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コラム「キャンパスCLINIC」

新型コロナ・インフルエンザ・風邪を知ろう

白金通信2023年秋号

 この3つの病気は全てウイルスによる感染症で、かかると発熱・鼻水・のどの痛み・咳などのいわゆる「風邪」症状がでることも共通しています。ウイルスとは、細菌より1/100ほど小さな病原体で、電子顕微鏡が登場して始めてその正体を捉えることができました。DNAまたはRNA遺伝子とそれを覆うタンパク質という、とてもシンプルな構造で生物の細胞に侵入して増殖します。感染したヒトの会話や咳でウイルスを含むしぶきが飛んで、1-2メートル以内にいる人の喉や鼻にしぶきが付くと新たな感染が生じます。新型コロナの第8波が終わって、皆がマスクを外してソーシャルディスタンスを止めたら、3年間流行しなかった風邪やインフルエンザの患者も急増しました。

 新型コロナは第9波に突入

 第1波から5波までの新型コロナはワクチン・薬ともなく本当に怖い病気でした。ウイルスが鼻や喉に感染すると、次に血管内に侵入して1週間後にはコロナ肺炎や血栓症(血管内に血の塊ができる)を起こして若年者でも死亡者が多発しました。しかし第6波以降は、感染力は高くなってもコロナ肺炎になりにくいオミクロン株に変異したことで、ワクチンさえ受けていれば怖くなくなりました。ただ80-90歳代の高齢者がかかると、誤嚥性(細菌性)肺炎を併発して重篤化するので、病院や高齢者施設の職員や患者・入居者はマスクを外せません。 感染力は強いのでゼミやクラブ内の集団感染が危惧されます。喉が痛くてだるくなれば、周囲に感染させないよう早く検査を受けましょう。感染症法の区分が変わったことで、どの医療機関でも検査可能です。近くのクリニックに電話で症状を伝えて、検査してくれるか確認したうえで受診しましょう。陽性と分かれば、健康支援センターに連絡して5日間の病休をとってください。復帰後も5日間はマスク着用をお願いします。

 復活したインフルエンザの流行

 インフルエンザは、北半球では冬の12月から2月に大流行する病気ですが、コロナ禍では2年間姿を消しました。新型コロナのため世界中がマスク着用とアルコール手指消毒をしたことが大きかったようです。しかし対策を緩和したことで昨年末から流行が再開して7月まで続きました。今冬も流行すると思うので、できるだけワクチンを受けてください。大学生がかかると40度近い高熱と倦怠感がでて、新型コロナや風邪よりつらい病気です。鼻腔ぬぐい液で検査すれば新型コロナかインフルエンザかわかるので、内服薬や吸入薬を処方してもらいましょう。感染性のある5日間はやはり病休してください。

風邪なら無治療で治る

風邪とは風邪症状をおこすコロナウイルスやアデノウィルスやライノウイルス・RSウイルスなど多数のウイルスが原因となる病気です。種類が多すぎるため、全てを網羅できる検査法もワクチンも薬もありませんが、2-3日で自然に治るので困らないのです。医師は風邪症状の患者が来たら、喉を診て発赤していれば、とりあえず風邪と診断します。新型コロナやインフルエンザであっても検査しなければ風邪扱いです。なお風邪薬や感冒薬は、咳止め・熱さまし・鼻水止めの合剤で、ウイルスを殺す作用はありません。薬を飲むと自然に治る頃なので、効いたように感じるのです。細菌に効く抗生剤は、ウイルスには無効なので使用しない方が安全です。よく風邪が長引いたという話を聞きますが、正しくありません。その多くは風邪がきっかけの喘息発作や別の肺の病気のことがあります。1週間してもよくならなければ、同じ医療機関にかかりましょう。

 

 

尾形英雄先生(校医・結核予防会複十字病院 安全管理特任部長)

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