見えていました。山は自分たちを見守ってくれていて、常にそこにあるのに飽きずに心を動かされるような、そんな存在でした。

高校時代、大学受験を前にしてどういう基準で大学を選ぶべきか考えていました。当時、小論文の指導をしてくれていた先生に言われたのが、「君はどういう人間になりたいの?」。 将来何になりたいか、ではなくどういう人間になりたいか、そう考えること自体が自分にとってはしっくり来たんです。

高校3年生の自分が出した答えは「人の喜びや悲しみを理解できるような人間になりたい」。

そのためには、さまざまな人の考えを理解しなければならない。政治学、平和学、経済学などの多様な学問に触れ、学際的に学びたいという思いが国際学部の入学につながりました。

入学して1日目、この言葉を入学式で皆の前で話したんです。横浜キャンパスのチャペルで行われた国際学部の入学式で、当時の学部長の先生が「何か言いたいことある人」と募るタイミングがありました。迷わず手を挙げて壇上に上がり、「私は国際学部で人の喜びや悲しみを理解できるような人間になりたいんです」と話しました。今思うといきなり知らない人だらけの前でそんな言動ができる自分がちょっと怖いです。こういう行動をしたらこういう風に思われるのではないか、そういう感覚が薄い方で、悪く言えば鈍いんだと思います。ただその行動で「さっきの言葉、感動したよ。友達にならない?」と声をかけられ、友達ができたりもして。国際学部に入学して、自分の意見を言う場面がありその意見に対してリアクションをもらえる、そんなところが好きだなと思います。 「人の喜びや悲しみを理解できるような人間になりたい」。高校3年生の自分が思い描いていたことは今も変わっていません。

“キャンパスに畑がある”という違和感

幼いころから牧場、米作、酪農、畜産、農業が身近にあったような気がします。その影響からか、大学でやりたいことのキーワードとしては”食”にかかわることでした。

大学入学前からコンポストという、生ごみや落ち葉などの有機物を、微生物の働きを活用して発酵・分解させ堆肥化する取り組みに興味がありました。その堆肥を何かしらで利用し、循環させる。キャンパスでこの仕組みを実現させ、循環型キャンパスを作りたいという思いがありました。

その思いから立ち上がったのが「畑やろうじゃないか」です。2年生の時に、とあるゼミのワークショップで戸塚区で農業をされている方のお話を聞く機会がありました。そこに参加していた4年生の先輩方は農業に興味があり、自分はコンポストに興味がある。作った堆肥をその農園で使えるのではないか。お互いやりたいことがマッチし、一緒に「ボランティアファンド学生チャレンジ」に応募してボランティアセンターに支援してもらいながら活動をスタート。現在も横浜キャンパスのボランティアセンター横の畑でトマトや里芋を育てています。舞岡公園のNPO法人「やとひと未来」の方が畑の指導をしてくださり、地域交流ができる場の1つにもなりました。

コンポストを実現させるのはまだまだハードルがありますが、畑やろうじゃないかの活動をしていくなかで、ふと気付いたことがあります。それは、キャンパスにある畑が違和感を与える存在であること。自分にとって畑は見慣れた光景ではありますが、そうじゃない人も多い。トマトが上向きに支柱をつたいながら成長している様子を初めて見た人もいます。

畑を見て、足を止め、普段口にしているものがどのような過程で作られているかを見ること、それだけでも食や環境に対する気付きを与える役割を担っていると思います。

気付きを与える大切さ

2022年度にはインスパイアフードという活動で「ボランティアファンド学生チャレンジ」に採用され、活動していました。活動の起点はやはり”食”。目的は「食の多様化」と「生産過程の理解」の2つを軸に学内での食に関する学びを深め、改善に取り組むことでした。

国際学部で過ごし、多様な宗教や文化的背景を持つ人とかかわってきました。かかわりの中で「食の選択が少ない」ことに気付いて。この活動を通して改めて聞き取りをしたり、調査をしたりするなかで、アレルギーやヴィーガン、ハラールへの対応が進んでいないのではないかという課題が上がりました。大学という場所における多様性は留学生を受け入れるだけではないと思いますし、本当の意味での多様性やグローバルってなんだろう。そういった違和感を持ちながらの活動でした。とはいっても急に対応する食事を導入することは難しく、まずは気付きを与えることだと思いました。Instagramアカウントを立ち上げ、ヴィーガンのレシピを共有したり、食環境や食に関する社会問題をわかりやすく投稿にまとめたりしました。ほかには食堂の商品写真を使ったボードを作り、どの食事がヴィーガンか当てるゲームを実施。当れられる方がレア、くらい外す人の方が多かった印象です。知らないということは、多様性が広まっていないことだとも言えます。そういった意味で、問題提起ができた活動になったと思っています。

直接貢献できたか分からないですが、今では食堂にハラール推奨メニューがあったり、インターナショナルカフェでヴィーガン推奨フードが販売されていたりします。食の観点から見た多様性は少しずつ進んでいるのではないでしょうか。

2つの軸の1つ「生産過程の理解」については、畑やろうじゃないかの活動に意志を引き継いでいます。生産をするということは、難しく大変です。草を取り、水をやるのは当然のことながら、細かく枝分かれしたものを摘んで日々観察していかなければなりません。 スーパーに並んでいるものを買って食べるだけでなく、生産過程を知ったうえで食べるとそこに価値が生まれ、大切なものとして認識できます。それに、とてもおいしいんです。 時間がかかる活動なのですが、卒業するまでに、こういった生産過程の理解を深めつつ、コンポストの仕組みを導入し、環境問題への関心を高められるようなキャンパス作りを後輩に引き継いでいきたいと思います。

「気にしない」を武器に

横浜キャンパスで、国際学部の学生として過ごすことが自分にとっての明学にいる理由だなと思います。自分はもともと大学生活で実現したいことがたくさんあり、それを臆せず口に出せるタイプでした。それを受け入れ、時には自分の意見と反対の意見を向けてくれる。発言の機会があり、リアクションを得られる。国際学部のその環境がすごく安心できたんです。

自分はどちらかというと「気にしない」タイプですが、当然その真逆の人もいて。広いテーマになりますが、どうやったら皆がうまく生きていけるんだろう、そんなことを日々考えています。大学生活の中だけでも、知らない人に話しかけること、授業で手を挙げて質問すること、馴染みのない言語を履修すること、そういったことすべてに対するハードルを感じる人もいると思います。綺麗ごとかもしれませんが、そう感じさせないような大学の雰囲気や環境にしていきたいです。そのためにはまず自分が、自分の思いをうまく伝えて、誰かの心を動かすことができる存在になりたいです。

そういった考えから、引き続き国際学部のゼミでは政治社会学を深めつつ、大学院進学も視野に入れています。政治社会学の分野において、日本と海外のさまざまな法律や制度の違い、その文化的背景を知り論文を書き上げたいと思っています。自分の論文を通して誰かのアンテナに引っ掛かり、それで社会がより良い方向に進むのであれば、入学式の時に話した「人の喜びや悲しみを理解できるような人間」に少し近づけるような気がしています。

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